デイヴィッド・ホックニー

黄色い縁の丸めがね、
噛み煙草を左手に持ち、
もごもごゆっくり話す。
デイヴィッド・ホックニー、
英国生まれの画家、86歳。

肖像画のユニークだが、
森を描く巨大な風景画が
不思議な空間を醸し出す。
「春の到来 イースト・
ヨークシャー・ウォルゲート」。

森の真ん中に赤茶の小径、
左右に色とりどりの木々、
蔦が絡まりその葉が揺れる。
地面には羊歯や草花が生い茂る。
森の向こうは広大な花畑か。

ノルマンディーの12カ月は
ホックニーが今住む場所。
巨大な壁画を思わせるが、
一本の大木が中央前面に立ち、
背後に森や小屋などを描く。

この構図はまさに浮世絵だ。
ホックニーは日本画から
多くの発想を得たと言うが、
我々には馴染みの風景に思える。
青や緑の大胆な配色も鮮やか。

絵を描くのは楽しいから。
心の底から楽しいと感じ、
全身全霊で毎日描いている。
そんな自分は幸せ者だと、
命尽きるまで描き続けるのだ。