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映画・本

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映画と本からの考察。
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星 新一短編ドラマ「見失った表情」 ・美容整形の次に求めるものは

星新一さん原作の「見失った表情」を見ました。あらすじは以下。 なにより原作が1961年、今から63年前ということに驚かされます。 1926年生まれの星新一さん。人の本質を見抜く、そしてそれを作品として想像する、その能力に圧巻しました。 ・ 美容整形に関しては、外見を綺麗にしたいという心情はわかります。私自身、二重になりたくて高校生の時にアイプチをしていました。 (その後、高2くらいに風邪を契機になぜか自然と二重になり、そのまま二重になりました。若干、記憶は曖昧ですが。

最高におもしろくて、家族とは?を考えさせられる本 「猫沢家の一族」

末っ子4人目が誕生し、6ヶ月になります。 常にべったり生活、夜も授乳しながら添い寝の日々。映画をじっくり観る…とは程遠い、期間限定の赤ちゃん生活。そんな中、最近気になっている猫沢エミさんの新刊を読みました。本はじっくり観なくても、分割して読めるので授乳母の外気に触れたい欲を満たしてくれます。 猫沢エミさんは、ひょんなところからインスタで知り、日常を鮮やかに、ユニークに表現する文才に惹かれ、フォローしていました。 同じものを見ていても、そこから何を感じ取れるかは、その人の

「おもひでぽろぽろ」③記憶は書き変わる

ラストは、過去の記憶についてです。これは映画に直接関係がないですが、この映画が過去の記憶が大きなテーマだったので、記憶についての考察としてお読みいただけたら嬉しいです。 こちらの続きです。 「おもひでぽろぽろ」①高畑勲監督の人間の心の描き方 「おもひでぽろぽろ」②共感と記憶 映画は27歳のタエ子が小学5年生の頃のエピソードを思い出しながら話が展開していきます。 ここが重要で「27歳のタエ子から見た記憶の中の小学5年生の世界」です。 それが本当にタエ子が小学5年生の頃の

「おもひでぽろぽろ」②共感と記憶

①の続きです。 子どもの頃に何度も観た「おもひでぽろぽろ」の映画。大人になってから観たのは初めてです。 人の記憶は以下のどちらかがないと記憶に残らないということをこの映画を通して気付かされました。 ■共感する ■共感がなくとも想像して理解しようとする 解説させていただきます。 ・ 映画を観ながら驚いたことは、主人公、タエ子の小学校5年生の子どものシーンは明確に覚えているのに、27歳の大人になってからのシーンはほとんど記憶に残っていなかったことです。 高畑監督作品の魅

「おもひでぽろぽろ」①高畑勲監督の人間の心の描き方

映画「おもひでぽろぽろ」を観ました。そこから感じたことを綴りたいと思います。 まずは高畑勲監督について。 ジブリ映画といえば、宮崎駿監督。 「火垂るの墓」もジブリ映画だけど、なんだか佇まいが違うな〜と思っていましたが、監督が違うと明確に認識したのは大人になってからでした。 そして先日、高畑監督の「かぐや姫」を観ました。 この映画、とても味わい深く素晴らしくて。こちらもまた綴れたらと思っていますが、高畑監督というのは登場人物、特に主人公を「ヒーローで憧れる存在!」とい

映画「ミッドナイトスワン」ー母性について考えるー

2020年の映画、Netflixで配信され、旦那さんにお勧めされて観ました。 まだクライマックスじゃないでしょ、という序盤から涙が止まらなくて、心の奥底に響いて、響きすぎて。 この想いを表現しないわけにはいかないと(誰に?)ずっと熱い気持ちがぐつぐつしていて、ブログに綴りたいと思っているのですが、この熱気のまま、まずはnoteに綴ってしまいます。 この映画はトランス ジェンダー(持って生まれた体の性が、心の性と一致しない。この、自身の体の性に対して違和感を持つ人のこと)

🇫🇷映画「パリ警視庁:未成年保護部隊」 愛とは? 家族とは? 母性とは?

虐待や未成年犯罪をテーマにした社会派映画でありながら、愛とは何かを突きつけられる映画です。 監督は女優でもあるマイウェン。リュックベッソン監督の元妻。リュックベッソン31歳、マイウェン15歳の時に妊娠し、16歳で結婚、出産、その後離婚されています。リュックベッソンの代表作である「レオン」はマイウェンとの関係からインスパイアされた映画といわれています。 マイウェンがパリ警察の特別部隊へ同行取材をし、この映画を作成、映画に出てくる数々な事件はどれも実際にあったものだそうです。

「人それぞれ」思考の危うさを考える

「人それぞれ」=相手を尊重している、というイメージを持っている方へお勧めしたい本です。(私もその一人です。) 約10年前に看護師から離れ、個人で活動を始めた時に名付けた屋号が「honoiro(歩の色)」だったのですが、この言葉には「人それぞれの人生を尊重したい、多様な意見を認め合いたい」という気持ちがありました。 でも、多様な意見と言いながら、私は相手の意見や意図を理解しようとする意識に欠けていました。 相手の気持ちを理解していないのに、相手の意見を認める、ということは

映画「マグノリア」から見る、人間の心の葛藤。

監督のポール・トーマス・アンダーソンが、エイミー・マンの歌にインスパイアされ、彼女の音楽を映画化した作品です。 監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン 出演者:フィリップ・ベイカー・ホール     トム・クルーズ     メローラ・ウォルターズ     ジェレミー・ブラックマン     ジェイソン・ロバーズ     ウィリアム・H・メイシー     ジョン・C・ライリー     ジュリアン・ムーア     フィリップ・シーモア・ホフマン 公開年:1999年 1、映画の

映画「ベティー ブルー」 狂おしい愛から学ぶ、感情のエネルギーの危うさ

原題:37°2 le matin ,Betty Blue(37.2度の朝) (1986年/フランス/178分) 監督:ジャン=ジャック・べネックス 出演:ジャン=ユーグ・アングラード、ベアトリス・ダル ゾルク(男)とベティ(女)の愛の物語。なんて軽いものではなくて。 ベティは感情の起伏がとにかく激しい。スイッチが入ったら止められない。物にあたるのは序の口、家に火を付ける、人に危害を加える。。その度に優しく彼女を包み込むゾルク。 でもベティの感情の波は大きくなっていく。そ