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読書感想『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』

“MARY WEARS WHAT SHE WANTS”
by Keith Negley
『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』
作 キース・ネグレー
訳 石井睦美

女の子はきゅうくつで、ごわごわしたドレスを着るのが当たり前、と言われていた時代に、メアリーは動きやすいズボンをはいた。そして大騒ぎになった。
「私は男の子の服をきているんじゃない、私は私の服を着ているのよ」

国際女性デーなので、アメリカで史上初の女性軍医となり、その活躍から女性で唯一名誉勲章を受けたメアリー・エドワーズ・ウォーカーの幼少期を題材にした絵本のご紹介。

絵本では幼い彼女が自らズボンを着用し、それによって封建的な町の人々から非難を受け悩みつつ、理解のある父親の励ましを受けて自分の意志を貫くことで賛同を得る、という話で終わっており、その後の彼女の努力や困難はざっくりと巻末で説明されるのみになっている。

ここで疑問に思うのが、日本語のタイトルで、
「私は私の服を着ている」という彼女の言葉が、「せかいでさいしょにズボンをはいた女の子」に変えられていることである。確かにズボンを履き出した女性の1人ではあるが、このタイトルではズボンが「わたしの服」ではなく、「男の子の服」であることを強調しかねない。

私は幼少期、実の母から、
「あなたは可愛い女の子の服は似合わないからズボン」
と、可愛いワンピースを着た子と鏡の前で並ばされて言われ、長くトラウマに悩まされた。
それがズボンであれ、スカートであれ、容姿性別に関係なく「わたしの服を着る」ことこそが、真の性差別解消、ジェンダーフリー、個人の尊厳である。
女性がズボンをはかなければ男性と同じ位置にいけない、女性が美しくなければスカートをはけない、そんなことはあってはならない。それは女性が男性と同等になるために生理痛に耐え、出産や育児の責任をひとりに負わされることに繋がる。

メアリーが「動きやすくて快適だから、私の服」としたシンプルな理由こそ、全ての人が身につけるものの選択から職業やライフスタイルの選択の根底となるべきではないだろうか。
そう考えると、この日本語タイトルを選んだ出版社と編集者はまだまだジェンダーバイアスにとらわれているのか、あえて問題提起をしたのか、気になるところである。

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