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19-20と21-22シーズンの比較footballistaより

サッカー雑誌[footballista」より19-20シーズンと21-22シーズンの戦術トレンドの比較を行う。
同誌は19-20と21-22シーズン終了時にそれぞれ、当時のサッカー界のトレンドを5つ取り上げる特集を組んでおり、単純ではあるがサッカー界の進化を読み取れる。

19-20シーズン

1.トレンドの崩壊

「対策→研究の加速」と「フィジカルの最適化」が影響  未来を切り開くのは「プレー原則」

2.ポジションという概念の消滅

「スペシャリストの時代」から「駒の時代」、そして現在は「タスクの時代」

3.後方からのビルドアップの進化

GKを加えた後方からのビルドアップは単なる流行か?

4.ミドルプレスの洗練

緻密化するミドルプレスを支える「プレッシング・トリガー」

5.クロス対応のゾーン化

サッリ・ナポリ以降、急速に一般化した「コストの少ない」守り方

21-22シーズン

1.戦術トレンドの終焉

"必勝法"でゲームをハックする時代の終焉
生身の人間による「意思決定ゲーム」の復活

2.レアル・マドリー劇場

味方陣営はもちろん、それ以外の人にまで「マドリディスモ」を認識させた時点で勝ち

3.アウェイゴール撤廃による戦略変化

シメオネが仕掛けた深淵な「180分プラン」
批判も意に介さない、大胆なシフトチェンジ

4.ビジャレアル躍進

ビジャレアルの佐伯夕利子氏に聞く
バイエルン撃破とCLベスト4の背景

5.ポジショナルプレー封じ

対策がはまっているのに「動かない謎」
バルセロナが陥ったボール保持のジレンマ

あとがきと解説

ここからは、以上の記事の冒頭部を見て私が感じたことを述べる。

各シーズンの共通項


まず、両シーズンともに「戦術トレンド」に対しネガティブなことが書いてある。
確かに、戦術トレンドは崩壊したのかもしれない。戦術トレンドはあくまでトレンド=流行であり、一過性なものであるという特徴を捨てきれない。
一方で、戦術そのものが終焉を迎えたわけでは、決してないということに注意したい。
むしろ戦術はチームレベルでも個人レベルでも標準装備として、必要不可欠なものになっている。

意思決定のための事前準備


近年のサッカーは特に「意思決定」が重視されている。それは試合前に用意されたいくつかの戦術のオプションを状況によって適当に選択するということだと思う。
そこでは、いかに早く状況に合わせられるか、それ以前に状況を的確に観察できてるか、より適切な判断ができるか、ということが大切である。

事前準備の限界と一般化


となると、試合前に監督がより多くの戦術を選手に落とし込んでおくことが有効なのではないかと考えるだろう。
しかし、サッカーというスポーツにおいて、監督が事前に想定できる状況というのは厳密にはない。サッカーは戦術ボードでやっているのではない。ありとあらゆる条件が異なり、一つとして同じ瞬間は来ない。再現性が低いスポーツなのだ。
そこで、状況をよりシンプルにとらえ、高度に抽象化して場合分けを試みる。さらに、一般化して、「プレー原則」といういわゆる哲学を植え付けることができる。
「プレー原則」は、これに則って選手らが、どうプレーすべきか立ち返って判断基準にできるべきものである。

「プレー原則」とマドリディスモ

その「プレー原則」において圧倒的な歴史と強さを誇るのが、21-22CL優勝のレアル・マドリードである。
レアル・マドリード常に正解最高のプレーヤーを集め、各ポジションに超一流の選手を配置することで勝ち続けてきた、(という印象を受ける)
彼らにとって「プレー原則」すなわち「マドリディスモ」は単純な「勝利」の2文字に他ならないのではないか。

哲学の優位性


このような「プレー原則」の浸透は、クラブの歴史に比例していると感じる。マンチェスターシティや、パリサンジェルマンが戦力的にはレアルマドリード以上でもCLで優勝できない理由がそこにある。
今後、近年台頭してきたクラブが歴史を重ね、強固な哲学を気付いていくことを楽しみにしている。

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