史上初(?)の講談マンガ〜「ひらばのひと」を読む

神田伯山が、自身が監修したマンガ、久世番子の「ひらばのひと」が単行本になったとラジオで話していた。早速、読んでみた。

“ひらば”とは、<軍記物の勇壮な場面を、講談で「修羅場(ひらば/しゅらば)」と呼ぶ>と、冒頭に書かれていた。

当然ながら、講談の世界を描いたマンガである。最初に読み切り版が発表され、それを受けて「モーニング・ツー」で連載化されたようだ。落語を題材としたマンガは、ドラマ化もされた雲田はるこ「昭和元禄落語心中」尾瀬あきら「どうらく息子」があり、どちらもよく出来ていた。他にもあるだろう。

講談となると、グッと認知度が落ちることもあり、マンガの題材になっという話は聞かなかった。古谷三敏「寄席芸人伝」に、演者の一人として出ているかもしれないが、メインではないだろう。

物語の導入は、二つ目の女流講談師、龍田泉花と、前座の龍田泉太郎を中心に展開される。落語に比べるとマイナーな存在の講談界、男の弟子がなかなか入らない中、支えてきたのは女性の講談師。 そこに入門してきた泉太郎。男性であるが故に大切にされる、芸の上での期待も高い。複雑な思いを抱く、女流講談師……といった幕開けである。

女性が多いというのは現実を反映しており、特に先代神田山陽が積極的に女性を育成したこともあり、神田派を中心とする日本講談協会は、会長が女性の神田紅、協会員も女性がほとんどである。もっとも、その総帥は人間国宝の神田松鯉ではあるが。

マンガの方は、読み切り版から、本連載に移り、第1話「鋳掛松」、第2話「応挙の幽霊」と、講談ネタをタイトルに、話を展開していく。

なんと言っても分かりやすい。講談を知らない読者にも、丁寧に接していて、“講談入門”本としても十分機能するはずである。

私自身も、講談についてはまだまだ経験不足だが、そうした演芸ファン、そして講談を知らない層にとって、このマンガが刺激となることを期待したい

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