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凡人サラリーマンが人間関係を諦めた瞬間

「前向きに行こうぜ。
何事も自身がポジティブに捉えれば、
物事が知らず知らずのうちに
好転していくんだよ」

そう自身の成功体験と交えて
熱く語るマネージャー。
自分が新卒で入社した
会社で研修を受けていた場面でのこと。

妙に当時は説得力があるなぁと
感じてその類の本をたくさん
手にとった。

普通の携帯ショップの店員だった
私は、老若男女の様々な顧客との
接客で疲弊していた。

受け取り方の問題だと
捉えていて、自分が変われば
相手も変わるもんだと信じて
疑わなかった。

しかしながら、
その努力は私にとっては
徒労に終わってしまった。


全ての人を愛する力は残ってない

あの人は誰とも分け隔てなく
接することができる。
誰ともすぐに仲良くなれる
コミュニケーション能力を
持っている。

そんな人物。
憧れの対象になることもあるだろう。

300人に1人くらいの割合だろうか。
あなたの職場にいるかもしれない。

そんな人はいわゆる
「コミュニケーションおばけ」なる
ものでそう簡単にマネできるものでもない。
そのエッセンスを下手に取り入れよう
として火傷する人が後をたたない。

コミュニケーションをはじめ、
話し方や伝え方の本が手を変え
品を変え売れ続けるのも
わかる。
断片的には取り入れることによって
前に進める場合もあるだろう。
私自身もハッと気付かされた
こともある。


すべての人に愛を向けることは
できない。
そんな当たり前のことに気がついた
日のことだ。

当時20代の私は、携帯ショップの
店員としてカウンターに立っていた。
モヤモヤとした感情を抱えながら。 
この感情の正体は自分のキャリアに
対する不安であることは、後に
すぐ分かったのだった。

その頃はいわゆるガラケーから、
iPhoneをはじめとした
スマートフォンに市場が移りかわり
はじめる時期で郊外型の立地の
お店ではありながら毎日が
混み合っていた。

すべてのお客様に笑顔を振り撒き、
満足して帰っていただく。
どこの小売のお店でも当たり前のように
かかげられる建前を無邪気に
信じて真面目に働いていた。

そのときだった。
私が接客と人間関係を諦めた瞬間
が訪れた。
自分には全てのものを愛することの
できる全能感のひとかけらも
ないことに気づいた瞬間だった。

カウンターにばら撒かれた1円玉

携帯ショップの業務に
「料金収納」というものがある。
通常、携帯電話の料金は毎月の
口座引き落としかクレジットカードで
の支払いが一般的だ。

それが何らかの理由で引き落としや
支払いができずに回線が止まってしまう。
そんな状態になった人が
窓口の現金で料金支払いを受け付ける
業務で新人が最初に覚える仕事の
一つでもある。

いまとなっては余分な遅延の手数料を支払い、
わざわざショップに足を運んで現金払いを
するお客の気持ちは全く理解できない。

ただ当時は「お客様は神様」的な思考に
とらわれていたこともあったのだろう。
他の用件で訪れる客と
同じように接していた。

そのときは、昼下がりで
50代半ばの男性だった。
大きめのスーパーの袋に
じゃりじゃりした音を伴って
ゆっくり歩いてきた。

今思えば、目がすわっていたように
思う。ただその反応を表情に
出しては行けない気がどうしても
していた私は、待ち構えるような
かっこうになった。

その男は待ち構えていた私に
気づいたのか、わずかに微笑むと
そのスーパーの袋をカウンターの中央の
真上でひっくり返し、料金の請求書の
ハガキを投げつけ、よくわからない
言葉で怒鳴った。

あのときの大量の1円玉が
カウンターに降り注ぐ音は
いまも忘れられない。

彼は当時980円の料金を
全て1円玉で支払おうとしたのだ。

まともな考え方をした人間の
することじゃない。

いまの私なら、非常識だと客を
追い返すこともできたかもしれない。

ただあの時の私は怒鳴り続ける
客の前で、1円玉を拾い数えることを
選んだ。
まるでそれが携帯ショップの店員の
修行の一種であると悟ったかのようだった。

いわゆる当たり前の最低限のコミュニケーションすらうまく図れないケースというのは、
小売業に限らずあることだろう。

認知症の傾向がある高齢者を
相手にする介護業界ではもっと
悲惨なケースもあるのではないだろうか
と想像する。

あれから私は接客スキルを
磨くことが怖くなり、
一つの答えを出し、
携帯ショップ以外のキャリアを
模索するようになる。

人間関係を諦めた先に学んだこと

人は1人では生きていけない。
当たり前のことである。

ただ周りに関わる全ての人と
仲良くなる必要はない。
理解し合う必要はない。

あなたを見てくれる一部の
人達に囲まれて生きるほうが
幸せじゃないのか。
いい歳してSNSの友達の数や
フォロワー数を競っている場合
ではない。

そこを勘違いしてメンタルを
病んでしまう人を数えきれないほど
見てきた。

そこからの学びはシンプル。

他人にも自分にも期待しない。

許す、許せないの問題でもない。
この人はそういうタイプなのね、
と華麗にスルーできるしなやかさ
が大事だ。

期待するから、自分が
傷つくんだよ。
期待するから、相手が
許せないんだよ。

全ての人を愛する必要はない。

あなたを見てくれる目の前の人に
気づいてあげてほしい。

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