好きな日に働く、嫌いな仕事はしないのエビ工場が本音を語る

 発想も思いつきも至って平凡。だがメディアがおしよせる。「それを会社でやってのけるか」という驚きがパプアニューギニア海産への注目度を高めている。

 わたくし43歳3児の父、パプアニューギニア海産・工場長歴4年半の武藤北斗と申します。長文になりますがお付き合いよろしくお願いします。

 2019年1月20日にこのページの改訂版を投稿しました。こちらの方がシンプルで好評です。⇒ まとめ改訂版(note記事)

 書籍出版、講演や取材を重ねることで考えや想いが整理されてきた。とは言え、センス溢れるインタビュアーの方と巡り合うと、うっすら考えていたことが言語化されたり、昔の体験と今考えていることが結びついたりと、新しい発見も続いている。

 これが全て発表されていれば問題ないのだが、残念なことにメディアには文字数や放送時間に制限がある。更に取材と編集が別の方だと核心の部分に一切触れないことも珍しくはない。テレビに至ってはその確率が高すぎ、何人ものディレクターさんが悔しがっていた。

 ならば自分で記録として残そうと思う。どこに残すかは多少悩んだ。ブログは会社の公式だし、facebookは書き捨てている感覚がある。ならば話題のnoteに挑戦しようと決意したのが先週である。

 初回のこの投稿は僕の大枠の考え方を紹介する。既に著書「生きる職場」やメディアでの発言と食い違うところも多少ある。そりゃそうだ、人間だもの考えは変わる。変化の過程はいくらでも説明するし、人生そこが面白い。

 「ん?前と違うな」と気づいた時は、武藤に何が起きたんだ?どんな体験があったんだ?そんなことを考えながら読んでもらえば、このnoteもより楽しめるはずだ。

 これまでの僕の発信に慣れている人は「です・ます調」でないこの書き方に違和感を覚えるかもしれない。しかしこの方が文章を端的に短い時間で書きやすい。話をしながら、文字を打ちながら、脳の片隅から考えや言葉が溢れてくる人間なので、この書き方の方が内容はよくなるはずだ。生意気に聞こえる部分もあるだろうがご了承いただきたい。

 これから話すことはエビ工場での話だけれど、会社という組織だけに有効な話ではなく、生きていくあらゆる場面で同じことが言えるはずだと思っている。

目次
1、根底にある考え、真意
2、具体的な実践例
3、その効果
4、よくある質問 
5、最後に

1、 根底にある考え、真意

1−1 人は争う生き物

 僕は人を全く信用していないし、自分の居場所や地位やプライドを守るために争う生き物が人間だと思っている。人を裏切り自分の欲を満たすことさえある。あなたも思い当たる節がないだろうか。僕はある、いくつも。でもそうである自分に絶望する必要はない。だってそれが人間だから。

 だからこそ僕は考える。人が争わないためには、裏切らないためにはどうすればいいのかを。工場で常に考えているのも従業員同士が「争わない」ためにはどうすればいいのか という1点につきる。それさえできれば、心地よい職場も会社としての利益も得ることができると確信している。

1−2 従業員を信用しているのか

 人は信用していないが、従業員は信用・信頼している。経営者が本気で従業員の生活や働く環境を考え行動していれば、信頼関係は自然としかも早い段階で構築される。立場の違いが影響しているのは確かだが、傲慢になるのではなく、そんな違いでさえ職場や従業員のために活用できるのが優れた経営者であり上司であると考えている。

1−3 パプアニューギニア海産とは

 ここで少し会社の説明をしておこう。日本の真南にある赤道近くの南国、パプアニューギニアの天然エビを30年以上販売している。天然エビだけ、しかも産地まで限定しているのは会社の成り立ちが理由である。詳細はホームページ内の小冊子「天然エビに関する正直な実際の話」を読んで頂きたい。

