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【科学実験】バイオスフィア2 - 巨大な人口閉鎖生態系

こんにちはマスター、蓬莱です。

マスターはアクアリウムはご存知ですよね?水槽の中に水と水草と魚を入れて飼育・観察するシステムのことですが、飼育者の思うままに環境を整えられるのが魅力のようです。

では、テラリウムというのはご存知でしょうか?

テラリウムはアクアリウムの陸上版で、ガラス容器のような閉鎖された空間に土と植物と小さな生き物を入れて観察する為のシステムです。

これらはガラス容器の中で作られた小さな生態系を楽しむ為のものですが、こういったアクアリウムやテラリウムの巨大版といえる設備を整えて、外からの干渉は日光のみとして、閉じた生態系の中で人は生きていけるのかどうかを実験したことがありました。

テラリウムに人を被験体として放り込んでみるテスト(恐怖)

この巨大なテラリウムでの実験は、ゆくゆくは宇宙開発での宇宙船の中で生活する循環型環境システムとか、スペースコロニーでの生活、または地球以外の惑星にてドームの中に地球の環境を再現して住むための基礎データになると期待されたのです。

その実験施設の名前は「バイオスフィア2」

今回は巨大なテラリウムの中に人を閉じ込めて中の資源を循環させて、どう生きるかの実験「バイオスフィア2」のお話です。

バイオスフィア2

「バイオスフィア」の「バイオ」とはギリシャ語で「人の生命」を意味する「bios」、ラテン語で「生命のある」を意味する「ヴィーヴス」からの接頭詞で使われ、生命や生物的な概念をあらわします。スフィアは英語で「球」「球体」「球状のもの」を指します。

つまり「バイオスフィア」とは「生命の球」でして、地球そのものを指し、その地球の環境によく似せて作った人工の密閉空間を「バイオスフィア2」と名付けたのでした。

バイオスフィア2はアリゾナ州オラクルに巨大な密閉された生態系として建造されました。

この巨大なガラス張りの施設は7つのエリアで構成され、熱帯雨林、サンゴ礁、マングローブのある湿地、サバンナの草原、砂漠、そして人が生きていくための空間「ランドスケープ」が2つありそこでは農耕や牧畜が行われ、それらが相互に作用してひとつのおおきな生態系として作用し、外からのエネルギーは太陽光のみで、その中で農耕と牧畜の生活をすれば向こう100年は特に何も援助は必要なく生きていけるとされる設計思想を持っていました。

この閉鎖空間で研究者たちが8名で2年間滞在して生活し、2年毎に交代、研究は100年間継続して行われ、宇宙開発などの基礎データとして活用される予定で、実験は1991年から開始され、第一期は1993年の9月26日に終了。

第2期は1994年に開始され資金難で6ヶ月で中止されたそうです。

そして、最初の2年間の滞在期間をクリアした第一期は地獄を思わせるような悪夢のような日々を研究者は過ごしたのです。

この実験ではバナナ、パパイヤ、サツマイモ、ビーツ、ピーナツ、米、小麦などの作物が植えてましたが、作物の収穫量はそれほど伸びず、彼らは慢性的な飢えを経験しました。

また、施設内の酸素濃度は地上の値と同じ20パーセントから始まりましたが、酸素濃度は一定の割合で少なくなり、16ヶ月後には14.5パーセントまで低下しました。これは標高4千メートルの高山に相当し、研究者たちには睡眠時無呼吸症などの症状が出始め、遂には外部から酸素を補給する事態になりました。

酸素不足の理由は地中の微生物の酸素消費量が思った以上に多かったと研究者は考えていましたが、施設内の気圧などを調整するための調整室などで使われているコンクリートの露出部分が二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを形成しており、それが酸素不足の大きな原因のひとつにもなっていたのです。

つまり、時には酸素、時には二酸化炭素として循環するはずの酸素が、二酸化炭素になっているときにコンクリートに吸収されていて、必要な酸素も二酸化炭素も減少していたのです。

これは2期目の実験の前に露出したコンクリートを密閉することで改善がみられました。

また、酸素不足は生態系のバランスを崩し、計画と違った日照不足も問題となり、家畜が次々と絶滅していったのです。

内部に風が無いため熱帯雨林の樹木の育成も悪く、実験の初期に枯れるモノが多く出たとか、予想外の結露によって砂漠はずっと湿っていたなど、バランスの崩れた生態系で爆発的に数を増やしたのはゴキブリとアリとアサガオでした。

富士山を超える標高と同じレベルの低酸素、それによる食糧不足、家畜や花粉を媒介する生き物たちの絶滅、アリやゴキブリの大発生の中、メンバー8人は食料を確保しつつ農耕生活を維持、コーヒーを栽培し、ギリギリの中で生存を続けながら、なおかつ外部の見学者が向ける多数の視線のストレスにも耐えねばなりませんでした。

そういった環境はメンバーの精神のバランスも崩し始め、敵対し、ふたつの派閥に別れたそうです。

この悪夢の様な2年間の実験で明らかになったのは、私達の生態系が思っていたより脆弱なバランスで成り立っており、ちょっとした事で簡単にバランスが崩れることを示したとも言われています。

バイオスフィア2は今はアリゾナ大学が管理・運営しており、様々な環境の違いによって動植物に何が起こるのかをシミュレートするなど、施設の特徴を生かした研究が続けられ、見学ツアーも積極的に行われているそうですよ。

今回はアリゾナ大学のサイト「Biosphere 2」とウィキペディアの「バイオスフィア2」などの項目からお話しました。

蓬莱軒では、知的好奇心を刺激する話題を毎週動画でお届けしていますので、YouTubeチャンネルにもよかったら遊びに来てくださいねマスター。

それではまた、らいら〜い🖐

蓬莱軒【水曜20時 不思議・科学・都市伝説】
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