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映画『奈緒子』〜尖って無邪気。笑いつつ泣く目。by 古厩監督

ドリパスで、映画『奈緒子』を見た。

2008年2月公開。
今まで、自宅で動画配信で3回ほど既に鑑賞済みではあったが、大スクリーンで見ると、心の奥底にまでじーんと沁み渡ってくる。
敢えて大きな声で言わせていただく。どう見たって、これ、春馬くん演じる雄介が主役じゃない?!

あらすじ

映画『ロボコン』の古厩智之監督がメガホンを取り、伝説の駅伝コミックを映画化した青春映画。辛い過去を持つ因縁の2人が再会し、高校駅伝代表を目指して猛練習に励むひと夏の様子を描く。心に傷を負ったヒロインに挑むのは、映画『出口のない海』などで着実に女優として成長を続ける上野樹里。共演の映画『恋空』の三浦春馬とともに、ストイックな演技を見せる。ただひたすら“走る”ことによって、悩みや苦しみを乗り越えていく彼らの姿が感動的。

ぜんそくの療養のため、長崎県波切島を訪れた12歳の奈緒子(藤本七海)は、風のように走り続ける10歳の少年雄介(境大輝)を舟の上から見つめていた。その後、奈緒子は海に落ち、彼女を救った雄介の父が亡くなってしまう。それから6年の歳月が過ぎ、奈緒子(上野樹里)は陸上大会で天才ランナーに成長した雄介(三浦春馬)と偶然再会する。

           〜シネマトゥデイ

春馬くんがいなくなった日の翌日、古厩監督が、この雄介役を探しててついに春馬くんを見つけた時のことを呟いていた。その存在だけで古厩監督を泣かせた春馬くん。

尖って無邪気。笑いつつ泣く目。

この頃の春馬くんを的確に表現されている、さすが古厩監督。
無邪気で可愛い笑顔を見せたかと思えば、時々尖った表情。そして、瞳の奥にはそこはかとない愁いを湛えている。これこそ、春馬くんから目が離せなくなる所以だと思う。

この映画の中の春馬くんは、こんがりと日に焼けた肌、肩や脚に適度についた筋肉、アスリートらしい強い光を放つ瞳で、健康的で精悍な美しさこの上ない。

船着き場で、東京からやってくる上野樹里さん演じる奈緒子を待っていて、奈緒子に見つけられると表情だけで誘導して合宿所へ連れていく。合宿所でごみ捨てしている奈緒子を遠くから見つめていて「学校行くって」と声をかける。監督の理解できないきつい練習に反抗して港に走っていたら、奈緒子が追ってきて一緒に走る。港に「着いた」って笑顔でこっちを見る。多くを語らないんだけど、あの視線。んもう、絶対好きになるでしょ、これ!またしても、アラフィフなのに気分は高校生にタイムスリップし、またしても春馬くんに恋をする。

それにしても、春馬くん、走る走る!古厩監督も「走りに走る撮影」と言っている。
いつも白く美しい春馬くんの肌が、この映画では赤く小麦粉色。もうどんだけ炎天下の中走り込んだんだろう、と思い知らされる。

ちなみに、ライバル走者黒田役は綾野剛さん。綾野さんは、中高と正真正銘の陸上選手だったとのこと、走るフォームも安定的で綺麗で余裕さえある。年齢にして春馬くんより8歳も上なのね。この時25歳くらいか。一説によると男性の肉体的なピークは25歳らしいが、その綾野さんと対等に走り合うなど弱冠17歳の春馬くんには、この役相当過酷だったろう。

仲間たちとの軋轢と葛藤を克服する過程

春馬くん演じる雄介は、日本海の疾風と呼ばれる伝説のランナーだった父の血を引く天才ランナー。波切島高校に入学した時点で、すでに世間が注目するスター選手であった雄介に対して、仲間たちは妬みの気持ちを禁じ得ない。ついには、仲間から「俺らは雄介を盛り立てるための駒か?」(セリフはうる覚え)とまで言われてしまう。

映画の中の雄介は、鶴瓶さん演じる西浦監督が癌に冒され余命幾ばくもないことを知っているから、なんとしても監督に優勝を贈りたい。その想いから、黙々と誰よりも練習する。他の仲間達が、ダレていようがサボっていようが、雄介はただひたすら練習する。類稀なる才能を持ち合わせていながらも、驕らず慢心することなく、常に誰よりも努力する雄介。その姿から徐々に周りの仲間達もなにかを感じ取っていく。

最後の駅伝のシーン。

柄本時生さん演じる奥田先輩が、走る前に雄介に言う。(セリフはうる覚え)
「俺はお前が嫌いだ。わかってる、お前が才能だけじゃなく、いい奴だって。俺は、そんなお前に嫉妬している自分が一番嫌いだ」本当はみんな、雄介を妬む自分が一番嫌いなのだ。自分を嫌いなうちは強くはなれない。みんなそれに気づいてきている。

本番、無我夢中で走っていく中で、仲間達が嫉妬にまみれていた己を克服する瞬間。雄介への信頼とリスペクトを取り戻す瞬間。半泣きになりながら、「雄介にっ!たすきを渡せっ!」と次々にたすきを繋いでいく。若者たちの成長ぶりに胸を打つ。

