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#本なれ 0003 山口絵理子『Third Way 第3の道のつくり方』:理想と現実の間で葛藤したときに

何事も、やってみてから気付くことがたくさんあります。

先日から案内しているラジオに関しても、配信後に「こんなことにも気を遣わないといけないのか」と頭を抱えることが多いです。

一般的なラジオ番組には、多くのプロフェッショナルが関わっています。BGMやオーディオエフェクト、CMに入るまでのタイミング、同席しているラジオ構成作家の立ち振る舞いに至るまで、これまで長く放送され、蓄積されてきた形式知 / 暗黙知が番組では活かされているのです。プロフェッショナルが一つひとつ積み上げてきた過程がラジオをラジオたらしめているのであり、ラジオファンはその恩恵を受けているわけです。

だから、ラジオは面白い。

そんな当たり前の事実に、お恥ずかしながらラジオをやってみて初めて気付きました。それは毎年電通が出している「日本の広告費」というデータからは分からないことです。

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ちなみに原則1回のみ収録(再録はしない)を想定しているのですが、最後の方に寝室から泣いている息子の声が入ってしまいました。そのままでも良いかなと思いつつ、「あれ?」と驚かれてしまう気がして、最後だけ撮り直しました。声のトーン、どこかの繋ぎ目で若干異なるかもしれませんので、そのポイントを探してみてくださいね。笑

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第3回の放送では山口絵理子『Third Way 第3の道のつくり方』を取り上げました。第1回、第2回と小説を取り上げており、いわゆるビジネス書を取り上げた初めての回になります。

山口絵理子さんは株式会社マザーハウスの代表取締役兼チーフデザイナーを務めている方。マザーハウスは2006年に創業され、発展途上国におけるアパレル製品及び雑貨の企画・生産・品質指導、同商品の先進国における販売を行なっている会社です。山口さんは情熱大陸、カンブリア宮殿、知恵泉などのメディアにも出演されています。僕も情熱大陸を通じて彼女を知り、マザーハウスはずっと気になる存在でした。

また僕自身、副社長の山崎大祐さんにお世話になっています。昨年彼が主催する経営ゼミに参加しました。以下のnoteでも書いている通り、ビジネスパーソンとして大切なことをたくさん教えていただきました。

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そんな個人的な思い入れもある方々が関わる本だけにしっかりと話したかったのですが、結論から申し上げると、なかなか難しかったです。

読書ラジオを始めている私も、ビジネスパーソンとして仕事をしている人間です。2007年から働いていますので、約13年間はビジネスにどっぷり浸かっています。今は人事を務めていますが、もともと企画やマーケティングに関わっていたので、書籍も数多く読んできました。自分のフィールドであるにも関わらず「話すのが難しかった」のは何故だろう──シンプルにまだまだ力不足ということはさておき──考えたところ、まさに、それ自体がこの本のユニークなポイントなのです。

3点あります。

1つ目は、ビジネスの常識から外れている(ことがある)ことです。今でこそミッションベースでの起業は珍しくないですが「バングラデシュで世界に通用するブランドをつくる」という旗を掲げて、世の中の需要を0→1で掘り起こすというのは相当な「想い」がなければできません。「クローズドなコミュニティで止まるってはダメだ」とビジネス拡充を目指し、手作りではありえないほどの供給量を目指すために大量生産の方法から学ぶというアプローチも、他社では耳にしない話です。どんなビジネスにもビジネスモデルがあります。同業の会社同士が話すときは暗黙の了解でそのモデルを踏襲するものですが(話がスムーズになりコミュニケーションコストが下がるから)、マザーハウスの場合はそんな「にわかな」常識 / ビジネスモデルに囚われず意思決定されていることが多い印象を受けます。それを基に僕も解釈をするのですが、きっと全てを理解しているわけではないのでしょう。理解できていないものを話すことはできないのです。

2つ目は、現場による圧倒的なファクト量があることです。第2章「デザインと経営のサードウェイ」という項では、山口さん自身がかつて苦悩したエピソードが書かれています。デザイナーとして / 経営者として、考えることは相反することもあり、そこを同時に踏まえながら意思決定していくのは難しいと言います(ある程度の規模の会社になると、いずれかの役割を誰かに託すというのが一般的です)。しかし現場にい続けること、山口さんの場合は工場や工房で職人たちと共に時間を過ごすことによって、モノづくりに対して圧倒的なファクトを得ることができるという利点を語られました。それは自分たちのミッションを世の中によりクリアに語れるということのみならず、「オペレーションをこのように改善できるのではないか」「もっとプロダクトを輝かせるためにはどうしたら良いのか」という示唆を得られるということです。しかも、他の従業員を介することなく。読書の方法のひとつに「クリティカル・リーディング(批判的読み)」というものがあります。書かれていることを鵜呑みにするのでなく、多方面の観点から読み疑ってみることで、読書に対する深みを得られます。しかしこの圧倒的なファクト量から、クリティカル・リーディングがなかなかできませんでした。ファクトがあるので否定しようがない。本に書かれていることをそのまま受け入れて読んでしまっていたことに気付きました。

3つ目は、哲学的な示唆に溢れていることです。僕がこの本を色々な人に薦めているのは「ビジネスの参考にしてほしい」ではなく「生きる上での指針として感じてもらえたら」という意味合いが大きいのです。僕自身も様々なコンプレックスがありますし、まだまだ人間として未成熟です。壁にぶつかると逃げ出したくなる気持ちに駆られることがあります。そのとき人間は「隣の芝生は青い」と考える傾向があるようで、全く違う変化へとアクションしてしまうことがあります。サードウェイとは「AとBのいずれを選ぶ」という考え方のことではありません。山口さんは「相反する二軸をかけ合わせて新しい道を創造する」と定義しています。どちらかを選択するわけでもなく、どちらかの妥協点を探るのでもなく、ぐるぐると廻りながら新しい解を引き出すこと。これは意思決定における「根源」にも該当し、哲学的な視点ではないかと僕は解釈しました。ただ僕は「哲学」について良く分かっていないので「哲学的」というような言い方しかできませんでした。もっと人間として成長しないといけないな……と感じました。

山口絵理子さんはnoteアカウントもあるので、ぜひこちらも読んでくださいね。

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もし興味があれば、ぜひ各種Podcastから聴いてみてください!

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さて次回の放送は4/9(木)16時頃〜になります。大田堯『教育とは何か』について、たっぷり語りますので、どうぞ楽しみにしていてください。

それでは、また来週!

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#おうち時間を工夫で楽しく という素敵なハッシュタグを見つけました。今は「StayAtHome」です。気晴らしに、色々なPodcastを聴くと楽しいですよ!

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