【注意喚起】仏像の写真だと思ったら全然違った話
ここ数年、人に頼まれて、仏像の写真素材を探す機会が多かったんですが、そのとき「ちょっとヒヤッとする体験」をしたのを思い出したので、共有させてください。
タイトルにあるとおり、いい感じの仏像の写真を見つけたと思っていたら、全然違う写真だったというお話です。
有名なフリー写真素材サイトとして、「Unsplash」というものがあります。このサイトの写真はとにかくおしゃれで洗練されているものが多いのでおすすめです。「Buddha」と検索するだけで数えきれないほどの美しい仏像の写真が表示されます。
あるとき、こんな写真を見つけました。
大きくて立派な仏像、壁一面に施された精緻な彫刻、静かに礼拝している女性の後ろ姿まで美しいですよね。これはぜひ使いたい、素晴らしい写真です。
でも、何か違和感があったんです。私が知っている仏像と何かが違う気がします。
ちょっと、仏像にズームしてみましょう。
螺髪(くるくるした髪の毛)もありますし、耳たぶも肩につくくらい長いです。いかにもお釈迦様という感じですね。
でも、ちょっと待ってください。眉間の白毫がないですよね。
あと、服も着ていない。裸のようです。
胸のところにある花のようなマークは何でしょうか。
それに、お釈迦様はこんな手の重ね方をしていたでしょうか。
こうなると、不思議なもので、だんだん仏像に見えなくなってきます。
一体このお方は誰なのでしょうか。
ちょっと、タグを確認してみましょう。
「ラージャスターン」「インド」「ナレリ」
これらは地名ですね。インドのラジャスタン州にあるナレリという土地で撮影したのでしょう。位置情報にも「Nareli, Rajasthan, India」と表記されています。他のタグには何と書いてあるでしょうか。
「仏」「砂岩」「茶色」「女の子」「レディ」「祈り」「テモール」「マハビル」「ジャイナ教」…
ジャイナ教…?
「ジャイナ教 nareli」で検索してみましょう。
こんな観光案内サイトが出てきました。
なんということでしょう…同じお像の写真が出てきました。
ここは、「ナレリ・ギャノーダヤ・ディガンバー・ジャイン・テンプル」(Nareli Gyanodaya Digambar Jain Temple)のようです。「ジャイン・テンプル」(Jain Temple)とは「ジャイナ教寺院」のことです。
やっぱり、仏像ではありませんでした。
危なかったですね。場合によっては、よく確認もせずに「仏像の写真」として使ってしまっていたかもしれません。そんなことをしてしまったら、仏教の僧侶として恥ずかしいだけでなく、ジャイナ教の方にも失礼になってしまいます。
調べたところ、このお像はジャイナ教の開祖「マハーヴィーラ」(Mahāvīra)であるとのことでした。
タグの「マハビル」というのは「マハーヴィーラ」のことだったのでしょう。「テモール」については調べてもわからなかったのですが、「テンプル」の間違いかもしれませんね。
ここまで読んでくださった方のなかには、「いや、全然違うでしょ、わかるでしょ」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、仏像って本当に時代や地域によってさまざまで、そういう豊かなバリエーションの写真ばかり見ていると、今回の写真も、「ちょっと珍しいタイプの仏像なのかな」と思ってしまいかねません。しかも、何が危ないって、この写真にちゃんと「仏」(Buddha)のタグも付いているんですよね。
それに、ジャイナ教の存在は知っていても、どのような姿のお像を拝んでいるかまで知っている日本人は少ないのではないでしょうか。だから、まさか、こんな「ブッダにそっくりなブッダじゃないお方」のお像があるなんて、想定できないと思うんです。
この記事によって、マハーヴィーラ像の写真を仏像の写真と間違えて使用してしまう人が(あまりいないかもしれませんが)、少しでも減ってくれたらうれしいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?