ジョコンダのブラームス

ブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調を
ジョコンダ・デ・ヴィートの演奏で聴いた。
指揮はフランコ・カラチオーロ、
オケはRAIナポリ・アレッサンドロ・スカルラッティ管弦楽団、
1961年7月2日にナポリ・イタリア放送局の
オーディトリアムで録音された。

ジョコンダは1907年に南イタリアで葡萄園の娘として生まれる。
7歳のときに地回り楽団のマスターからヴァイオリンを習い、
数年後にはロッシーニ音楽院でレミー・プリンチペに師事、
2年間であらゆる賞を総なめしたという天才である。
25歳のときにウィーン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝、
35歳でブラームスのヴァイオリン協奏曲でローマデビューを果たす。

この協奏曲でのジョコンダの演奏は南イタリアの輝く太陽、
暖かい気候を思わせるような明るく楽しささえ感じさせるものだ。
まろやかでつややかでたくましさもある素晴らしい演奏。
フルトヴェングラー指揮のトリノ・イタリア放送交響楽団でも
ジョコンダは緊張感がありながらも軽やかで明るい響き、
フルトヴェングラーの重厚なものとは異なる柔らかさだった。

人気絶頂だったジョコンダは1962年に突然音楽界から引退、
二度とヴァイオリンを手にしなかったといわれている。
1994年ローマで87歳で死去した伝説のヴァイオリニスト、
でもこうして今も50年以上も前の名演奏が聴けるのだ。
イタリア語でジョコンダとは「モナリザ」のことである。
ジョコンダ・デ・ヴィートの微笑みは音とともに美しい。