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大西順子のピアノを堪能する〜一人舞台の夜

ジャズ・ピアニストの大西順子は、1994年にニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードに自らのトリオで出演。その演奏はライブCDとなって発売された。いつだったか記憶にないのだが、日本でのライブにも出かけ、これからも楽しませてくれる日本人アーチストが出現したと喜んでいた。

ところが、2012年引退を表明する。残念に思っていたが、2013年小澤征爾が指揮する、サイトウキネン・オーケストラとの共演、ガーシュイン作曲の「ラプソディー・イン・ブルー」で復帰する。その背後には、村上春樹、彼によって大西順子と結びついた小澤征爾の存在がある。一つのドラマである。

その後、大西順子のライブを観たのは2016年のブルーノート東京。菊池成孔プロデュースによるアルバムをベースにした公演で、ビッグバンドとの共演が中心だった。大西順子のピアノがもっと聴きたいと感じつつ、ゲストで登場しビッグバンドを指揮した狭間美帆に驚いた。彼女の作る音楽の素晴らしさに、大変な才能が登場したと思った。狭間はキャリアを重ね、2020年にはアルバムがグラミー賞にノミネート、世界で活躍している。

あれから随分間が開いたのだが、2022年10月25日、大手町日経ホールで大西順子と再会した。 そして、この日は大西順子のピアノ・ソロである。

髪をアップにし、黒いシンプルな衣装で登場した彼女がオープニングで演奏したのは、ジェリ・アレンの“Mamma's Babies“。ジェリ・アレンは、2017年に60歳の若さで死去した、女性ピアニスト。大西はインタビューで、最初にアレンの演奏を聴いた時には、<ジェリが弾いているのか全然わからなくて>、それでも<なにか心に残るというか、やみつきになるというか。なんか「弾きたい」と思ってしまう魅力があって>と語っている。結局、この日に大西はアレンの曲を4曲披露した。どの曲も初めて聴いたが、確かに複雑な構造であり、大西の言葉を借りると“攻めた“印象があるが、その複雑な音楽性を初めて聴いて楽しんだ。

プログラムは、こうした曲とスタンダードを上手くミックスしたものとなっていた。スタンダードのメドレーを演奏した後、ラグタイム調で即興性のある“Tiger Rag"を演奏した。これぞ、ジャズのソロ・ピアノという感じだが、曲間にはアート・テイタムの演奏する“Tiger Rag"にも言及した。大西言うところの、<本当に唯一無二の天才ってこの人しかいないなっていうぐらい>のピアニストである。

セロニアス・モンクのメドレー、“スターダスト“、デューク・エリントンのメドレーなどを演奏し、アンコールの“What a Wonderful World“で締めくくった。

ピアノ・ソロとなると、インプロビゼーションと、作曲家/編曲家的な側面の両方、そしてそれらを具現化する演奏力が求められる。この夜は、大西の作家性、ジャズ・ミュージシャンというよりピアニストであることを感じさせるようなコンサートだったように感じる。そして、それは彼女のピアノを堪能できるステージであった。

そう言えば、彼女はピアノ・ソロのアルバム出してたっけ。なかったような気がする。確認してみますが、もっと出して下さい



セットリスト(日経ホールのサイト情報から加工)

ジェリ・アレン “Mamma's Babies“
メドレー “Autumn in New York“〜“I Gotta Right to Sing the Blues“〜“Ill Wind“
“Tiger Rag“
モンク・メドレー “Let's Call This“〜“Bye-Ya“〜“Round Midnight“〜“Crepuscule with Nellie“
ジェリ・アレン “Home Grown“
(休憩)
ジェリ・アレン “When Kaguya Dances“
“Stardust“
ジェリ・アレン “Black Man“
エリントン・メドレー “Lush Life“〜“Single Petal of a Rose“〜“Prelude to Kiss“〜“Take The A Train“
デイブ・グルーシン “Memphis Stomp“
(アンコール)
“What a Wonderful World“



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