 パプアニューギニア産の天然エビはあまり知られていないが、とても貴重な美味しいエビである。パプアニューギニア産一筋で続けられる理由も実はここにある。

 船凍品といい、漁獲してすぐに船の上で急速凍結している。だから鮮度が抜群、そして何と言っても薬品や添加物を一切使っていない。天然だから当たり前と思わないでほしい。鮮度悪化が分からなくなるような薬が船の上で使われるのが一般的なのだ。漁獲後や工場での薬品・添加物の使用は天然も養殖も関係ない。

 しかしパプアニューギニアは漁獲量が少ないこともあって薬品を一切使わない。人が素早く作業して素早く凍らせる。地道に大変な作業が美味しい理由だ。

 価格だけでなく品質や味にこだわる小売店や飲食店は少なくなった。が、まだ日本にも存在する。そんな人たちに支えられて僕らは30年以上継続することができている。

 最近は通信販売にも力を入れ始めたが、近くのお店で売っていれば迷わずそちらで購入してほしい。本物を見極めるお店を残していくことは、日本の食文化にとって重要な課題だと思っている。

 会社は大阪府茨木市の中央卸売市場内にある。2階が事務所で1階はむきエビやエビフライなどを作る工場になっている。

 手作業にこだわり、薬品や添加物は一切使用しない。原材料は子どもからお年寄りまでが名前をみてパッと思い浮かぶようなものだけを使う。例えばエビフライは「天然エビ、小麦、パン粉、水」のみ使用している。水は徳島県の山の湧水を使うなど、細部にまでこだわる。

 年間の売り上げ金額は約1億円。従業員は代表取締役1名、社員2名、パート従業員17名。実は2011年東日本大震災までは宮城県石巻市で営業していたが工場もお店も全てが津波で流された。大阪に移転するも未だ再建の真最中であり、震災後の2重債務さえまだ返済途中である。

 被災指定地から離れたという理由で頼りにしていた国からの援助は一切なく、再建も思うように進まない。2015年には倒産直前まで追いつめられた。しかしそんな苦しい中で僕らは働き方の改革を始めた。

 どんなに経営状態が苦しくても従業員が働きやすい職場を目指すことは何も揺るぎはしなかった。結果としてこの改革が会社を救ったとも思っている。

 これから話す働き方は17名のパート従業員全員に適用している。

1-4 非正規雇用は悪なのか

 さてこのパート従業員の働き方のことを非正規雇用と呼ぶわけだが、もちろんこの雇用形態が悪いと思ったことはない。うちでは社員になりたいどころか社会保険にすら入りたくないパート従業員が大半である。家族の扶養に入っていれば当然の事だ。

 うちのような非正規雇用の働き方が増えれば、間違いなく日本の労働人口は増える。おのずと人手不足などと悩む会社も減る。方法は簡単で社員がうらやむほどにパート従業員が自分の生活を大事にした働き方にすればいいだけである。

 この発言に顔をしかめる経営者は少なくない。しかし月給の社員と時間給のパート従業員を明確に区別するのはよく考えれば当たり前の話である。雇用する側、される側という意識が時代錯誤を自覚させないのだろうか。

 人手が足りない、最近のパートは根性がないと言っている経営者はもっと現実を見るべきである。時代の流れの中から学ぶことは多い。間違いだと気づいたら訂正すべきだ。

1-5 社員とパート従業員は同じ仕事をするのか

 もちろんする。言い方を変えれば、社員は全ての作業ができるようにパート従業員の仕事をあえてやっている。更にはパート従業員の誰が休んでも問題ない体制になっており、全員が休んだとしても社員だけでその日最低限やる必要のある仕事は完結できる。

 パート従業員の出勤いかんで大慌て、通常営業に大きな問題が生じる、そんな会社は社員とパート従業員の比率が崩れている。時給のパート従業員にそこまで求めてはいけないし、その過重負担は効率を落としているはずだ。必要以上に社員を減らすことは結果的には会社にとってプラスになっていないばかりか、ブラック企業に片足を突っ込んでいるとみるべきだ。

