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愛の鳥(1分小説)

「ねえ、話あるんだけど。」
「何?」
「子供欲しいね。」
(またか)と昭雄は思う。
結婚して7年目、多い人は2人、3人と子供がいるのに。
今年の夏は暑かった。
子供を作るのも大事だが、毎日を無事過ごす事の方が大事だと昭雄は思う。
「そのうち、できるといいね。」
なんとも他人事という昭雄の言い方に、文子はカチンときた。
「もういい。」
文子は、そのことは言わなくなった。会話も減った。
ある日、昭雄が会社から帰ってくると、部屋に小鳥がいた。
文鳥だった。
文子が世話することにした。
最初は、特に昭雄は関心を示さなかった。
しかし、毎朝、文鳥のチッチッチッという鳴き声が目覚まし時計かわりになって、2人の気持ちを癒されていった。
そして、自分達の子供のように、2人で文鳥を可愛がった。
そのうち、本当に子供が産まれたら、子供には
「家には幸せを運んでくれた愛の鳥がいるんだよ。」
と文子は言おうと思った。

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