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お茶にまつわる色々な「はじめて」【お寺でわたしも考えた】vol.7

【お寺でわたしも考えた】は、私が日々何となく思ったことをつらつら書いていくエッセイコーナーです。

今回の記事は、noteの企画「春の連続投稿チャレンジ」に参加するため、ハッシュタグ「仕事について話そう」をテーマとして書こうと思います。

◇◇◇

お茶接待のセルフ化

私がお寺で担当している仕事のひとつに、「年忌法要に参列するためにいらしたお客さまのために、お茶(緑茶)の用意をする」というのがあります。

なぜ、「お茶をお出しする」のではなく、「お茶の用意をする」という言い方なのかというと、湯呑みにいれたお茶をお出しするのではなく、自由に飲んでいただけるように「お茶セット」を置いておくという形で接待しているからです。

以前は、湯呑みにいれたお茶をお出ししていたのですが、コロナ禍に突入して、「自宅以外で飲食したくない人もいるのではないか」という思いから、セルフ方式をとるようになりました。

お盆のうえに急須・湯呑み・お茶筒ちゃづつをのせて、熱いお湯をいれたポットとともに客間に置いておきます。お茶菓子も、一人分ずつ出すのではなく、大きめの菓子器に色々なお菓子を盛って、好きなものをつまんでもらえるようにしています。

一応、法要の準備は前もって済ませてありますが、当日お持ちになったお供えものをご宝前にあげたり、急な人数変更があったりとバタバタしがちなので、お茶接待のセルフ化は私自身とても助かりました。

お客さまの方も、快く受け入れてくださって、ありがたいかぎりです。

結局、メリットが大きかったので、コロナ禍が明けてもお茶の「セルフ方式」は続行することとなりました。

お茶をいれるのは楽しい時間

今でこそ定着したので気にしていませんが、はじめの頃は、少し罪悪感というか、申し訳ない気持ちがありました。

でも、当のお客様の方はというと、これを機会にとお子さんや若い方がお茶いれに挑戦したり、親戚同士お茶を運んでお話をしたりと、なごやかな時間を過ごしてくれているもので、次第に私も安心して「セルフ方式」のご案内ができるようになりました。

お子さんのなかには、生まれてはじめて緑茶を飲んだ、という子もいれば、ペットボトルの緑茶は飲んだことがあったけれど急須でいれた緑茶ははじめて、なんていう子もいて、そういった機会の場としてお寺が関われることもうれしく感じます。

そして最近、ちょっとおもしろいことが起こりました。「ポットをはじめて見た」という若い方が、立て続けに2人いらっしゃったんです。

はじめてのポット

私のお寺で使っているのは、湯沸かし機能もなくただただ保温してくれるだけの手押し式ポットです。電源も電池も必要なく、上部の大きなボタンを押すとお湯が出てきます。

お恥ずかしながら、どういう仕組みでお湯が出るのか、私はわかっておりません

このポットを使い慣れている人からすれば、「こんな単純なもの、はじめてだったとしても、見れば使い方がわかりそうなものでは…?」と思ってしまいがちですが、そこが落とし穴なんでしょうね。「その道具を誰かが使っている所」を見たことがあるから「使い方がわかる」のであって、はじめに「道具」だけを見て使い方を推測するのは、至難の業です。

ある若い男性(おそらく20代前半くらい)は、どこを押してもお湯が出ない…と苦戦していたところ、用事があって客間に入ってきた住職に使い方を教わったそうです。お湯が出ない原因は、「ロック解除していなかったから」でした。

ロック…


解除!

彼の親御さんも一緒にいたのですが、まさか息子がロック解除していないとは思っておらず、ポットが壊れたのだとパニックになってしまったようです。無事お湯を出すことができたあと、「この手のポットはおばあちゃんの家でしか見たことなかったもんね」とみんなで笑っていました。

また別の法要でいらしたもう一人の若い方は、これもやはり20歳くらいの女性で、お母さんと一緒にお茶をいれようとしていて、「どうやったらお湯が出るの?」「えっ、この大きいのがボタンなの?」とお母さんに聞きながら、おそるおそるポットに触っていました。

よく考えてみれば、今どき、片手で持ち上げて傾けるだけでお湯が出てくる「ポット」もありますし、注ぎ口の下にコップを置いて、小さなボタンをピッと押すとお湯がでてくる「ポット」もあります。それに比べて、握りこぶしくらいの大きさがあるボタンを、力をこめてグッと押さなければお湯が出てこない「ポット」というのは、奇異なものに見えるかもしれません。

「いい経験ができました」と、お母さんは面白そうに笑っておられました。

人が集まる場所だから

ご家族の人数が少ないご家庭やひとり暮らしが増えているこの頃では、こういう単純な保温ポットというのは、あまり使われなくなってきているのかもしれないですね。

一方、お寺にある道具というのは、人が多く集まることを前提にした品ぞろえになっていますので、今回のポットのようなものが残っていくのでしょう。

こういうことがあると、「ロックを解除する」とか「ここを押すとお湯が出ます」とかシールでも貼った方がいいのかな…と一瞬考えたりもするのですが、いまのところ、「はじめてのポット」をみなさん楽しんでいるようなので、当面はこのままでいいかな、と思っています。

◇◇◇


今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、また。



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