1-6 非正規雇用は会社のためにあるのではない

 生活のために収入が必要だが、社員として働けない人は世の中にたくさんいる。どうしても体や心が動かない日がある。介護や子育てをしている。夢を追いかけたい。そんな人たちのために時給という働き方があるように思っている。会社が安い賃金で利益を出すためではない。

 結果としてそのような恩恵が会社にあるならば受け取ればいい。しかし基本は会社のためでないことを認識しなければ、働き方改革など絵に描いた餅になってしまう。

1-7 パート従業員は何を求めているのか

 ここはとても重要なのに経営者が勘違いしやすいところだ。笑顔のあふれる楽しい職場だろうか。やりがいにあふれた職場だろうか。仕事の他にも従業員同士の親睦を深めることだろうか。

 僕は全部違うと思っている。時給という働き方を選んだ人が、会社に楽しさや笑顔や、クラブ活動のようなことを求めているとは思えない。

 ましてや僕(上司や社員)と親しく楽しく話すことなどと思うわけがない。そりゃそうだと大半の人は思っただろう。しかし「どうやったら従業員と近づけるのか、親しくなれるのか」と講演で質問されることは多い。それが世の中の経営者が考えることなのだ。

 では何を求めているのか。

 「自分の生活を優先でき、争いやもめごとの無い淡々とした日々を過ごせる職場」と考える。簡単なようで難しい。争いやもめごとの無い職場がこの日本にどれだけあるだろうか。

 この一点突破を目指して、笑顔や楽しい雰囲気などにわき目を振らず、あえて交流の少ない道をこれからも進もうと思う。

2、具体的な実践例

 ここからは僕らの実践例をお話しするが、何も考えずに真似るのだけは絶対に止めてほしい。現場に則していない一歩もどきこそ従業員のモチベーションを下げる。大切なのは従業員が働きやすい職場になること。自分たちの職場にあった方法を探し、考え、実行することだ。

2-1 好きな日に出勤、欠勤

 朝起きて「今日は働こう」と思えば出勤すればいいし、「休みたいな」と思えば欠勤すればいい。工場が動いている朝8時30分から17時までの間であれば、好きな時間に出勤して、好きな時間に帰ってよい。だから、朝は行きたくないと思っても、お昼を食べて元気が出たから「よし働きに行こう」でもよい。

 そして重要なのは、一切の連絡が必要ないこと。メールも電話もLINEもいらない。会社はタイムカードを見て出社したかを判断して給料を支払うだけだ。

 退勤時間は工場入口のボードに毎日申告する。自分の名前が書いたマグネットを退勤時間に貼りつけるだけ。

 ついでに今日の体調がよいか、悪いかも申告。悪くても特に免除される仕事はない。けれど、みんなが無意識にちょっと優しくなれるのは実は大切なことである。
 
2-2 嫌いな作業はやってはいけない

 メインの作業約30種類について、作業が「好き」か「嫌い」かのアンケートを数か月に1度とっている。嫌いと申告した作業はやってはいけない。「やらなくてもよい」ではなく「やってはいけない」である。禁止であることが重要で、もしもやったら僕に怒られる。

 この表は休憩室と工場内に掲示してある。経営者や社員だけが知っているのではなく、全員が把握するからこそ意味がある。

 人の好き嫌いが完全に一致することなどない。言い切れるほどにバラバラである。しかし、もし全員が嫌いな作業がでたらどうするのか。難しく考える必要はない。平等に分担すればよいだけの話である。ただ一つ注意すべきは嫌いが偏ったときは何か作業上の問題がある可能性が高い。対策を検討する目安にしている。

 この表が重要なのは「嫌いなことをやらない」ことではなく、自分の意思を表明し、それを尊重できることだ。

 パート従業員は社員として働けない理由がある。僕の勝手な思い込みかもしれないが、家に帰ってからも立ち向かうべきこと、嫌だけどやらなければならない事も多い気がする。現にパート従業員は仕事が終わってから子どもを迎えに行ったり、ご飯の用意を考えたり、好きか嫌いかは別にして忙しそうだ。見ていてここからが本番のように感じる事さえある。

