トベラ

西伊豆に住む氣水家が
トベラという樹木を
教えてくれた。
かの南方熊楠がこだわり
愛した常緑低木である。

白い花は甘い匂いで
催淫効果があるという。
しかも葉や枝を切れば
かなりの悪臭を放つ
デンジャラスな樹木である。

悪臭が魔除けになると
節分には鰯の頭と一緒に
戸口に掲げる習わしがあった。
「扉の木」がなまって
トベラの名になったという。

花は実になりやがて割れ、
真っ赤な種を露出する。
その種からは涎のような
粘液が垂れてくる。
ネバネバの種なのだ。

種は鳥の嘴に付着して
様々な場所に運ばれ、
トベラは繁殖する。
異彩を放つ天才熊楠が
愛した不思議植物である。