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SONY PICTURES TELEVISIONの意地? 「アレックス・ライダー(原題)」

海外ドラマと言えば、最近の日本でのヒットはAMCの「ウォーキング・デッド」、またはHBOの「ゲーム・オブ・スローンズ」あたりでしょうか。でも、少し前に「24-Twenty Four-」「プリズン・ブレイク」「LOST」が牽引した時のようなヒットに比べると、少し大人しいような気がしています。あの頃は、レンタルビデオの全盛期か?週末に寝る間も惜しんで一気見する人続出だったし、CSはもちろん、地上波でも放送していた。「見てないの?」「どこまで見てる?」といった会話があった。見始めると、クリフハンガーの脚本が、次のエピソードを見ずにはいられない状況でしたし、制作するスタジオ側も、毎回視聴者を飢餓状態にさせることを第一目的としていたような気がします。

AMCもHBOもテレビ局なので、まだまだテレビ局主導でドラマが制作されている事には変わりはありません。でも、このコロナの影響で、日本でもレンタルビデオからビデオ・オンデマンド(VOD)、特にサブスク(月額見放題)のSVODへと、視聴メディアがディスクからストリーミングへ変わった人も多い事でしょう。HBOも有料放送ビジネスを根幹としていながらも、しっかりHBOMAXという新たなストリーミングサービスをローンチします。あ、もうすぐだ。

海外ドラマとは、アメリカのドラマがほとんどですが、アメリカの新作ドラマがどう発表されるかを説明しましょう。従来、アメリカのテレビ局各局が、ハリウッドスタジオなどの制作会社が用意した無数の第一話(PILOT)のラインナップから選択し、新作として巨大なプロモーションの上、放送します。視聴率の良いものについては、放送途中でエピソード制作計画を増やし、第一シーズンが良い成績で終わると、翌年に第二シーズンをオーダーするという形式でした。本来であれば、まさに5月中旬の今頃、LAでは来年度の各スタジオのドラマの新作が、決定した放送局の編成リストと共に発表されている頃でした。つまり、ドラマビジネスの主役・主導権は共に、選択・編成する「アメリカのテレビ局」であったわけです。しかし、その形態が、ストリーミング戦争により変わってきました。Netflix、Amazon、AppleTV+といったサービスが、次々にオリジナルドラマを発表しています。それに伴い、スタジオの制作陣をヘッドハントし、自分たちのサービスに良質な作品を作ろうとする。アメリカのテレビ局で毎週放送され、それがヒットすれば海外のテレビ局に配給するという図式ではなく、ストリーミング各社は、オリジナルを制作し、一気に自社のグローバルネットワークで全世界に全話配信するというスキームに変わってきました。

そして、今週発表されたSony Pictures Television(SPT)のAlex Rider/アレックス・ライダー。

Sony Sells Teen Spy Series ‘Alex Rider’ to Viaplay, Starzplay and Showmax in Slate of Deals (Variety)

アンソニー・ホロヴィッツのベストセラーのドラマ化ですが、このVarietyの記事が伝える中で、何が特別なのかというと、上記で述べたような、従来のスタジオが取っていた方式(アメリカの放送局を基軸としてから、海外の放送局やストリーミングサービスに二次販売)ではなく、SPTは、最初から全世界(100か国と記載されています)のパートナーを決め、一気に配信・放送するという方式を取りました。記事には、各国のローンチパートナーが発表されており、イギリスはAmazon Prime、韓国はKT、そして日本ではU-NEXTであることが書かれています。

今回のSPTの配給方式では、アメリカの放送局に左右される事なく、全話を最初から計画通りに揃え、短期間で、全世界に販売することが出来ます。アメリカの放送終了後、やっと海外で売り始めていた従来のやり方ですと、契約達成までに2-3年かけていたセールス期間を、一気に短縮出来るわけです。つまり、権利料金も短期間でSPTに入ってくることでしょう。また、NetflixやAmazonのような成長著しいグローバル企業に、一発交渉で全世界分売ることも出来たでしょう。しかし、なぜやらないのか?思うに、その方式では、大概一社独占で、何年間もAlex Riderがホールドされてしまって終わりです。それ以上、SPTには入ってきません。発展もしません。そうなってしまうよりも、今回の方式では、SPT自社の販売網により、各国で多角的なビジネス展開や二次販売へと次々に発展させるという事が可能なわけです。

そういえば、数年前、SPTの敏腕プロデューサーやヒットメーカーが、Appleに引き抜かれた記事を読んだ事を思い出しました。今考えると、AppleTV+の準備だったのでしょう。SPTとしては、今回のAlex Riderプロジェクトは、そのリベンジなように見えて仕方ありません。

そもそも、SPTには、それだけ、この作品に自信があるから、このチャレンジが出来るわけです。まだ作品については、原作と予告編以外はベールに包まれている状態です。作品の面白さについては、実際に見てから書いてみたいと思います。

日本はU-NEXTで、夏ですって。

それにしても、データが出てこないから新人なんだろうけど、この主演俳優、オット・ファラント…。かっこいいなー。久々に、スターが生まれそうな気がしています。

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