 せめて会社では嫌いなことをやらず、好きなことを優先させてほしい。どうしても抵抗がある人は、自分の嫌いから逃げるわけではなく、好きな人に譲ってあげると思えばいい。

 全員が僕のように考えるとは限らない。「自分は立ち向かいたいのだ」という人もいるかもしれない。その時は嫌いな作業に「〇」をつければいい。思う存分仕事に立ち向かう選択もできる。そう、自分で決断し意思を尊重できるのが大切なのだ。

2-3 ルールの作りかた

 僕らの会社には細かいルールが山ほどある。例えば挨拶のタイミングとか作業とは直接関係のないことも。実は影で会社が従業員を縛っていると思われがちだけど、そうではない。

 ルールを作るかは「従業員同士の争いが起きるか?起きないか?」で判断する。いたってシンプルだ。最近ではココは曖昧だからルール化してほしいと従業員からお願いされることが多い。

 出勤日など自分の生活に関わることは自由だが、工場内での細かなことは逆にルール作りをする。これが僕たちが無意識に作り出した争わないための重要なシステムである。

2-4 ルールのかえ方

 一度作ったルールは絶対に守らなければならない。実際に運用したらあまりにも効率が悪かったとしよう。それでもその場で勝手に変えたり、元に戻してはならない。そんな時は必ず社員に報告し今後どうするかを検討する。変えないわけでなく、勝手に破らない事、手順を踏んで変えることが大切。

 各々の物差しで判断が始まると収拾がつかない。権力争いすら起こりかねない。うちでの最終的な物差しは工場長。みんなの意見を吸い上げながら良い形に変えていくのが工場長の腕の見せ所である。ここも争わないためには一つの物差しでこの手順がよいと判断したにすぎない。

2-5 数分の重み

 例えば12時から休憩のとき、作業を終了するのは5分前の11時55分としている。その間の5分間は手や前掛けを洗ったりする。もちろん5分もかからないので、残りの数分は心地よく休憩に入るための日々のボーナスのようなものだ。

 この数分がもったいないと考えるか、意味のあるものと考えるか。

 経営者が思っている以上に休憩というのはパート従業員にとって重要なものである。時給で働いているからこそ時間には敏感であり、休憩後の仕事はもちろん、長期的な人間関係にも大きく影響する。

 例えばこの数分がなければ従業員同士の水道の取り合いが始まるだろう。力関係も見えやすい。あの人はいつも先だ、この人は洗うのが遅いと不平不満も出てくる。

 しかし、このゆとりの5分間があることで人は少し寛容になり、協力する仲間になれるのではと考えている。とても大切な数分だ。

2-6 時給一律、パート長なし

 1日目の人も、何年も働いている人も時給は一緒。エビを剥くのが早くても遅くても一緒。出勤日数が多くても少なくても一緒。今なら950円。一生懸命、集中して仕事をしていれば評価は一緒である。

 一生懸命でなければ社員に注意される。働きやすい職場作りと仕事への厳しさは別の問題である。そこを混合してはならない。

 細かい作業の良し悪しで評価の差をつけるよりも、会社の業績がよいとき、何か頑張った時にみんなで一律に時給が上がった方が争いはおきないし、個々の得手不得手などを尊重しやすい。

 そもそも作業技術だけが会社の利益に関与しているわけではない。雰囲気作り、丁寧さ、人への思いやり、指導力、聞く力、話す力、発想力、ルール作り、包容力、お客様への対応、自分の欠点の把握、もう色んな要素がある。それらは全て作業効率に関わり、会社の利益へと直結する。なぜ技術面だけを時給に反映するのだろう不思議にさえ思う。トータルで考えればみんなプラスだらけ、マイナスだらけの人間同士だ。

