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「お薦め」の拡大解釈

2023年9月号の雑誌「Pen」で、作家の小川哲さんのエッセイが掲載されていた。

第9回のタイトルは「お薦めポイント制度」。編集者や記者から「最近お薦めの本、なにかありますか?」と聞かれることの多い小川さん。お薦めという行為に対して慎重を期している理由などが綴られていて、大変興味深かった。

面白いなと感じたのは、「お薦め」という行為を、小川さんが拡大解釈している点だ。

最終的に「というか、昔からお薦めという行為を人類が行ってきただけでは?」と気が付く。戦国武将の大友宗麟だって、家族や家臣にキリスト教をお薦めしていた。

(小川哲「はみだす大人の処世術」|雑誌「Pen」2023年9月号 P138より引用)

なるほど、布教活動もお薦めの行為と見なすことができる。

そう考えると、あらゆる行為がお薦めとして紐づけることが可能だ。

牛乳が苦手な小学生に「牛乳は健康に良いよ」と伝えるのも、野外フェスのオフィシャルTシャツを大学で着用するのも「フェスって楽しいぜ」と示すのもお薦めといえる。

僕は2021年6月に勤めていた会社を退職し、同年8月に会社を創業した。僕の生き方に触発される人などごく僅かだとは思うが、生き様やロールモデルもまたお薦めの一種と見なせるだろう。

意思をもって何かを選択する。それが自分以外の他者が絡むとき、その行為は何かしらのお薦め要素を孕んでいる。

人に何かを薦めるのは労力も精神力も要するけれど、ほとんど全ての行為がお薦め要素を孕むのなら、ちょっと気楽に感じられそうだ。それは裏を返せば、僕たちはお薦めなしには生きていられない。

家族の、友人の、教師の、上司の、後輩の、組織の、政府の、国の、ありとあらゆるお薦めに囲まれて生きている。

そうなると、自由意志は存在し得るのか。哲学的な問いに帰結するのも、また面白い。

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