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最後まで見届けたい人。

Yahoo!ニュース特集で「TikTokではじまるファンコミュニティ 50歳のダンス女性や、ホタテ漁師を熱烈応援」という記事を書きました。おかげさまでコメントも一晩で1,000を超えました。最後まで読んでくださった皆様に、心より感謝です。

以下は、「応援するファン心理」について取材をしたことで、思い出したこと。

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大学4年生のとき、映画監督の東陽一さんと「映画を見て、新宿2丁目のゲイバー クロノスに飲みに行く」というのを、2週間に1回のペースでやっていた。

あるとき、黒澤明監督の『まあだだよ』を観て、「駄作だ」「観るに耐えない」「金返せ」とほざく私を、東さんは「長く監督してたらつまらない作品だってあるさ」と私を嗜めた。いつも映画に手厳しい東さんが『まあだだよ』に対してはそんな調子だったことに、私はショックを受けた。特に「まあ、そう言うなよ。俺にとっては父親のような存在なんだから…」という言葉には驚いた。そんなの身内贔屓みたいなもんじゃん!とまで思った。

そして月日は流れ。

村上春樹の長編、短篇、エッセイ、翻訳本のほとんどを読み、本棚の一段は「春樹棚」という私も、ここ最近の長編は最後まで読めなくなった。具体的に言うと、『多崎つくる』は読むのが辛く、『騎士団長殺し』は読んですらない。それでも、新作が出れば、いの一番に書店に行って買う。28年前の東さんの言葉が、いま、沁みる。そうだね、作品の力が失速していったとしても、最後まで見届けたいってことなんだよね、と。

そんな「最後まで見届けたい人」(私の場合は作家と映画監督ひとりずつ)がいるということは、極めて幸せなことだな、と、あらためて思う。

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