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中国語の勉強は何のため?

Vol 7  日本  中国語勉強する生徒  中国語を教える教師

楊さんの取材の前半は前回紹介した彼女のパステル絵画という趣味,後半は、楊さんが中国語を教えている生徒たちのことです。

楊さんは30年以上前から中国語を教えはじめました。
ある自治体の国際交流センターでの中国語教室、外国語教育をビジネスにした民間企業の中国語教室、大学での中国語という教養科目、企業の社員向け中国語教室......

中国語教室

中国語を勉強する目的はさまざまあります。履修単位を取得するための大学生から、仕事柄、成果を上げる必要のある会社の経営者や社員まで。

そのほかには、大学で中国語を教えている日本人教師や、大学時代に中国語を勉強したことのある人もいます。その多くは、日本のメディアが伝えないような中国人の本当の考えや社会状況を本場の中国語で知り、時代に合わせたリアルの中国語の語力を高めるためです。

また、趣味で中国語を学ぶ人たちもいます。ゆったりとした生活を送っている中高年の女性たちと定年退職して男性たちが多いです。職業、年齢、性別、結婚歴、生活環境は異なりますが、中国語を学びたいという気持ちは共通しています。

それは、中国の風景、中国の歴史、中国の古文や漢詩、そして中華料理の味などに対する憧れや好感をそれぞれ持っていて、中国語で中国のことを触れ、感じたいからです。

楊さんによると、彼らは中国語をゼロからのスタートでしたが、授業のペースや中国語の上達に特別に求めているわけではなく、中国語学習の雰囲気に浸ることを楽しんでいます。授業中に先生が何を言っても興味津々で、中国における自らの経験を分かち合えることが好まれます。みんなは、気の合う仲間になりました。

授業風景

日本に、このようなグループはたくさんあります。 また、何度も中国に留学した人もいます。結局、「こんにちは!」「ありがとう!」という簡単な中国語しか言えませんでしたが、このような経験において、とても満足しているようです。

滞在中、中国人と同じ生活空間に身を置き、見るもの、聞くもの、吸う空気、食べるもの、飲むものなど、様々な感動、刺激、そして異文化体験の喜びに満ち溢れていた日々を過ごしたからです。

映画評論家の友人は、中国映画について幅広く執筆しており、さまざまな題材を触れていたので、一度中国での生活を体験してみたいという夢を抱いたと言います。57歳になった2008年、彼女は1年間、北京言語大学に留学し、その年北京で開催したオリンピック前後の中国も体感しました。

その間、彼女はよく「なぜこの年で留学するのか」と聞かれ、「中国に興味がある」と答えたら、なかなか理解してもらえず、困ってしまったことはしばしばでした。最後は、「私は記者です」と言って、何とかその会話を終えました。

"留学は若い人だけのもの"、"年をとってもなぜ外国語を一生懸命勉強するのか"、こうした中国人の固定観念にぶつかったエピソードは、彼女の留学に対する深い印象のひとつでした。

本題に戻ります。
生徒たちは、年齢を重ねるにつれ、体力、気力、記憶力も以前とは違ってきています。 何冊か教材を終えた彼らは、ステップアップの教科書を選ぼうとせず、先生の中国についての話を気軽に聞いたり、教室の外ではあまり感じられない楽しみを生徒同士と共有することを好みます。中国語教室は彼らの生活の中で慣れたサードプレイスと化しています。

また、会社経営者や茶道・華道家など、仕事に追われ、ストレスの多い生活の中で、中国語を勉強する趣味をスパイスにする人もいます。漢字や四字熟語・ことわざから得たインスピレーションを仕事に活かします。

中国の春節パーティーで中国伝統文化を体験する風景

20数年前、ある75歳の男性が「漢詩が好きで、暇な時間を埋めるために5年間中国語を勉強するつもりだ」と言いました。5年、10年経っても教室に通い続け、15年、20年経っても95歳になったその方が教室で熱心に勉強している姿が見られるのです。

コロナで教室が一時的に閉鎖しました。その間、その方は転倒して健康状態が急激に悪くなったこともあり、とうとう、別の都市に住む娘さんのところへ同居することになりました。引っ越しの前に、その方は残念そうに楊さんに電話をかけて別れを告げました。

時が経ち、高齢になった方々はだんだん通えなくなりましたが、中国語の教室も、授業料も昔のままです・・・。残された生徒たちは、先生の収入が少なくなったことに申し訳なく、「先生、これでいいの?」と心配そうに聞きました。

この20数年のことにおいて、
「私は、彼らの髪の毛が薄くなったことを見てきました。彼らも、私の目尻に少しずつシワが刻まれるのを見てきました」と楊さんは感無量でありながら、仕事のやりがいについて、次のように言いました。
「中国語を教え、中国の姿を知ってもらう一方で、日本語の表現、日本の文化、生活の知恵など、彼らから学んだこともたくさんありました。 私が与えたものよりも、彼らから受けたものの方がるかに多いていると感じています。」

「中国語を楽しむことは彼らの生きがいでもであるので、中国語を学ぶ場をなくしてほしくない」と言った楊さんは、生徒たちが一緒に歩んできたことを宝物とし、これからも、教室でみんなと会い、中国語を教えていくそうです。

写真提供:取材を受ける方

中国語バージョン


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