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その関係に名前はいらない〜映画 カラオケ行こ! 感想

聡実君と狂児が一緒にいる姿を見るだけで得られる何かがある。あの尊さは何なのですか?

あちこちに散らばっている「愛」らしきもの

原作には出てきていない言葉が、映画では引っ掛かるように出てきた。「愛」だ。

ももちゃん先生の「歌にこもっていた愛がほんの少し足りなかったからかな」、映画見る部の友人との会話でも愛にまつわる言葉が出てきた。

その言葉に引っ掛かったりながら、物語を追っていたら、色々な場面で「愛」らしきものが見えてきた。

・鮭の皮を相手の茶碗にそっと置く岡家の両親
・聡実君部屋のステレオコンポや地球儀(大切に育てられてきて、聡実君自身も好きなことや物を大切にしている象徴に見えた)
・真っ直ぐすぎてウザくも見える和田をフォローする中川ちゃん
・友人がサンタを信じていたか心配する聡実君
・合唱終了後に「良かったよ!」と能天気ぽく頑張りを肯定するももちゃん先生と松原先生
・カラオケ部屋のテーブルで向かい合う聡実君と狂児
・屋上で何てことない話をする聡実君と狂児

原作にはない唸ってしまったエピソード

1.ビデオの巻き戻しが出来ない
人生は巻き戻し出来ない。聡実君も狂児も互いを知らなかった頃には戻ることが出来ない。狂児は「どこかで歯車が狂うと思っていた」と言ったけど、聡実君にとっては、あの雨の日に狂児に傘を傾けられた時よ。

2.紅の歌詞の和訳
「ピカピカに光るお前」「幻」「どこまでも追いかけてしまいそうで怖い」
紅よ、お前そんなことを序盤に語っていたのか?ファミレス行こ!に続く道のりの中で聡実君が逡巡するであろう予告みたいじゃないか…

3.聡実君からの「カラオケ行こ」
いやー、本当にビックリした。この台詞が聡実君から発せられるとは思っていなかった。この台詞が入ったことで、映画版の受け止め方が変わった。
「カラオケ行こ」でも「ファミレス行こ」でもいいのだけれど、その言葉の裏には「あなたと会って一緒に過ごしたい」という気持ちがある。その気持ちを誤魔化すのではなく、年齢や立場というハードルを超えて、ちゃんと言葉にして伝えられるってすごいことで。

聡実君からの「カラオケ行こ」の一言は、与えるだけ、受け取るだけではなく、聡実君と狂児は互いに与え合う対等な関係性だということを表現しているのではないかと思った。すげぇ。

愛って何なんですかね

聡実君と狂児の二人を観ていると感じるこの何とも言い難い感情。この気持ちも愛なのか?

恋愛、友愛、慈愛…。「聡実君と狂児の間にあるものって何だろう?」ってファミレス行こ!上巻を読み終えてからずっと考えている。

「自分の人生において、どこかに必ずあなたがいて欲しい」という感情なのかなと現時点では思っている。この愛とか関係性の名前って何だろね?名前なんかなくてもいいよね。

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