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松の内に室町砂場の“天吸い“〜年越しそばに代えて

大晦日には、年越しそばだが、今年は様子が違っていた。一時帰国した長女家族が日本を立つのが元日の朝。それではと、大阪の実家で、一日早くお節料理を食べた。長女はもちろん知っているが、フランス人の夫、初めて日本に来る4歳と1歳の孫は初体験である。そうして、お腹も一杯になり、そばはスキップした。


年明け東京に戻り、そのリベンジというほど大袈裟ではないが、東京日本橋、明治2年創業の「室町砂場」を訪れた。12時にはなっていなかったが、数人の入店待ち。それでも、長時間待つことなく2階の座敷に通してもらった。

“天抜き“というメニューをご存じだろうか。以前に少し触れたのだが、“天ぷらそば“のそば抜きである。今はなき、「池の端藪蕎麦」のそれが絶品だった。同様に、鴨南蛮のそば抜きならば、“鴨抜き“となる。

「室町砂場」では、これを“天吸い“と称してメニューに載せている。このほかに“おかめ吸い“、“南ばん吸い“がお品書きに並ぶ。

正月なので、当然日本酒と蕎麦前。この“天吸い“、“そばがき“、“そばの実・ひじきの生野菜“と注文する。

“天吸い“は小エビの入ったかき揚げが浮かぶ。最初の頃はサクッと、次第につゆが沁みていく。この変化も楽しい。恐らく、そばつゆよりも薄めに仕立てた吸い物仕立てになっており、お酒を飲んだ口内をリフレッシュしてくれて、さらに盃が進む。

そばがきは、ふんわりとした絶妙の食感で、そばの風味が口中に広がる。やはり、お酒にピッタリである。そばの実をあしらったサラダで、「蕎麦屋は野菜が少ない」とする女性陣の声は消される。

仕上げは、もりそば。辛めのつゆに少しつけて食べるのが正解。決して江戸前を気取るのではなく、そばの香りとつゆの味の調和を楽しむには、これがベストだ。わさびはつゆには溶かず、そばの上に乗せ、ネギは合いの手としてネギだけを食べる。

食べ方は、どうでもよいのだが、ようやく年越しそばを食べた。新年を迎えた気がした。

この日は1月7日、そう言えば七草粥を食べそこねた



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