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アニメの『平家物語』を観て考えた、歴史と日本人の話

年末に、アニメの『平家物語』を観ました。


OP、EDがとても良い

最近のアニメはあんまり観ないんですが、OPとEDがとても良いですね。
平家が滅ぶとわかっている前提での作りが涙を誘うし、OPの愉快な平家の仲間たちがみんな笑顔なのも本当に沁みます。
EDもかっこいいですね。

悪役だけではない平家

本編は、びわという少女を主人公として、悪役としてではない平家の愉快な仲間たちとの交流を中心に描かれていきます。
「平家にあらずんば人にあらず」という有名な台詞が消されるわけではないのですが、等身大の、真面目だったり気弱だったりお調子者だったりする若者たちが、平家というイエ組織の中であがきながら、世の中の動きに翻弄され、流されていく様が描かれています。
だから、ハラハラするし、びわとともに「死ぬな!」と思ってしまう。

私は平家物語の本編を全部読んでいないので(大昔に吉川平家2巻で挫折……)あれなんですが、平家のみなさま、あんなに西国をあっちこっち流民のごとく流離ってたんですか? いや、あれはメンタルもっていかれるわ。
ずっと「平家ってちょっと簡単に入水しすぎじゃない? もっと粘れよ、捲土重来をはかれよ」って思ってたんですけど、若様たちにあれはしんどい。

やっぱり、平清盛というただ一人の強大なカリスマによって作られた集団は、そのカリスマを失ったとたん、寄りかかる大樹なき状態では、維持するすべも何もわからなかったのかもなあ……と観ながら思いました。
人がいいだけのあんちゃんたちでは、政争は乗り越えられない。
もてはやされてきた若様たちでは、地べたを這いずる生活はできない。

大きすぎる望み(権力)は身を亡ぼす、というやつですよね。

滅ぼされた平家に同情する違和感

それでも、滅びに向かって突き進む平家を「かわいそう……」と思うことに対する違和感は、ちろちろとくすぶっていました。
平家が滅ぶには、それだけの理由があるからです。

権力を独占して驕れば、影のように恨みに思うものは生まれます。
かつての平氏が、天皇家や藤原氏に押さえつけられていたように。
自分たちに都合のいい世の中を作ってやる! と誰しも思うのは当たり前のことなのに、他者に対する想像力が欠如していた。
だから、滅んだんですよね。

また、当時は気候変動があったりして、大規模飢饉で餓死する農民も多かったと思われます。
東部ユーラシアでは五胡十六国や、キタイ帝国と宋(北宋)の南北朝関係の時代で、食べるのが大変だから国が荒れるんですよね。
京の町にも餓死者はあふれていた。でも日本の施政者って、庶民救済のための抜本的な改革手段を取ってきてたかな? という気がするんですけど、日本史はこれから学習しますの身なので、なんかやってたらすみません。
ただ、平家に連なるものばかりがいいご飯を食べて、庶民は食べられない……というのは、国が荒れるもとだし、施政者としてはダメなんですよ。下の者もそれなりに食べて生活できる社会にしないと。

敗者に同情する日本人

判官びいきと言われるように、日本人の多くが敗者に同情しがちです。
私も、頼朝は苦手。(大泉頼朝は、まあともかくとして)
強者以外を足蹴にするより、心情としては全然いいと思うんですが、なんでかなと考えたときに。
結局、庶民って敗者にしかなれないからなのかも……と、ちょっと思ってしまいました。

いや、だって。
将軍になるのも関白になるのも、血筋が限定されるんですもん。源平藤橘。
将軍になりたかった秀吉が、そこで躓いたのは有名ですよね。
明治以降も、強かったのは薩摩・長州の志士とその子孫。
今も世襲が幅を利かせる世の中です。
庶民の大半は、搾取される側。

この、固定化してしまった階層意識が、落ちてくる敗者(しかも元強者)に同調してしまうというか、死なねばならない敗者より生きている自分の方がまだマシだと安堵させるというか……どす黒すぎだろ、私……。

敗者に同情して、それでも生きていけるくらい、この島国は平和だった、とも思うんですけどね。

おわりに

平家物語は、長い年月に耐えてきた作品だけあって、やはり面白いです。
日本人の心を揺さぶる作品だからこそ、700年以上も残っているわけで。
そういう古典を、知識としてだけでなく、作品として楽しむというのは、生きる豊かさだと思うんです。

この作品はいいアニメでした。

どういう作品が残っていくかは、作品にふれる我々自身の受け止め方も問われます。
できれば、目先の収益だけではない、面白い作品がたくさん出てほしい。
100年後の古典となるような作品にも出会いたい。
そして、作品に描かれた日本人の姿も見定めたい。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
またご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。

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