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緑に満ちる夜は長く 家族は他人だし、他人は言わなければ何も分からない

戸塚祥太さん舞台行ってきたよ〜〜〜〜!!!!!ちょうど観劇の数日前にえび座の円盤が届いて、「戸塚祥太さん、最高!」の気持ちのまま観ることに。なんとなく東京楽ごろに感想文を出すことが多かったけど、みんなに見て欲しすぎて大急ぎで書いてます。

以下、めちゃくちゃネタバレです。


女手一つで男四兄弟を育て上げた母をコウ(戸塚祥太)を看取る。母の死をきっかけに兄弟が集まり、母の遺品として出てきた金庫を開けるための業者として、30年前に家を出て行った父が帰ってくる。30年間の家族での記憶をそれぞれの立場で振り返りながら、突然現れた父親とどのように接するのか、これからどのように生きていくのか、家族の形が大きく変わっていく。

起承転結ではなく、「30年ぶりに帰ってきた父親」を軸に、それぞれが30年間抱えてきた想いを明かすことで四兄弟と両親の関係性が変化していくという作品。借金を抱え、家に借金取りが来ない為に黙って家を出て行った父、心配かけない為に自分の病状を息子たちに伝えなかった母、家にお金を入れる為に中学を卒業して家を出て行った兄たち、コウの今後を心配してコウに黙って父を葬儀に呼ぶ3兄弟。それぞれ「家族のためを思って」話さなかったことであるが、話さないからこそ誤解されたまま30年の月日が流れてしまった。しかし、話さなかったのは本当に「家族のためを思って」だけだろうか。父が黙って出て行ったのも、かつて母がこの家に父親がいない理由を「緑レンジャーになったから」と嘘を話したのも、ハンデを抱えた弟のいる家を出て就職したのも、本当は「家族のため」だけではなかったからこそ、コウは自分を「みそっかす」にされていると感じていたのではないだろうか。「家族のため」という理由はありながらも、心のどこかでコウを面倒臭いと感じていたのではないだろうか。
母の死をきっかけに家族のために黙っていたことが明らかになることで、徐々に雪解けしていく家族たち。最後にケイがコウとの同居を「めんどくさいじゃん」と断った上で、腹を割って話そうとした時に、上っ面だけの「家族のため」という形式上の理由を取っ払い、初めてそれぞれを理解できるのだろう。家族は他人なので、言葉にしなければ何も伝わらないが、関係性はどこまでも続いていく。関係性が続く限り、やり直すことはできるのだ。

場面の展開ではなく、それぞれの過去を回想する形でキャラクター同士の関係性が変化していき物語が進行していく今作。関係性が変わるのはキャラクター同士だけでなく、私たち観客と舞台上のキャラクターも同様だ。特にコウに関しては、終盤あまりに厳しく父親に接するので、見ているこちらも兄たちと同じように「まぁ気持ちはわかるけどそこまで言わなくても…」と冷めた目で見てしまう。その後、母親が父親の帰りを30年間待っていたこと、それをコウだけが知っていたこと、コウは母親の代わりに怒っていて、そして、本当はコウもずっと父親に会いたかったことが分かる。私もコウのことを、ただ30年間の不在に怒っているのだと誤解していたが、そうではないことを説明されてやっと理解できる。意図してこのように作られていたのかはわからないが、この構図かかなり綺麗で、自分も緑川家の一人として胸を突かれる感覚だった。

戸塚祥太さんについて、おそらく多くの人がエキセントリックなイメージを持っているだろう。だからなのか、舞台もそういった“変わった人”の役を演じることがかなり多いが、芝居を見ていて「戸塚祥太」を感じることはほとんどない。なんとなく戸塚さんっぽい役が来ることが多いのに、どれも戸塚さん本人っぽくないのだ。あまり俳優に憑依型という表現をするのは個人的にあまり好きではないが、そう表現するのが一番しっくりくる。A.B.C-Zは面白い舞台をやりすぎ。また見させてください。

以下、雑感

今回の劇場は新国立劇場小劇場。そう言えばちょうど1年前くらいにA.B.C-Z橋本良亮さんの舞台で大劇場の方に行った気がする。その時も今回も母との観劇だったが、観劇後に笹塚のボーリングに行くのがルーティンだ。あまり観劇していて腰やお尻が痛くなることが無い屈強な身体を持っているが、新国は大劇場も小劇場も腰が痛くなる。大劇場には申し訳程度のエアウィーブが置いてあるが、それもなんかムカついてくる。(小劇場にもクッション的なものがぺらっと置いてある)

今作のポスターがかなりシンプル(オブラートに包んだ表現です)で、ジュニア担をしていると“終わり”の作品を見ることが時々あるので、ポスターが発表された時に「戸塚さんでさえも…………」と絶望していたものの、作品はかなり良かった。泣きすぎて片目のコンタクトが取れた。ポスター時点で作品の悪口を言うのはやめよう。

ケイを演じていた溝口琢矢さんの顔が可愛すぎてびっくりした。口がめちゃくちゃ今野大輝さん(自担)に似てふにゃふにゃで、良いふにゃ口男を知れました。2.5とかも出ているようで、そこそこ知られた存在らしい。いつか今野大輝さん、IMP.松井奏さんの舞台にも出ていただいて、口ふにゃふにゃ王を決めましょう。

全然関係ないが、本当に人に対して「憑依型」と評する現象がずっとしっくり来ない。多くの場合憑依型とされる俳優は「感情の起伏が激しい役を演じるのが得意な人」な気がしており、ジュニアだと川﨑皇輝や矢花黎がそう言われているところをよく見るが、個人的には二人は全く違うと思う。確かに二人とも非日常でネガティブな芝居(刺されて絶叫したり、目の前で人が死んで激怒したり)が似合うが、それとこれは話が違うだろう。なんか「憑依型」という言葉では表せない良さがあるのにそう評されることになんか毎回「なんだそれ」と怒っている。私が。なぜ? でも戸塚さんはなんとなく自分の感情をベースに演じていない気がして、強いて言えば憑依型とするのにまぁ適している気がする。

A.B.C-Zの舞台はこれで一旦終わりかな?橋本さんの舞台も来ると思ったけど今死刑囚のドラマをやっていて、それがめちゃくちゃ面白いと母が言っていた。どこかで時間を見つけて見ます。A.B.C-Zは常に面白舞台を抱えすぎているので、特に担当ではないものの、情報局の次に稼働してるFCの気がする。


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