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うるう年の2/29にあった出来事

 日付が変わってまもなく、一通のLINEが届いた。滅多にならない通知音が鳴ったから、こんな時間に送ってくるなら家族だろうと思って開いてみると違った。
「久しぶり、元気してる??」
 数えてみるともう、9年も会っていなかったんだ、昔習い事をきっかけに知り合った友達だった。あまりの衝撃に眠気も吹っ飛んだ。急いで返答する。
 どうやら就職で他県に引っ越すので、その前に食事でも。ずっと会いたいと思っていたけどタイミングに迷っていて、思い切って連絡してみたとのこと。
「よかった〜〜返事きて嬉しい〜〜」
 9年間会っていなかったけど、この文面はきちんと友達の声で再生された。何とも不思議で、嬉しいことである。
 どうして連絡をしようと思ったのか聞くと、サラッと「え?なんか、2/29ってレアやから」と返ってきた。目から鱗だった。そっか、確かにレアだな。
 友人とは会う日時と場所を決め、LINEを終えた。時間を見てみるとわずか10分ほどしか経っていない。それなのに、何だろうこの満足感。9年間の空白があっという間に埋まった気がした。嬉しくて嬉しくて、その場で小躍りした。明るい歌も歌った。そうせずにはいられなかった。
 朋有り遠方より来る……。
 『論語』にそんな言葉が載っていた。確かに確かに。 
 そういえば、その子とは喧嘩別れをしたわけではなかった。ただ、私が割とリセット癖というか、人間関係のキャパが小さすぎて、新しい環境に適応するべく過去とすぐに音信不通になるタイプの人間だったから、次第に疎遠になって自然消滅したのだと(私が勝手に)思っていた。
 でも、してなかった。
 時々思い出すことはあったけど、今更連絡するのも迷惑かと思って遠慮していた。私自身が昔と変わりすぎていて、きっと相手も変わっていて、友人として再会できるか不安な部分もあった。
 でも、いざ自分が連絡をもらってみると、嬉しくてたまらなかった。もちろんお互い変化しているかもしれないけど、大人になってから再会して、また友人として関係を結び直せることを、とてもとても幸せに思う。
 連絡、取ろう。理由なんて、2/29だからでいいじゃん。
 昼過ぎに中学校で一番仲のよかった友人にLINEしてみた。文面は習い事の友人からもらったものを参考に。返事が来たのは夕方で
「本当に久しぶり!!!会おうよ!!!行ける日はこことここと〜〜」
 わーーー!返事きた!!嬉しい!!!!
 身構えていたよりも随分とあっさり、会う日まで決まった。やっぱり私は慎重になりすぎていたのかもしれない。
 私には友達が少ないと思っていた。片手で足りるんだと本気で思っていた。
 ただ、そうではないかもしれない。私からもっと手を伸ばせば、あの頃の友情は簡単に取り戻せるのかも。もっと軽やかに、色々な人を誘ってみよう。
 うるう年の2月29日。私の過去が光り輝いて見えた。
 忘れていた貯金箱がふいに見つかったみたいに。

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