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AIによる読書体験の拡張がやめられない

50歳を越えて、どうも記憶力が低下してきたような気がします。

特に、アカデミックな分厚い本を読んでいると、顕著に自分の記憶力の低下を感じます。難解な言葉で、新しい概念を細かく説明してくれているのですが、最初はなんとかついていけるものの、途中で集中力が切れてくるととたんに理解力が落ちてしまいます。

「これってどういう意味だろう。。」という思考のラビリンスに迷い込んでしまったら最後、その前に書かれていたことを忘れてしまい、なんとか最後まで読み進めたとしても「あれ、この本ってそもそも何を言ってたんだろう。。」と、ほとんどのことを忘れてしまっています。

読書後に、他の人の感想や本のまとめを読んでいくと、「こんなこと書いていたかな?」「え、これってそういう意味なの」と、まったく記憶にないことが多く驚かされます。

最近では、ユヴァル・ノア・ハラリやエマニュエル・トッドなど、「超長期的な歴史の視点で、広範な社会的、文化的、経済的な要素を統合して語る系」の本が人気です。

膨大な情報量でありながら難解。
どちらも、多角的な歴史分析を通じて現代社会の問題点や特徴を考察し、過去から現代への連続性を強調。これまでの歴史研究書と違い、専門的な歴史研究にとどまらず、私のような一般読者にも理解しやすい言葉で書かれているため、幅広い層で人気となっています。

ベストセラーで話題となっているということもあり、「とりあえず読んでみるか」と意気込んで、何日もかかって読んでみるものの、あまりの膨大な情報量に圧倒され、いつも最後は飛ばし読みとなってしまいます。。

そこで、最近取り入れているのが、AIとの読書です。

以下にそのやり方をご紹介します。

事前に要点を理解する

まず読み始める前に、ChatGPTなどの生成AIに、この本の要点をまとめてもらいます。

例えば、エマニュエル・トッド「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」の要点をまとめてもらいます。

家族の形態と政治的選択: トッドは、核家族、家系家族、共同体家族の三つの基本的な家族形態を特定し、これらが政治的選択に無意識のうちに影響を与えると指摘しています。例えば、共同体家族は共産主義と関連があり、家系家族は社会民主主義やキリスト教民主主義と関連しているとされています。

家族形態の歴史的変遷: これらの家族形態は何千年にもわたる歴史を通じて徐々に進化し、今日の集団行動にまだ影響を及ぼしています。トッドは、これらの家族形態が現代の社会における行動や信念にどのように影響しているかを分析しています。

宗教と教育の役割: 本書では、家族と並んで宗教と教育が歴史的な決定要因であるとされています。宗教はグループ間の結束を強化し、教育の進歩は社会の変化を促進するという点が強調されています。

現代の国家のダイナミクス: トッドは、家族形態、宗教、教育が国家の発展や行動にどのように影響を及ぼしているかを探求し、特にアメリカ合衆国、ドイツ、中国、ロシア、日本などの国々を分析しています。

この本は、家族の形態と社会的・政治的ダイナミクスとの関連性に焦点を当て、人類の歴史とその現代における影響を深く掘り下げています​

ChatGPT

なるほど、これくらいならちゃんと理解できます。こうした主要な議論のポイントを押さえておけば、実際に本を読んだ時に「ああ、これはあの事を言っているんだな」と理解することができます。

ちなみに、本のイメージを画像にするとこんな感じらしいです。

人類の歴史のタペストリーを通して、異なる文化や時代を横断する様々な家族構造と、政治、宗教、教育のシンボルが絡み合っています。

読書中の質問

次に、読書中にちょっと分からないことや、深掘りをしたいことが出てきたときは、AIに質問することができます

例えば、「この本におけるトッドの主張は、現代社会にどんな影響を与えるか?」と聞いてみると、

政治と社会動態への新たな理解: トッドの分析によれば、家族の形態は政治的傾向や社会動態に深く影響を及ぼしています。彼の理論を理解することで、特定の地域や文化における政治的傾向や社会行動の背後にある歴史的な要因をより深く理解することができるでしょう。