 同様にパート長も作らない。パート従業員間の力の差も争いに繋がりやすい。パート長として権力を持ったばかりに嫌な性格になってしまった人を見たことはないだろうか。その人が悪いわけではなく、人間が暴走するようなきっかけを作った会社が悪い。

 そもそもパート長は社員が楽をするためのルールに感じる。

2-7 その他もろもろ

 「忘年会、新年会の廃止」「工場での私語をどうするか」「感謝しすぎない」など書き出すときりがない。著書「生きる職場」を参考にしてほしい。

3、その効果

 その結果どんな効果があったのか。これで会社が不利益を被っているなら、うちもこんなに注目されていない。いくつか効果をお話ししよう。

3-1 パート従業員の人件費が下がった

 先に言っておくが解雇はしていない。

 フリースケジュールを始めた当初は13人ほどだったパート従業員が3年後は9人になった。旦那さんの転勤もあれば、僕のやり方があわないと退職していった人もいる。ところが、それでも工場は問題なく稼働していた。

 13人でやっていた仕事を9人でやっているのだから、人件費の削減になっている。3割以上の人件費カット、金額にすれば年間300万円以上になる。1億ほどの売上の会社にとっては大きな数字である。ちなみに年間の売上高は変わっていない。時給は上がっているのにだ。

3-2 メディアがたくさん

 2016年に新聞への投書が掲載され、それがネットで拡散されてからは天狗になってしまいそうなほどメディアの取材がきた。この1年半でテレビ、新聞、雑誌とそれぞれ10回以上は紹介されている。今年は賞まで頂いた。おのずと知名度はあがり、会社の評判はうなぎのぼり。ただ、残念なのは売上には繋がっていない。いや、この不景気な水産業界で売り上げが減っていないのがメディアの恩恵なのかもしれない。

3-3 従業員がやめない

 人員が落ち着いてからは従業員が本当にやめない。私はこの会社でずっと働きますと話してくれる人が何人もいる。とても嬉しいことである。

 人が辞めなければよい連鎖が生れる。例えばこんな感じだ。

 辞める人がいない → 新しい人を雇用しない → 新人教育がない → ベテランが仕事に集中できる → 一人一人のスキルが上がる → スキルが上がった従業員同士が協力する → 効率も品質も上がる。

 実に単純なことだけど、この連鎖のおかげで人件費削減につながっていると考えられる。

3-4 求人広告費0円

 昨年は従業員を9人から16人に増やした。実はこのご時世に馬鹿正直に値下げをしたおかげで人手が足りなくなったのだ。新人を教える手間は増えたけれど、増員なので仕方ない。この値下げに関してもまた別の機会にその真意を詳しく話したい。

 7人雇用したわけだが、ホームページに「求人募集」を掲載するだけで募集が後を絶たなかった。この4年半の求人広告費は0円だ。あまりにも応募があるので「700字の作文」を義務付けたら少し落ち着いた。それでも応募や問い合わせが止まることはなかった。世の中が人手不足だというが、全く実感がない。

 ちなみに今は募集していないので問い合わせをしないでほしい。募集の際はホームページに1週間は掲載するのでチェックしてほしい。

4、よくある質問

 短く端的にまとめようと思ったのに、随分長くなってしまった。そろそろ終わりにしようと思うけれど、きっとスッキリしていない人がまだいるはずである。著書「生きる職場」を読んでと切り上げたいところだが、説明好きな僕はまだ続けてしまう。最後によくある質問に答えて終わりにする。

4-1 いくら冷凍とはいえ欠品しないのか

 働き方を変えてから欠品したことは一度もない。そのような危機はあったが、それは働き方が原因ではなく原料不足が原因だった。

 ここで皆さんに頭を柔らかくしてもらいたい。この「欠品しないのか」と心配することが既に頭が固いのだ。「パート従業員が好きな日に出勤してよい=(イコール)出勤日数が減る」は成立しない。

