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Web3時代のAI戦略 社会課題解決を成長ビジネスに変える正のスパイラル

ChatGPT、生成AIの登場によって、指数関数的な技術的進化が続き、遠くない未来に、世界が、社会が、どのようにステージを変えていくのか、に改めて興味関心を持っている中で、出会った本書。



たとえば、AIによるディープフェイクが多産される未来においては、もう人間の知覚では、その映像、画像などのコンテンツが、本物の人間によるものかどうかはは判別できないだろうと確信している。

そのような世界を目前にして、ただただ未来を憂いているよりも、テクノロジーと共に、どう共創していけるか、共進化していけるか、日々問い続けている中で、数多のAI読本の中でも、今の自分にとっては、非常に共感できる内容が山盛りでございました。

本書を読むことで、AIのぐるぐるモデルによる指数関数的な成長や、社会課題解決に必要なBASICSフレームワークやMLOpsなど、AIを活用した社会課題解決に取り組む上での重要なポイントを学ぶことができ、また、日本企業のAI導入の遅れや問題点も明確になり、AIを活用した社会課題解決に取り組む上での課題や問題解決のためのヒントを得ることができました。


””答えを探るべく我々は、Web3さらには、国内外でのAIやDXを活用した社会課題解決の事例をサーベイした。浮かび上がってきたのが、5つの要素を組み合わせた社会課題解決のフレームワークである「BASICs」である。  BASICsは、Behavioral change(行動変容)、Accountability(効果の可視化)、Scale & Continuous improvement(規模の追求と継続的改良)、Income with profit(持続できる経済性)、Cultivate data value(データ価値の創出)の頭文字を取ったものである。いずれもAIを使った社会課題解決に不可欠の要素だ。最後の「s」はBASICの活用によって、カスタマーサクセス(Customer Suucess)を実現させていきたい、そして最終的に社会の成功(Society Success)に結び付けたいという思いを込めたものだ。  行動変容を最初に持ってきたのは、意思の力が何よりも重要だと考えるからだ。現在のAIは一度利用が始まると、あとは自分で勝手にどんどん賢くなっていく。そこに人間の持つ倫理や道徳、良心が反映される余地は少ない。「社会課題を解決するためにAIを使うのだ」という強い意思がなければ、気がつかないうちにAIに使われる側に回ってしまいかね~””

AIやWeb3を学びながら感じるのは、それらに対する人間が持つリテラシー格差の大きさ。

興味が無いわけではないけれど、苦手意識が高く触ることすらしない人、なんとかキャッチアップしようと実際にAI的なもの(たとえばChatGPT)に触れてみたけど有用性を感じられずに拒否感を持ったままの人、そもそも人類とは、そういう(変化を恐れる)存在なわけで、革命的技術を前にして、何度も試行錯誤して、あれこれ使い続けるタイプの人は、世の中のマイノリティであるよなあ、ということ。

だからこそ、本書が示しているような、共通言語にしやすそうなフレームワークを創って、リテラシーが低い人にでも理解しやすい、使いやすいように、敷居を低くしていくというのは、とても大事なことかもしれない、と最近思うようになった。


””戦い方は大量生産から「AIファクトリー」に  より重要なのは、AIのぐるぐるモデルは、グーグルのようなビッグテックやAI企業だけが活用できるものではないということだ。言い方を変えれば、成長し続けたいならAIのぐるぐるモデルを活用する企業になるしかない。~AIファクトリーの好循環を実現するには、意思決定のレベルにまでAIが入ることが重要だ。逆に言うと、AIファクトリーの好循環のループには人間を入れてはならない。  人間の意思決定に時間を取られることなく、好循環の無限ループが高速でぐるぐると回転し続ける。これに成功した企業は、グーグルやアマゾンのように従来型の企業を圧倒する。AIファクトリーの好循環を実現している企業を「AI駆動型企業」と呼ぼう。AI駆動型企業はAIによるDXを実現した存在に~””

「AIのぐるぐるモデル」は、過去に拝読していた「ダブルハーベスト」にて把握していたモデルとほぼ同義と理解している。


””AIに意思決定を任せる場合、重要なのは現場のオペレーションをできる限り自動化することだ。自動化されたシステムは正確な数字、デジタルデータをはじき出す。自動化が進むほど、データのサイロが破壊され全社からデータが集まり始めるため、AIの判断はより迅速で的を射たものになる。この過程で、各種の決定に伴う担当者の勘や属人的な判断のかたよりがなくせる。  正確な計画は業績にプラスの影響を与える。製造業であれば、各部門からの正確な数字を集計しAIが判断を下したサプライチェーン計画などが典型だろう。これだけではない。自動化は単独で、人件費削減などを通じて業績にプラスの影響を与える。  自動化とAIによる意思決定の効果は足し算ではない。掛け算だ。掛け算がAI駆動型企業の高い成長、そして課題解決を可能にする。  掛け算の効果を生み出すには、あらゆる業務をデジタル化し、データを管理し、AIの判断で業務フローを自由自在に組み換えることができる柔軟な組織形態も前提と~””

