歩夢というヒーロー像

夢に向かって平野を歩く。
その名前がやってきたのは
ハーフパイプの雪上を
スノーボードで飛び上がり、
何度も縦横に回転すること。
それを最高難度でこなし、
世界一の夢をつかんだ。

平野歩夢の冬季五輪。
15歳のソチでは銀、
19歳の平昌でも銀。
23歳になり北京では
史上初となる大技、
トリプルコーク1440を
決めて金メダルを掴んだ。

決勝二度目でも決めたが
得点が上がらず2位。
「納得いかない」と
怒りを込めた3回目に
神業のようなエアトリック、
大技5連発を完璧に決め、
真の王者たる演技を見せた。

歴史的な大偉業を成し遂げても
本人はいつもの飄々たる表情。
「まだ実感が湧かないけど、
ようやく子供の頃からの
夢のひとつが叶ったかな」と
さりげなく言ってのける。
この内気な感じがなんともいい。

騒がず慌てず落ち着いて
やる気があんのかいって感じで
凄いことを軽々やっちゃう。
派手なガッツポーズひとつなく、
涙を浮かべるわけでもない。
それが平野歩夢という人間。

あまりに渋すぎるカッコ良さ。
これぞ新時代のニューヒーロー像だ。