見出し画像

大吉(前)(1分小説)

優子は、会社のOLで今年30になる。
優子とは付き合って4年になる。
無口な性格だが、かえってその方が僕には合っているようだ。

1月末に優子と神社デートをした。
正月の三が日にも、神社に来ていたのだが、人が多くて嫌な気分だったので、出直し神社だ。
10円のお賽銭でお参りをした後、恒例のおみくじだ。

「ちぇ、また末吉かよ。人の為に尽くせば運が開ける、だって。」
「優子は、どうだった?」
「大吉です。」

「え!本当かよ。」

優子が引いたおみくじを見せてもらったら、確かに大吉だった。
(この前も、大吉だったな。いや、優子が大吉以外を引いたのを今まで見た事がない。もしかして…)

次の週、優子をデートに誘った。
僕には、ある心積もりがあった。
向かった先は、ショッピングセンターだ。
その中に、宝くじチャンスセンターがあった。
(優子の大吉パワーで当たらないかな。)

優子は宝くじを買ったことがなかった。
とりあえず、僕は優子にロト7の申し込みカードを渡して、
「数字を選ぶの面倒くさかったら、クイックピック選んで。」
と指示した。
優子は、ロトも初めてだから、カードを手にして、もじもじしていた。
僕が、
「クイックピックはここ」
と言うと、
優子は、クイックピックに棒線を引いた。
そして、一口ずつ購入した。

ロト7の抽選日は明後日になっていた。
(そう簡単には、当たらないだろうな。)
宝くじには散々な目に合ってきているだけに自覚しているが、
それでも、優子なら、もしかして!、と期待してしまう。

優子は何も言わないが、
僕が、
「当たったら、一割あげるよ。」
と言ったら、少しにっこりした。

そして、ショッピングセンター内のフードコートで、優子がリクエストした月見うどんを二人分注文して、一緒に食べて帰った。

明後日が、とても楽しみだ。気になる。

(続く……)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?