沈む太陽、緑の光線

水平線の向こうに太陽が沈む。

太陽は大きくとても赤い。

空は夕日に赤く焼け、

海も反映して赤く波打つ。

ゆっくりと沈んでいく太陽、

恋人たちは抱き合い眺める。


このとき太陽の光が屈折し

緑の光線を発することがある。

特殊な気象条件のときに一瞬、

そんなことが起きるのだという。

この緑の光線を見た者は自分や

人の心が読めるようになる。


この緑の光線を求め、

旅をする令嬢を描いたのが

ジュール・ヴェルヌの小説。

さらにその話しを元にした

記録風な映画を制作したのが

エリック・ローメルだ。


捕らえきれない自分の心、

愛を求めて彷徨う一人の女性。

その女性もまたあるとき

緑の光線の伝説を知る。

ようやく気の合う男性と出会い、

浜辺で海に沈む太陽を見る。


と、そのときだ。真っ赤に沈む

夕日が一瞬緑の光線を放つのだ。

映画のサブタイトルにもなった

アルチュール・ランボーの詩の一節、

〈ああ、心という心の燃える時よ来い>

それが現実のものとなるのかもしれない。