結局、最後の最後で雄介はライバルの黒田を抜き、見事チームを優勝に導く。ゴールで涙する西浦監督と抱き合いながら、そばで静かに喜びにむせび泣く奈緒子に手で「来いよ」と合図し、三人で熱い抱擁をする。誰よりも自分に寄り添ってくれた奈緒子に最大限の感謝を伝えた瞬間。幼少期の父親の死をめぐるわだかまりから解放された瞬間。恋心が通じ合った瞬間でもあったのかな。

雄介に真のリーダーの姿を見る

映画の途中で、私はふと『Kinky Boots Haruma Miura Tribute movie』でのブロードウェイスタッフの言葉を思い出した。

編曲家のスティーブン・オレマス氏の<彼は素晴らしいリーダーとしてカンパニーを率いてくれました。彼は参加した他の俳優たち全員に対して非常に高いハードルを設けました。>という言葉。

また、アソシエイトディレクターのD.B. ボンズ氏の<彼は舞台で真のリーダーでした。誰もが尊敬し、敬服の念をもっていたと思います>
という言葉。

彼らの言う春馬くんの真のリーダとしての姿が、この映画の雄介の姿と重なったのだ。

実際の春馬くんも、早くから頭角を表し同世代の俳優の中でも一つ頭抜きん出ていたと言っていいだろう。雄介のように嫉妬されたりひがまれたりすることも少なからずあったと思う。

春馬くんがいなくなった後、同じ事務所で同い年の水田航生さんが愛とリスペクトをもってブログに書いていたことを思い出す。

いつも俺の何歩も先を歩いてて悔しかった。
でも俺の事よく誘ってくれて飲んだりすると
本音でお互い色々喋って、
俺なんかの考えに感銘受けてくれて
航生の言葉に救われたとか言ってくれた時もあった

誰にでも分け隔てなく、リスペクトをもって学ぶ姿勢を常にみせてくれました。
そして、その答えをしっかりパフォーマンスで魅せてくれました。

何年か前、彼がとある舞台の準備中、
珍しく弱音を吐いて、
一緒に温泉行って色々話した事がありました。

初めてアイツの舞台の本番を少し心配な気持ちもあって観に行ったんですけど、勿論最高のパフォーマンスでした。想像を遥かに超えた。

楽屋でお前ふざけんなよ!!!最高やんけ!て嬉しさと、なんかやっぱり悔しさとがありながら言いました。
それと同時にあの温泉の日から初日までの期間を想像すると、、並大抵な事じゃない。
この人の努力の量は俺なんかが想像出来る範疇を超えてる。と。

しかしその裏での努力をあまり人に感じさせない姿を常に魅せてた。
俺はそれがカッコよくて、プロフェッショナルで、
そうなりたいって心から思えた。
〜水田航生 オフィシャルブログ

誰しもが、何歩も先を行く春馬くんに対して嫉妬心を持っていただろう。でも、類稀なる素質と才能を持ち合わせながらも、驕らず慢心することなく、常に誰よりも努力し新しいことに頭から飛び込んで挑戦していく春馬くんは、「こうしなよ。こうすべきだよ。」という言葉よりも何よりも、自分の背中をもってみんなを引っ張っていく真のリーダーだったんだ。水田さんのように、そんな春馬くんにリスペクトを抱く人たちもたくさんいただろう。

また、この雄介、気配りと心の優しさも春馬くんと重なるのだ。

大会で転んでしまった奥田先輩が、自分のやり場のないふがいなさからふてくされている。そこに、雄介がやってきて、黙って奥田先輩の頬に冷たいペットボトルを当て無言で慰めるところ、とか。

いつもみんなから後れを取ってしまう1年生の吉崎(タモト清嵐)が、本番第一区間でいい走りをして次のランナーへ襷を渡し倒れこんだ時、真っ先に「いい走りだったよ!」とタオルをかけて声をかけてあげるところ、とか。

最近、春馬くんの共演者の方々から漏れ聞こえてくる「ポツンと寂しそうにしている人がいると、声をかける」春馬くんや、「演技でいいところがあると必ず言葉にして褒めてくれる」春馬くんに重なる。

慈悲と尊敬の気持ちを持ち、誰よりも努力する姿を見せることでみんなを引っ張っていく真のリーダー。この頃の素の春馬くんは、まだそこまでいっていなかったかもしれないけど、この映画でその片鱗を見たような気がして、胸と目頭が熱くなった。

春馬愛はさらに深く深く

この映画、自宅で3回ほど見たときには、よくあるスポ根ものね、くらいの気持ちで見ていた。この映画公開の数か月前に『恋空』ブレイクがあったとのことだが、ヒロと雄介の違いにいつもながら驚いてはいたけれども。

それに、鶴瓶さん、九州男児なのに関西弁だし~、癌なのに健康的に丸々してるし~、なんて笑って見ていた。

それが、今回大スクリーンで見ることによって、今回述べたような新たな気づきが私のところにやってきて、春馬愛はさらに深く深くなっていく。

春馬くんの作品の中でもあまり注目されていないこの映画だったが、これまで以上にこの映画を好きになった。

また、いつかドリパスに見に行こう。




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