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“音楽の力“を目撃する〜映画「サマー・オブ・ソウル」(その2)

承前

キング牧師の暗殺を受け、全米各地で黒人の暴動が起き、ハーレムでは7時間にわたり暴徒が略奪行為を続けた。巨額の投資の結果、アポロ11号は月面に到達するが、貧しさに苦しむ人はたくさんいた。映画の中で、フェスティバルの証人が語る、「人々は怒りが爆発するのを恐れていた」、「フェスの目的はー黒人たちの暴動を防ぐためだったのかも」。

多くの人が寄り添うものを欲しており、その一つが音楽であり、その集積がこのハーレム・カルチャラル・フェスティバルだった。

この映画を見ると、ブラック・ミュージックの多様性を改めて感じる。ゴスペル、ブルース、ソウル、ジャズ、ポップス、ロック、さらにはラップの萌芽も感じられる。

そして、ブラック・ミュージックは、単に黒人の音楽というだけではなく、白人も含む様々なエスニックの融合でもある。

コーラス・グループのフィフス・ディメンションがステージに登場するが、当時のメンバー、ビリー・デイビスJr.は語っている。「当時ポップグループは黒人の音楽をやらずー黒人グループはポップスをやらなかった」、ポップスをやったフィフス・ディメンションは異色だったのだ。

そのせいで、フィフス・ディメンションは“黒人らしくない”、”白人の音楽をやる黒人グループ”と攻撃されることもあったという。

彼らのヒット曲の一つは“アクエリアス〜レット・ザ・サンシャイン・イン”だが、この曲のエピソードが語られていた。

ビリー・デイビスJr.はニューヨークでの公演中、タクシー車内に財布を置き忘れる。次に乗った乗客が財布を拾い、彼のホテルに連絡し、財布を届ける。ビリーはお礼を渡そうとするが、その男性が固辞するので、ビリーは男性をショーに招待する。

フィフス・ディメンションのショーに来た男性は楽屋を訪ね、「今度は私のショーに来てくれ」とオファーする。ビリーが、「ショー?何のこと?」と尋ねると、その男性は当時ブロードウェイで大評判のミュージカル「ヘアー」のプロデューサーだったのだ。

「ヘアー」を観に行ったフィフス・ディメンションは、劇中歌“アクエリアス”に感動し、これをぜひ歌いたいとプロデューサーに談判、もう一つの劇中歌“レット・ザ・サンシャイン・イン”とのメドレーにするアイデアを出し、レコード化する許可を得る。

こうしてヒットとなった、”アクエリアス〜”を彼らはハーレムのステージで歌う。“白人の音楽”である。それでも、観衆は受け入れ、子供がステージで楽しそうに踊る。

音楽は壁を超える力があること、女性メンバーのマリリン・マックーが語る通り、“音と肌の色は関係ない(How do you color a sound?)”を示す、印象的なシーンである。

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*映画の画像ではありませんが、「アクエリアス〜」です


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