菜虫化蝶(なむしちょうとかす)

小学生は集団登校だった。
春はキャベツ畑の中を
一列に並んで歩いた。
6年生の班長を先頭に
1年生まで皆で行進した。

キャベツ畑の葉っぱには
緑色の可愛い菜虫がいた。
堅そうな毛で体を覆った
毛虫でないから手で触れた。
柔らかくて温かくて顔は
モスラの超小型版だった。

そんな菜虫のキャベツ畑に
いつしか紋白蝶が飛び交う。
白い羽根をひらひら翻して、
あたり一面に飛んでいた。
暦の上では「菜虫化蝶」、
「菜虫、蝶と化す」である。

しかしもはや東京には
キャベツ畑などないし、
従って菜虫もいなければ
紋白蝶も飛んでいない。
ちょっと郊外を散策して、
紋白蝶と戯れてみたい。