見出し画像

夢(1分小説)

9回表ツーアウト3塁、2対2の同点。
5番雄介のバッターボックスだ。
(なんとても決めたい)
「雄介、頑張れー。」
光が応援席から、しきりに檄を飛ばす。
「雄介、」「雄介、」
一体、どれだけの人が叫んでいるだろうというくらいだ。
「雄介、ガチガチだな。大丈夫か。」
光の隣で、学が呟く。

雄介は2ストライク2ボールの後、きわどいところを見逃しの三振だった。
試合は、延長11回裏のサヨナラ負けだった。

次の日、教室で、光は
「惜しかったね。」
と雄介に言った。
教室は、いつものふういんきだった。

5年後、クラスの同窓会があった時、
光は雄介に試合の話をした。
雄介もバッターボックスに入っていた時の事は、よく覚えていた。
「なんで、あの時決めれなかったんだろうって、悔しくて夜は寝れなかったよ。」
「でも、自分が特別な場所にいるみたいで、いい経験になったよ。夢は続くんだよね。」
そう言って、雄介は遠くを見ているようだった。光も雄介の視線の先を追いかけたくなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?