宿場町、高宮

祖父と祖母の家は
高宮という小さな
田舎町にあった。
子供の頃、夏休みは
ほぼ一カ月もの間、
東京から遊びに行った。

素朴でのどかなところ。
小さな川が家周辺に流れ、
僕は泥鰌をすくっていた。
緑は豊富で蝉をとった。
ちょっと歩けば田んぼ。
田螺や源五郎がいた。

こんな小さな町が実は
由緒ある宿場町だった。
中山道六十九次の
江戸から六十四番目。
大きな宿場で多賀大社の
門前町としても賑わった。

先祖が眠るお墓は
街道沿いの円照寺にある。
徳川将軍家康が座った
家康腰懸石があったり、
明治天皇が宿泊した際の
ゆかりの止鑾松がある。

小さく素朴で古びた町が
歴史的な宿場町だったなんて。
この歳になって驚くとともに、
この町に生まれ育った
今は亡き母に感謝してしまう。
松尾芭蕉も此処で句を詠んだ。

たのむぞよ 寝酒なき夜の 古紙子 芭蕉