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6月の新入荷

入荷

6月の新入荷をまとめます。きくち「タイヤル族、幸福の帽子紀行」が再入荷。日本語とのクレオールを話すタイヤル族に会いに行った記録。ブログ「今夜はいやほい」の人気記事が、書き下ろしを加えてZINEになりました。旅の目的というものは、往々にしてひっくり返されるもの。振り回され上手な二人の珍道中です。ヒロイヨミ社からは「fumbling」が届きました。fumble、すなわち、さがしまわる、くちごもる、うまくあつかえない、へまをやる、しくじる。奇妙な本のつくりと、レイアウトにそぐわない可笑しな文章が興味を惹かれます。「ビバ!オルタナティブはちのへ」もカメラマン・奥川純一の自主制作。語り方によって街の風景の変容を試みているのでしょうか、裏口から八戸に入るような本です。「味のない水が美味しい」は作家の輪湖とイラストレーターのうめはらももによる共作。短歌、イラスト、エッセイで構成されています。個人的には『パラレル百景』を想起しますが、色のない灰色の仄暗さはこの本独自でしょうか。本の雑誌社からは私たちも寄稿した「本屋、ひらく」の再入荷に合わせ、牧野伊三夫『アトリエ雑記』も入荷。開いてみたら先日訪れたばかりの玉川上水が出てきてびっくり。太田出版との取引も始まりました。『定本 レッド 1969-1972』は全4巻。あさま山荘事件から昨年2022年で五十年でしたが、このタイミングでの新装版は入手しやすくなり大変ありがたいです(絶版で高騰していたので……)。今年も出ました「徳島文學」。徳島文学協会発行の地方文芸誌ですが、要注目です。芥川賞作家やプロの文学者が参加している、という地方文芸誌にない特色ももちろんなのですが、盛り上がりを見せている「阿波しらさぎ文学賞」の存在も大きいでしょう。私も応募しようかしら。テテクイカからは河村悟『純粋思考物体』が入荷。1989年に書き終えられ、長らく書籍化が望まれてきた作品ですが、刊行は昨年2022年。作家・佐藤究による刊行プロジェクトにより出版が実現しました。造本・組版はアトリエ空中線。純粋な白の表紙に透明箔押し、コデックス製本に透明フィルムカバー、シルク印刷。本、というにはあまりに冷たく硬質な印象です。造本については先日グラフィック社から出版された『造本設計のプロセスからたどる 小出版レーベルのブックデザインコレクション』に詳しいので、合わせて読むことをお勧めします(などと言っておきながら弊店ではまだご用意がございません。来月仕入れます……)。青弓社からは待望のブックオフ論が入荷。谷頭和希『ブックオフから考える』。とある本を探しに来たはずが、いつの間にか別の本を買っている。ブックオフに対する賛否・論争は多々あり、その歴史にも著作中で扱っていますが、著者はブックオフのことを「文化のインフラ」として肯定的に語っています。他には『応援の人類史』や『アイドルについて葛藤しながら考えてみた』なども青弓社から。メディアや社会現象について考えたいと思った時に頼りになる出版社ですね。

今月は古本の買取も多く、それに合わせて古本の棚を増設しました。『岡井隆全歌集』四巻揃や『近藤芳美集』十巻揃などの歌集や、『鉄腕アトム』『どろろ』など手塚治虫も入荷してます。全巻揃っていると売りやすい反面、場所を取るのでなんとかしなければ。

6月後半から7月にかけて入ってくる予定の本も紹介しておきます。「後藤明生生原稿レプリカ」、批評×旅行誌『LOCUST』、武塙麻衣子『酒場の君』は再入荷。『代わりに読む人1 創刊号』はなんと私深澤も寄稿しております(買ってね)。

近況

この間、チェンソーの扱い方を教わりました。のこぎりみたく押し引きするのではなく、刃を押し付ける角度を変えながら切るようです。どうしてそんなことになっているかといえば、本屋が入居しているmibunkaに同じく入居している「地域生活応援団」(地域の困りごとを解決する有償ボランティア団体)の仕事を教わっているからです。今のところ私は草むしりや剪定された枝を拾って束ねることくらいしかできませんが、応援団の皆さんはこの地域で十年活動されていますからね…今後も色々教わることがありそうです。

mibunkaに移転してから初めての「読んでいない本について堂々と語る読書会」を開催しました。今回も「読まずに人に貸した本」や「直接サインをもらったのに読めない本」などバリエーションに富んだ未読本が集まりました。同時開催した「読んでいない本を堂々と読む会」は、mibunkaの二階を読書がしやすいように整え、2時間じっくり黙々と読んでいただきました。初の試みでしたが、「読んでいる人が周りにいる」というのはなかなか良さそうです。7月は8日(土)に予定しています。ぜひご参加ください。

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