これはもう、言い訳めいた話にもなってしまうのですが、なかなかどうして、複数部門、複数事業部が存在していると、手を付けにくいというか。はたまた、十分な母集団データがない中(集めにくそうな環境の中)で、今このタイミングで、オペレーションの自動化に、どこまで投資できるのか、というようなことを考えながら、なかなか、大鉈を振るい切れていない現実を抱えていたわけです。

しかしながら、この文章を書き始めている今は、運や縁も重なって、素晴らしい人財が、仲間がジョインしてくれたおかげも手伝って、社内の重要な領域から、オペレーション自動化(仕組み化)の準備が始まりつつあります。


””Web3の時代には現在よりも圧倒的に多くの情報がデジタル化される。DAOやNFT、SBTはもちろん、メタバースでのやり取りはすべてがデジタルデータである。Web3の領域が広がるほどAIの精度を上げるデータが増える。NFTやSBTが一般化すれば、AIの分析対象になる構造化データだけでなく画像などの非構造化データも入手しやすくなる。””

これは冒頭で記載したように、生成AIがリアルとディープの境目を今まで以上に不透明にさせてしまう未来が、ほぼ確定しているわけで、今まで以上に、圧倒的にブロックチェーン技術の必要性が増し、それぞれ専門性を持った主体者(共同体)たちが、多様なデータを保有し、活かしているような、まさにWeb3な世界が眼前に迫っていると思って間違いないと確信しています。

””アマゾンはAI駆動型企業を代表する1社だが、創業者であるジェフ・ベゾス氏が2002年ころ、社内のエンジニアに通達した「Bezos API Mandate」と言われる文章がある。この中でベゾス氏は、すべてのデータをインターフェース経由で公開しなければならない、例外は認めない、インターフェースは世界のエンジニアに公開する、守らない人間は誰でも解雇する、といったことを通知している。最後が「ではよい1日を」で終わるのは彼なりのジョークかもしれないが、この姿勢がアマゾンのAI利用を支えているのは想像に難く~””

いやはやコミットメントのレベルが違いますね。決断というものにレベルをつけるならば、まさに100点満点の意思決定、意志決定とは、こういうものだなあという学びになりますた。

””BASICsフレームワークについて理解していただいた読者の方はすでに気づいているだろう。Web3と非常に相性がいいのだ。  まずB(Behavioral change)については、ブロックチェーンのトークンなどによる報酬で行動変容を起こすことができる。当事者として動くことで、社会課題の解決も加速する。  効果の可視化であるBASICsの2番目のA(Accountability)は、ブロックチェーン上で情報がオープンに監視可能な点がまさに当てはまる。情報も分散管理されている。  そして、規模の追求と継続的改良のS(Scale & Continuous improvement)については、インターネットを利用して世界中から貢献者を集めることができる点が該当する。  持続できる経済性も重要だ。BASICsの4番目のI(Income with profit)はWeb3においては、Bと同様にトークンなどによる報酬を得て、組織やプロジェクトを低コストで運用できるという側面がある。  最後のC(Cultivate data value)はデータ価値の創出である。Web3ではインターネットを介して、さまざまな個人や団体が保有するデータの権利を守りながら組み合わせ、新たな価値を生み出すことが可能となっている。””

””オナーの成功の最大の理由は、全米の独立系の在宅介護事業者が持つ介護士と利用家族に関するデータを一手に集めることを目指し、実際に持っていることだ。AIのぐるぐるモデルが働くので、オナーが持つ人材マッチングの精度を競合他社が超えるのは、時間がたてばたつほど困難になる。  データを入手するためにオナーは、在宅介護事業者が不得意とするデジタル領域を提供するという手段を取った。ここがオナーのAI戦略の優れたところだ。  オナーは介護サービスの会社であるが、多くのエンジニアを擁する。データサイエンティスト、機械学習エンジニア、アプリケーションエンジニア、UXエンジニアなどが在籍し、募集もしている。エンジニアと介護制度のプロフェッショナル、市場やパートナー開発の担当者が連携してサービスを構築し、オペレーションを行っている。  多くの在宅介護事業者は、自分達の強みが丁寧なケアにあると考えていて、介護者の予定管理などの事務作業はできれば誰かに任せたいところである。この困りごとをオナーが解決してくれるというので、在宅介護事業者は自ら同社のプラットフォームを利用しようとする。  在宅介護事業者が気づいていないのは、 21 世紀のビジネスモデルが画一的な大量生産型から、AIのぐるぐるモデルによるパーソナライズに変わったということだ。  多くの在宅介護事業者はAIプラットフォームへの投資など考えもせず、雑務をオナーに任せただけだと思っているかもしれない。しかし実は任せたはずの雑務の処理が介護業界で新たなビジネスを生み出すエンジンになって~””

