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エマ・ストーンのアカデミー主演女優賞をどうみるか〜ヨルゴス・ランティモス監督「哀れなるものたち」

第96回アカデミー主演女優賞は、「哀れなるものたち」(原題:Poor Things)のエマ・ストーンが受賞した。エマ・ストーンは「ラ・ラ・ランド」で受賞しているので、もういいんじゃないのと思っていたが、二度目の獲得。当事者にとっては何度貰っても良いものだろう。

自分が観た良い映画は贔屓したいもので、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のリリー・グラッドストーン、あるいは「マエストロ」のキャリー・マリガンが獲得すればと思っていたので、少し残念。しかし、観ていないのに、あれこれ言うのもよくないので、「哀れなるものたち」に挑んだ。

“挑んだ“と言うのは、訳がある。この映画、興味はあったのだが、監督がギリシャ出身のヨルゴン・ランティモス。2018年の監督作品「女王陛下のお気に入り」が評判になり、オリビア・コールマンがアカデミー主演女優賞を獲得した。この映画、映画館で観たが、なんともテイストが私に合わなかったのだ。

“挑んだ“本作は、どのような映画か。

「哀れなるものたち」を「フランケンシュタイン」になぞらえる映画評を目にした。藤子不二雄Aの漫画「怪物くん」では、フランケンは傷だらけの顔の“怪物“。これに代表される通り、“フランケンシュタイン“=“怪物“との誤解が見られるが、フランケンシュタインは“怪物“を作り出すマッド・サイエンティストの名前。

「哀れなるものたち」では、ゴドウィン・“ゴッド“・バクスター(ウィレム・デフォー)、そして“怪物“を演じるのがエマ・ストーン。大人の肉体に、胎児の脳を移植した女性、ベラ・バクスターである。上記の誤解を逆手に取ったのか、“ゴッド“の顔は傷だらけである。

大人の器に、子供の感性を入れると、それはどう発揮されるのか、それが本映画の一つの見どころだと思う。人間の本性を描くということでもある。

この映画を観ながら、私は勝手に副題をつけていた。“ベラ・バクスターの冒険“である。イギリスを離れ、ポルトガルのリスボンを皮切りに、欧州大陸を舞台を駆け巡るベラの冒険が描かれるのだ。

前述の私の好みに合わないところは、本作でもやはり存在する。ただし、本作は“ベラ・バクスターの冒険“、大人のおとぎ話だと思えば納得できる。映画にしかできない“おとぎ話“、映像技術含め、よく出来ている。

そして、エマ・ストーンの主演女優賞をどう考えるか。“怪物“を、全身を捧げて完璧に演じられたら、誰も敵わないだろう。主演女優賞という概念から完全にはみ出しており、言ってみれば反則。リリー・グラッドストーンとキャリー・マリガンは、“怪物“と競うという年に当たった不運な二人である。

エマ・ストーンの主演女優賞、映画自体の面白さを含めて、大納得である。ただし、誰にでも勧められる作品ではないことも事実(ちなみにR18+)。やはり、ランティモス監督作品は普通じゃない


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