5月の新入荷

入荷

ナナロク社からは池松舞『野球短歌 さっきまでセ界が全滅したことを私はぜんぜん知らなかった』など。2022年、阪神タイガースの連敗をきっかけに生まれた歌集です。書肆侃侃房からは松波太郎『そこまでして覚えるようなコトバだっただろうか?』など。日本語の音声体系など、言葉自体に着目した不思議な作品です。「100均商品だけで食品サンプルを作ってみた」でお馴染みのクレハフーズからは2023年カレンダーが届きました。食品サンプルと一昔前のデザインがマッチしています。さりげなくからは仲西森奈『そのときどきで思い思いにアンカーを打つ。』が再入荷。発売からしばらく経ちますが、ロングセラーになりつつあります。本の雑誌社からは本の雑誌編集部 編『本屋、ひらく』が入荷しています。22の本屋のそれぞれの話が収録されています。私深澤元と、本屋の企画者で今はmibunkaオーナーの吉田尚平も寄稿しております。たくさん仕入れました!作品社からは日本翻訳大賞を受賞した大作、アンドレイ・プラトーノフ作、工藤順・石井優貴訳『チェヴェングール』や「台湾ブックカフェ」シリーズなどが入荷。浅沼シオリ・早乙女ぐりこ・武塙麻衣子「三酒三様」はそれぞれの自主制作作品も入荷しています。ちょっとした酒フェアが出来上がっています。キャロットケーキプレスからは小説家のかとうひろみさん、イラストレーターでグラフィックデザイナーの佐々木未来さんの小説とイラストが交叉する「タソガレ」が入荷。このレーベルでの第一弾となります。当店でもお馴染みとなりつつある翻訳編吟も12号が入荷。他では読めない翻訳作品が目白押し。しかも格安です。短歌研究社からは伊藤紺『肌に流れる透明な気持ち』『満ちる腕』のサイン本が再入荷。しばらく店頭に出したのち、ネットでも販売します。

近況

 今日こそ文章を書くぞ、Twitterをやめた理由とか、2周年にふさわしい宣言とか……。そう思って家に帰る道の最後のセブンイレブンに立ち寄り、エナジードリンクとおにぎりとカリカリ梅と苺のチョコを買った。おにぎりはクーポンで30円引きだった。店員さんは洗い物の手を止めてレジを打ってくれたが、私が支払いをする段になって何処かへ行ってしまうものだから、誰もいない虚空に向かってありがとうございましたと申し出て商品をひとつかみにして店を出た。Uber Eatsのバッグで来ていたから放り込むだけで済んだ。
 
いつも通り書きあぐねているので、保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』を手に取ってみた。小説に入門するつもりはなかったが、書きあぐねていることには違いない。
 
でも案外、いま抱えている問題は小説を書こうとするという遠回りにも見える道を経由することで少しはときほぐれるのかも知れない。なぜなら本屋をどうするか、というよりは、私の言いたいことはなんなのか、ということが問題だからである。多分。言いたいことが素直に出てきて、それが多分奇妙な形を取っている、そんな期待を私はしている。期待しすぎて行動をするのをやめてしまっている。だからTwitterをやめてみて、自分勝手に行動せざるを得ない状況を作り上げている。作品を素直に紹介するのは性に合わないというか、そんな立場でもない気がしている。私は私なりの立場から、仕入れた作品に対して応答をしたい。その応答のバリエーションとして、棚に並べたり、SNSでコメントを書いたり、売り買いしたりということがあるはずだ。どれかがどれかを従えている関係ではなく、並置してみたい。
 
だけれど一般にそれらは等価ではないとされているはずだ。等価なのであれば、本屋は商品が売れなくてもいいねの数が稼げれば良いとか、棚にたくさん本が並んでいれば売れなくて良い、とかおかしな事態になってしまう。金に結びつく売り買いが最終的になくてはダメで、それに他のものが従属してしまう。Twitterで商品を紹介するのにいつも違和感があったのはそのせいかも知れない。稼ぐことは悪いことではないし、むしろ金が欲しいのだけれど、なんというか、自分で書いてみる投稿はあまり魅力的ではなくなってしまうのだった。むしろ出かけた先で思い出した本の話とか、見た風景とかの方が、よほどTwitterらしくて楽しかった。かといって店のアカウントなので仕入れ先からは宣伝を期待されてるだろうし、宣伝すれば売れるのはわかっているのだが、そうまでして上手くやっていきたいかというと、そうでもない。店先で雑談程度に紹介するくらいがちょうど良い。その差はなんだろう?

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