ムーラン・ルージュのラ・グリュ

スカートをまくり
ズロースを見せて
フレンチカンカンを踊る女。
その前には影絵のような
山高帽を被った鷲鼻の謎の男。
背後には影となった
たくさんの男や女。

絵の上部には
MOULIN ROUGEの赤い文字が
ネオンのように3段重ねで輝く。
下にはLA GOULUEの黒文字、
横にはCONCERT BALと
TOUS Les SOIRSの小さな文字。
ロートレックの有名なポスターだ。

ポスターのタイトルは
《ムーラン・ルージュのラ・グリュ》
「モンマルトルのダンスホール
『ムーラン・ルージュ』では毎晩、
グリュが踊っています」
そう書かれたポスターである。
男なら思わず行ってみたくなるだろう。

手前のシルエットの男は何者?
男のダンサー「骨なしヴァランタン」、
いまや店の看板ダンサーとなった
グリュも彼が仕込んだ踊り子である。
19世紀末の大都会パリ、
赤い風車が回る水車小屋で
毎晩狂乱の宴会が催されていた。

日本の浮世絵のアイデア満載。
落合芳幾《真写月花乃姿絵 嵐吉六》の
横顔のシルエットや歌川国芳の
《貞女みさほかがみ》の
障子に映る男と女の影絵が
ロートレックのモチーフとなり、
このポスターが描かれたという。

この絵の秘密を知るまで
そんなことなどつゆとも知らず、
目を惹く凄いポスターだと
ロートレックの才能に惚れ込んだけど、
元を正せば日本の浮世絵がヒント。
日本の浮世絵ってパリの画家たちを
心底驚愕させたに違いない!