””オナーは、今後も成長を続け、消費者向けインターネットにおけるグーグルのように、在宅介護事業者に高い影響力を持つ可能性がある。2021年には個人向け在宅ケア大手の米ホームインステッドを買収した。同社では米国を含む 14 カ国にある1200拠点で、9万人の介護士がサービス提供に従事していた。  「自分の持っているデータでAIをどう活用するのか」ではなく、「AIを活用するためにどうやってデータを集めるのか」。  AIをスケールアップさせるためには、会社の枠を越え、業界の枠を越える必要がある。まさにBASICsフレームワークのS(規模の拡大の可能性)である。スモールビギニングの戦略ではなく、最初から大きな絵を描くことが~””

””データが日々蓄積されていくので、各スタッフのさらなる効率化、介護施設や運営法人全体の最適化などにも道が開かれる。スケールし、継続的に改善できるようになる(同S)。  このサイクルが回ることで、1人のスタッフでより多くの入居者を担当できることになり、施設、ひいてはスタッフの適切な収入に結びつく(同I)。ふるまいを変えるBについても、入力時間がなくなることで、その分スタッフと利用者のコミュニケーションが増加し、質が向上することも見込まれる。つまりBASICsフレームワークをフルに活用していると~””

もう未来の話ではなく、AIのぐるぐるモデルを駆使して成長している会社が現存している。

そして、、、

””AIを成長させないと競争に負ける  AIネゴシエーションサービスを導入すれば状況は一変する。判断の速さがAIの武器だ。社会情勢などに合わせて取引条件を最新に更新できる。しかも一方的に納入価格を値下げしようとするのではなく、取引先が重視する条件を考慮しながら交渉できる。  場合によっては価格を上げたうえで、他の条件で譲歩してバランスをとる。中小の取引先から、人間よりも自社のことを理解してくれていると評価する声も出ているという。  AIネゴシエーションサービスによって、小規模な企業を含め取引先が望む条件がデータとして蓄積される。データが蓄積されればよりウォルマートにとっても取引先にとっても納得できる条件が設定できる。こうなればウォルマートとの取引拡大を望む企業が増える。AIネゴシエーションサービスは、まさにサプライチェーンのぐるぐるモデルと言える。これらはBASICsフレームワークのSのスケールと継続的改善の両方を実現しているもの~””

””こういった組織体制で、深化だけでなく探索に取り組むのは簡単ではない。HR軸で管理型組織を自律型に変革する際のカギとなるのが、ストラクチャー、スタイル、スタッフの3つのSだ。  組織構造を意味するストラクチャーから説明する。見直す対象は組織のガバナンス、アカウンタビリティー、意思決定の3点になる。具体的には組織を、クロスファンクショナルなチーム型の基本構造に変え、同時に権限移譲を進める。現場での指示待ちが減り、各チームが自発的に意思決定することで判断が迅速化する。DXに強い企業は得てして外部企業とのコラボレーションがうまい。外部の企業は「業者」ではなくともに協力する「パートナー」と考える。AIさらにはWeb3など最新の技術を取り入れて変革を進めるなら、技術に強いスタートアップとの関係が重要になる。業者扱いでスタートアップとの良好な関係は築け~””

AIを活かせないと、AIを成長させないと、AIと共創できないと、競争に勝てなくなる世界線に、僕たちは今、晒されようとしている、という厳しい現実に直視させてもらえた本書に感謝であります。さあ、1歩ずつ、言い訳をなくして、仮説検証を繰り返そう。

<目次>

はじめに

第1部 Web3とAI
第1章 急速に高まるWeb3への関心、本質は価値観の変化
第2章 Web3時代に必須なAIのぐるぐるモデルとデータの価値化
第3章 Web3時代のAI・DX戦略
第4章 重なり合う公共とビジネスの課題解決
第5章 社会課題解決フレームワーク「BASICs」

第2部 AIが10の社会課題を解決
第6章 世界が直面する10の社会課題とは
第7章 心身とも健康を保ち続ける
 1)超高齢化社会に対応する
 2)高度医療、パンデミックに立ち向かう
 3)ウェルビーイングに過ごす
 4)ワークスタイルの変化に対応する
第8章 環境変化に対応し持続する
 5)気候変動に対応する
 6)脱炭素、省資源に挑む
 7)食料危機を回避する
第9章 地域やビジネスを強くする
 8)サプライチェーンを守り、ビジネスを継続させる
 9)地方や中小企業を維持、発展させる
 10)持続可能な生産・製造を実現する

第3部 Web3時代のAI戦略を成功に導く組織・スキル・マインドセット
第10章 「体」自律的な組織でAIファクトリーに変貌
第11章 「技」デジタルとイノベーティブの2つのスキルを獲得する
第12章 「心」前向きなマインドセットが成長につながる

おわりに

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