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フリーサイズという曖昧な概念に立ち向かう勇敢なシャツ屋の物語

大は小を兼ねるというけれど、果たして本当だろうか。
確かに大きな箱には小さな箱に入らなかったものも収納できるが、その大きな箱が部屋にうまく収まらなければそもそも使えない。同じような形をしていてもスプーンでは耳かきはできない。そしてただ大きすぎる服は似合わない。

つまりフィットするかどうか、使いこなせるかどうかが大事であって、大きければいいというものではない。色々な場面で大は小を兼ねない。

服の世界では「フリーサイズ」という便利なようで買う方を惑わせる概念がある。
要はサイズは一つだけど、色んな人に合うように作ったよというやつだ。
「オーバーサイズ」の服を買うのとはどうやら違うみたいだ。

それは使いこなせているのか

フリーサイズがコンパクトな設計のことはほぼない。服が小さいと着られない人が増えるからだ。体が入らないと着ていることにならない。
ではただ単に大きければいいのか。大きければ服は着られる。体は入るけど、それが「合っている」のかというと疑問符が付く。

時々サイズが大きい服を着ている時に「着られている」感じになることはないだろうか。服に着られている、つまり使いこなせていない。やはりこの「使いこなせているかどうか」というところにフリーサイズとオーバーサイズの違いのポイントがあるはずだ。

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選ばれし者と選べる服

この世にはサイズが人を選ぶ服サイズが人を排除しない服がある。
前者は、ある狙った背格好の人が着るとピシッと決まってめちゃくちゃかっこいい服。決まると素敵だけど、合わない場合にはすぐ購入の選択肢から外れる。試しにスーツをオーバーサイズで着てみると、見事に「ブカブカ」な感じになるのはこれだ。
後者は、スッキリ着たければSサイズだけど、リラックスして着たければMサイズ、みたいに着る人が主体的に目的に沿ったサイズを選べるような服。「はい、君はSサイズね」と決められることはなく、自分でその服の使い方を決められる。フリーサイズは後者の考えを深めてより包容力を持たせたものと言える。

ちなみに僕は、なかなかいいシャツに選んでもらえず「選ばれし者」になれなかったので「選べる服」「合わせる服」を作るシャツ屋になった。

フリーをフリーたらしめるのは

では、フリーサイズをフリーたらしめるものとはなんだろうか。
色々あるけど結局、「肩」と「袖丈」に集約されるのではないだろうか。
例えばスーツをオーバーサイズで着た時に、特に「着られている」感じを作る要素が広すぎる肩幅長すぎる袖だと思う。例えば…

いや、なんかおしゃれ風だがな。これを普通のおじさんがやってみなさい。ただのだらしないおじさん一丁上がり!だ。オーバーサイズだとこうなる。
それが肩がカクっとなっておらず滑らかで、腕まくりがしやすかったらどうだろう。

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こなれている…!同じジャケットの形でもこれだけ違う。肩幅は広いし袖は長い。明らかに大きいサイズだけど、こうやって調節しやすいように設計されていれば着こなせる。なんていうか「借り物」な感じがしなくなる。(手前味噌だがこれはholo shirts.のジャケットだ。いいでしょ。)

他にもフリーサイズをそれたらしめる要素はたくさんあるんだろうけど、なんだか肝は言語化できたような気がするので、ここからは最近作ったフリーサイズのシャツの話をさせてほしい。ここまでの話で少しでも頷いてくれた方にはきっと有益なはずだから!!

勇敢なシャツ屋の物語…? 忘れてくれ。

現代のワークシャツ

ここに『ワークシャツ365』と名付けられたワークシャツらしからぬシャツがある。

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ワークシャツといえば、頑丈な布にステッチたくさんポケットたくさんみたいなシャツを思い浮かべると思う。でも、今の時代にその服を着て仕事をする人がどれだけいるだろうか。前述のようなシャツは「ワークテイスト」であると言ってしまってそれを否定する人は少ないと思う。

僕が想定する仕事は、庭仕事とか、皿洗いとか、お風呂掃除とかそんなんだ。
そんな仕事をするときというか、朝なんとなく羽織ったら着心地が良くて、使いやすくて、なんならそのままちょっと外出したって全然オッケーなシャツが作りたかった。
そしてフリーサイズであることも、着る人が使いこなす余白を作る意味で重要だった。

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フリーサイズのワークシャツをデザインするにあたって肝になったのは、前半の考察にあるように袖の仕様だった。長めの丈を持て余す事なく使いこなせて、着てかっこいいしかわいいこと。かつ腕まくりがしやすくて、いろんな作業の邪魔にならないことの両立が大事だ。そこで考えたのがこの袖。上下の写真を見比べてほしい。下の単純な筒にボタンホールが開いたものをつまんで、ボタンに通すと上のようなシルエットになる。

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これを着ると

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(178cm)

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(172cm僕ですこんにちは)

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(160cm)

こんな感じになる。
袖口でゆとりが溜まってかわいいシルエットが生まれる。あともうお気づきかもしれないが、両サイドの良い位置にポケットがあるので、手を突っ込んでホッとしてほしい。笑
で、「よし、仕事すっか!」となればグリグリ腕まくりすればいい。

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(165cm)

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(172cm僕ですごきげんよう)

素材は程よく柔らかくて触り心地の良いものを選んだので、着ていてストレスフリー。
この間、写真のように色々な方に着てもらったが、それぞれに着こなし方があるフリーサイズになってくれていて、これはオンラインでオーダーを受けても自信を持ってお届けできると確信した。

オンラインオーダー受付中(1/25まで)

ということで、現在絶賛オーダー受付中である。
シャツのお届けは4月末を予定しているので、暖かくなり始めたその時から、年中使い倒してほしい。襟の部分は擦り切れたり汚れが取れなくなったら交換(有償)もするのでご相談を。とにかく長く使ってほしい自慢の1着、この機会にぜひ。

『ワークシャツ365』(通称365(サンロクゴ))
¥28600(税込)
素材は綿麻(白、黒)、6.5ozデニム(青、紺)の4種
受注生産にて4月末にお届け予定

オーダーはこちらのONLINE STOREからどうぞ!


オーダーという業態を選んだ時点で「無駄なものを作らない」が頭にありました。これまでもこれからも、ちゃんと袖を通して着倒してもらえるシャツ作りを続けていきたいと思います。