演劇以前の演劇の話 【第3回】「体調悪い」
「なーんか体調わるいんだよねぇ」
という言葉が、演劇の稽古場から消えてしまったなあと思った。これは演劇の現場だけではないだろう。職場だったり、町内会の集会や商店街の店先、老人ホーム、あるいはデート現場にだって、この言葉が出現することがあった。大体、出会って冒頭に言う。話しやすい相手に、時候の挨拶のように、体調の悪さを、ぼんやりと言っていた。
今、この言葉を口にすることはできない。少しでも体調が悪い場合は、人と会ってはいけないからだ。少なくとも演劇の現場では、体調の悪さを