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雪の中にぽつんと片足だけの足跡が… (日常の中の不思議ファイル 5)

N町は不思議な話がたくさんあるそうですが、
これはヒロさんから聞いた話の中の一つです。

国道沿いを西に走って右側に
地元の人が三角山と呼んでいる低い山があります。

そこはキノコ採りに出かけた慣れた地元の人でも
いつの間にか迷ってぐるぐると同じところを歩いてしまうようなところなのだそうです。

歴史民俗資料館に文献が残っている伝説によると、
三角山の頂上には
昔この地の疫病から人々から救ったS姫の像が祀ってあったそうです。

三角山は東西南北ピラミッドのような形をしており、
毎年お祭りの日には人々が集まって
急な参道の階段をS姫の像を担いで降ろし
沿道にいる人々が歌を歌いながら米などを撒いたとか。

ところでその三角山の南側は、ある時から
いろいろな災厄が起こって大変なんだとか。

ヒロさんは
「まあ、これは年寄りのたわ言と思って聞いてくれ。」
と言う言葉とは裏腹に、まるで重大な秘密を告げるかのように声を落として、仰々しく地図を広げて説明してくれました。

「この南側にあたるこの集落は、今年ここだけ集中的に大雨が降って、少し高台になっていたのに土が流されて平らになるくらい大きな被害にあったんだよ。」

(ほんとかな?と思ったのですが、のちにその近くに住む人の噂話の中でその話も出てきて、事実だったことに驚きました。)

「そしてここ、三角山の参道をまっすぐ南に、川にかかる橋があるだろう、

三角山の参道の入口に石の鳥居があったんだが、
長い年月の間に倒れてしまったいたんだ。
それをあろうことかその一本をこの川の橋の一部に使ってしまったんだよ。

そしてこのすぐそばに十字路があるだろう、
周囲に何もない、見晴らしのいいこの交差点で事故が多発するようになったんだよ。

幸い死者は出ないくらいの事故なんだが、
どこからも見える、こんな場所で
今まで事故なんかまったくなかった所なんだよ。」

「そして石の鳥居のもう一本は…
ちょっと離れたここに1軒農家があるだろう?

ここに隣接している畑は、
何を植えても真っ黒に枯れるようになってしまったんだ。

初めは誰かの嫌がらせかと思われたが
これだけの面積を枯らすほどの農薬を、お金をたくさんかけて買ってまで、嫌がらせをする人などいないだろうってことになって、今でも不思議がられているんだ。

そしてこの家はいろいろごたごたがあって、一家離散してしまった。
今はだれも住んでいないんだよ。

この家の後ろには小さな祠があって
実はそこに鳥居に使っていたもう一本の石の柱がある。」

それ以外にも不思議な話を地図を見ながら
ヒロさんはとうとうとしゃべっていたのですが、
その鳥居の石の話はなぜか強く印象に残っていました。

しばらくしてヒロさんが入院したと聞いて
N町にお見舞いに行った時、
それを思い出して見に行くことにしました。

場所は分かっています。
2月の、日本海側にほど近い地方ですから、深い雪の中でした。

橋に使われている石はよく分かりませんでしたが
くだんの農家はすぐわかりました。

荒廃していかにも無人の気配がします。

誰の足跡も無い、広い庭のまっさらな雪の中を歩いて
家の裏手に回り込んでいきました。

ヒロさんの話の通り、確かに小さな祠があります。
そしてそこには鳥居の一部と思われる石の柱も。

そしてその手前の雪の中に
ぽつんと、
片方だけの小さな足跡がありました。

周りをぐるっと見回しても、いま来た私たちの足跡だけが残っています。

それは子供の足跡のように小さくて
でもなんだか狐に化かされたような感じがして
早く帰りたいような気持ちになりました。

そして祠の中を覗き込んで
思わす「あっ!」と声を上げてしまいました。

そこには祠の中によくある御札の代わりに、
雪の中の足跡と同じ、足形の板が祀ってあったのです。

そしてそれは黒く濡れていたのでした。


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ほのくに

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