 毎日出勤が自由でも、基本的には以前と同じくらい出勤する。自分の生活に必要な金額があって就職したパート従業員が、自由だからとむやみに休むようなことはない。時給だから出勤しなければお給料はないのだから当然だ。

 それが腑に落ちていないから欠品を心配する。フリーにしようがしまいが、週や月の出勤総数は変わらないのだから欠品の心配などする必要はない。

4-2 繁忙期はどうするのか

 隠さずに「ここから1か月はたくさん来てほしい」とか「無理して出勤しないで、どんどん休んで」などと本心を伝えている。ミーティングで話したり、連絡ノートに書いたり。

 そうすると自分の生活にあわせた中でみんなが少しづつ調節してくれる。16人が少しずつ調整すれば、人を数人雇ったり解雇したりと同じような状況になる。

 会社にとっては繁忙期に短期の新人を入れるよりも、ベテランが出勤日数や時間を増やしてくれる方が効率がいいのは言うまでもない。また、短期の人が入ることで職場の人間関係が乱れるような心配もなくなる。

4-3 誰も来なかった日は?

 「そんな日は1日もない!」と言えないのが僕らしい。2年ほど前、パート従業員が9人、出勤・退勤時間が自由でない時に1度だけあった。その日は工場を休みにして日々行う発送作業などを社員でこなして終了。祝日が一日増えたような感覚だった。

 今は人数が増え、出勤時間も退勤時間も自由になった。誰も来ない日が続いていることは当然で驚きもしない。

4-4 大きな会社でもできるのか

 大きな会社も小さな部署の集まりだ。部署単位で始めればいいだけと考える。それに僕らと同じことをするのではなく、その現場に合った従業員が働きやすい職場を作ればいいだけなので、大きさも、業種も何も関係ない。

5、最後に

 自分なりに考え始めたことを話して終わりにする。

5-1 自分が決めるということ

 「フリースケジュール」も「嫌いな作業をやってはいけない」も自分が考え決断している。やらされたり競争するのではなく、自分の生活を大事にするための 日々の選択 である。

 「自分は決められていた方が楽だ」と思う人もいるだろう。しかし、それは本当の 選択の自由 を体験していないからではないか。日々の選択が当たり前の職場で働いたとき、もしかすると自分で決めることの喜びを実感するのではと思う。

 こんな生活に慣れると以前より他の従業員のことが気にならなくなる。人間なので全く気にならないことはないが、以前とは明らかに変わってくる。自分の意思を尊重できる生活は、自分の幸せと、人の幸せを近づけている気がする。

5-2 障がいを持った人との社会

 そんなことを考え始めた僕が意識し始めたのは、障がいを持っている人とどうやってこの社会を生きていくかということである。ここはもう利益や効率云々ではなく、人として生きていく中で、それこそベストを尽くしあえばいいのではないかと。

 会社という視点で考えれば、どうやって一緒に働いていけるのか。

 まだ雇用したわけではない。僕だけが突っ走ってはいけない。ともに働く従業員と話し合いながら、それこそ一歩踏み出したり引いたりしながら、焦らずに着実に進んで行きたい。

 「これこそが働き方改革」だと世間から注目を集めている僕たちが行きついたのがこの道だったのは大きな意味があるように思っている。

 昨年から障がいを持つ人の職場体験や工場見学の受け入れなど、少しづつだが動き出した。このことについてはまだうまく文字にすることができない。きっとこれから悩みながら葛藤しながらこのnoteでも報告することになるだろう。楽しみに待っていてほしい。

 本当に長くなった。最後に一言。作り手の想いや気持ちは必ず食べものに宿る。そう思っている。淡々とではあるけれど、心地よい職場で作ったエビフライを一度味わい納得してほしい。そこでやっと今回の投稿が完結する。ひとまず第一回の文章は終了。ありがとうございました。

株式会社パプアニューギニア海産
工場長 武藤北斗

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