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1979年の桃井かおり〜前田陽一監督「神様のくれた赤ん坊」プラス2作品

「スチャラカ社員」(1966年)について書きながら、同作の監督、前田陽一の1979年の映画「神様のくれた赤ん坊」を観ていないことを思い出した。

この1979年という年は、桃井かおりが女優としての地位を固めた時期であり、私が役者としての彼女を認識した時期である。彼女の出世作の一つは、ドラマ「前略おふくろ様」(1975年〜)だが、私はリアルタイムでは観ていない。

ふと思い出したが、松坂慶子主演の「夜の診察室」と、桃井主演 藤田敏八監督「エロスは甘き香り」(1973年)が名画座で二本立て上映されていて、高校生の頃、したがって1978−9年あたりに観にいったような覚えがある。

こうした時代を経て、1979年12月、桃井かおり主演の映画「もう頰づえはつかない」が公開される。桃井演じる女子大生の生活を描いた作品で、私はすぐにでも観に行きたかったが、年明けに受験を控えた身。大学入学後、東京の名画座で観た。映画の世界と自分の生活が少し近づいてきたように感じる頃だった。監督は前年に森下愛子主演の「サード」で話題をさらった東陽一である。

「もう頰づえ〜」はATGの制作だったが、それに先立つ1979年8月はメジャーの松竹制作の国民的映画「男はつらいよ」でマドンナとして出演する。第23作「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」である。“跳んでる“は、当時“跳んでる女“というイメージだった、桃井かおりをイメージしたのだろう。

そして、「もう頰づえ〜」と同時期に公開されたのが「神様のくれた赤ん坊」、松竹映画である。主演は桃井かおりと渡瀬恒彦。 売れない女優と、売れないマンガ家が同棲生活を送る部屋に、女性(樹木希林)が小学生くらいの男の子を連れてくる。出奔した母親に頼まれたとし、その手紙を見せる。男の子の父親は特定できておらず、五人の候補がいる。その一人が渡瀬恒彦だというのだ。

桃井と渡瀬、そして少年は本当の父親を探すべく旅に出るのだった。

桃井かおりが可愛い。そして、この旅は彼女にとって別の目的があり、桃井は様々な表情を見せてくれる。魅力的である。

桃井かおりは、どんな荒んだ役を演じても、“翔んでる女“を演じても、内面から出てくる上品さは隠しきれない。そこが、桃井かおりの素晴らしさの一つだと感じる。

渡瀬恒彦は悪かろうはずはなく、吉行和子が印象的。その他、個性の強い脇役陣も楽しめる。「スチャラカ社員」に導かれて観たかいがあった。

第3回日本アカデミー賞、桃井は「もう頰づえはつかない」「神様のくれた赤ん坊」の演技により、主演女優賞を獲得する。

「もう頰杖〜」も見返したくなった



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