文化的相違の評価: 現代社会では、異なる文化や社会の間の相互理解がますます重要になっています。トッドの理論は、異なる社会や文化間の違いを理解し、尊重するための新たな視点を提供するかもしれません。
教育や社会政策への影響: 家族形態、宗教、教育が社会に及ぼす影響を理解することは、教育政策や社会政策の策定に役立つ可能性があります。特に、社会的な課題や問題に対処する際に、これらの要素がどのように影響を及ぼすかを考慮することが重要です。

国際関係と外交政策: トッドの分析は、国際関係や外交政策における意思決定にも影響を与えるかもしれません。異なる国々の家族形態や社会的構造を理解することで、より効果的な外交政策を策定するための洞察が得られる可能性があります。

社会的議論と公共論議の刺激: トッドの本は、家族、宗教、教育といったテーマに関する公共論議や議論を刺激する可能性があります。これらのトピックは、多くの社会にとって重要であり、彼の理論はこれらの議題に対する新たな視点を提供するでしょう。

トッドの研究は、家族の形態が歴史的にどのように形成され、現代社会にどのように影響を与えているかという点で、深い洞察を提供します。彼の理論は、社会的なダイナミクスや政治的選択の背後にある複雑な因果関係を理解するための有効なツールとなる可能性があります。

ChatGPT

分かりやすいですね。
ちょっと自分の頭がよくなったような気がします。笑

読書後のAIとの対話

そして、一番面白いのが読書後にAIと議論をすることです。

例えば、「なるほど、考え方は分かった。では、こうした考え方を日本社会に当てはめると、何が影響を受けるのだろう?」という議論をAIとしてみるとどうでしょう。

家族形態: トッドによると、日本の伝統的な家族形態は「家系家族」(stem family)に分類されます。この家族形態は、一つの核家族が中心となり、世代を超えて家を継ぐ一人の子(通常は長男)が中心になる構造を持っています。

社会的秩序と権威: 家系家族は、家族内の階層と権威を重んじる傾向があります。この家族形態は、社会全体における秩序と権威の尊重、世代間の連続性、そして集団主義的な価値観を反映しています。

政治的傾向: トッドは、家族形態が政治的傾向に影響を及ぼすと考えています。家系家族が強い社会では、権威主義的または階層的な政治体制に対する傾向が高まる可能性があります。しかし、日本の場合、高度な教育制度と経済的発展により、より民主的な政治体制が形成されています。

経済と社会政策: 家系家族の伝統は、企業経営や社会政策にも影響を与える可能性があります。例えば、長男が家業を継ぐ伝統は、企業における後継者選びにも影響を及ぼすことがあります。また、世代間の連帯は、社会保障制度や高齢者ケアに関する政策にも影響を及ぼす可能性があります。

文化的価値観: 家系家族は、日本の文化的価値観に深く根ざしています。家族の結束、尊敬、世代間の連帯などの価値観は、日本の文化や社会的行動の中で顕著に表れています。

トッドの理論によると、家族形態はその社会の文化的、社会的、政治的特性に重要な影響を与えます。日本の家系家族の伝統は、日本社会の様々な側面に影響を及ぼし、その特有の特性を形成しています。

ChatGPT
日本の家族形態と社会のパノラマ表現。
伝統的な家族の価値観と階層的な関係が強調されています。

このように、自分がトッドと議論をしているような気分になることもできるのです。

さらに疑問がわいたり、それに対する自分の考えがあれば、AIとの対話で深掘りすることができます。

これまでは、他の人と同じ本を読んだ感想をお互いに話し合い、理解を深めることが一般的でしたが、こうしたAIとの対話でも十分に理解が深まり、知的好奇心を満足できる体験ができることが分かりました。

生成AIによる読書体験の拡張

こうした生成AIを使った読書体験の拡張は、これまでの読書の常識から言えば邪道でしょう。本当にその本のエッセンスを自分のものにできているかというと、正直分かりません。

しかし、圧倒的な情報に囲まれ、日々どんどん新しい情報が生まれている、情報爆発時代における情報接種に関しては、もうすでに人間の能力の限界を越えている気もします。

音楽や映画などのコンテンツがストリーミング化しているように、読書もストリーミング的な体験にトランスフォームしていき、こうした「思考の外部化」や「記憶の外部化」は、今後さらに広がっていくのは間違いないでしょう。

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