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Trust in love③
しばらくして、向こうから飛んでくる人影?みたいなものが見えた。
「先輩です」
ヴィダが手を上げると、人影はまっすぐ、音もなく地上に降り立った。
「どうも。リベルテです」
リベルテと名乗る天使は長身の細身。
髪は半分赤髪で、半分グレーだ。
衣装をとめるベルト部分はチェーンになっている。
そしてサンダルがなんだかメタリックでハードに彩られている。
「なかなかとんがってんなあ…天使も色々あ
Trust of love⑦
「よかった!お二人には大変お待たせしました」
ヴィダが青く細長い瓶のような容器をホログラムから受けとる。
「わあ…あれがそうなんだ」
ぼくとリクはなんだか緊張してきた。
握る手の強さがそれを、物語っている。
「足りないといけないので、すこし多めに送ってもらいました」
ヴィダが2本の青い瓶をこちらに持ってくる。
どうせなので、体も清めましょう。このままでは、現世でなじみにくいでしょうし。
Trust in love⑥
「うおおおい!ビックリするじゃねえか」
驚きまくるリベルテ。
「ヴィダ、今戻ってきたのか?」
「おかえり。お疲れ様」
ソラとリクの方が冷静に受け入れていた。
「ただいまもどりました。
ちょっと岩がなかなかどけられなくて、途中で細かい土砂が落ちてきたりと
一瞬では戻せないそうなんです。無事滝が流れたら、
すぐに水を転送してもらうことにしていますので、
もうしばしお待ちください」
ぺこり、とヴ
Trust in love⑤
どれくらい時間が経ったのだろうか?
天界って不思議な場所だなとつくづく思う。
あれから、先ほどの衝撃を受けるような魂には会わず、
老衰で穏やかに天寿を全うされた方もいた。
リクのほうも淡々と進んでいるようで、受付へ投げかけられる熱い視線はとことんスルーしている。
あの割りきり方はすごい。
「あら、きれいなお姉ちゃんねぇ。
死ぬまではほんとうに苦しかったけど、
ここでは痛みもなくて、気分がい
Trust in love④
そんなこんなで、ぼくらはどうにかこうにか、受付をこなしていった。
すると、ぼくの前に次の人がやってきた。
「ええと、あなたのお名前は…」
その人はいかにも普通の状態には見えなかった。
痩せ細った身体、顔色はどす黒く、目の下に色濃いくまができている。
目はどこを見ているのか、
虚ろで焦点が定まらない。
「あの、お名前を…」
「ホログラムを使え。名前がそこにでてくるから。それと名簿と照らし
Trust in love②
「しかし…すぐ現世にお戻ししたいのですが、今回のケースはちょっと特殊でして」
ヴィダの表情がさっきと変わって
心なしか暗い。
「どういうことだ?」
となりのリクが首をかしげている。
「いま、あなた方をそのままお戻しすると、
毒物が入った状態でということになります。
あなた方には私たちと違い、肉体があります。
肉体があるということは、内臓などもありますよね?」
「じゃあこのまますぐ戻ると、
Trust in love
※注意※お初の方も、常連様も、見てくださるすべての方々、
いつも本当にありがとうございます。
こちらは、前々作、『Autumn scramble!』で気を失っていたときのリクとソラのお話です。
スピンオフ作品に近いので、よろしければ前々作の⑤~⑥あたりを読んできただけると理解しやすくなるかと思います。
それではどうぞ!
ー天界ー
「このごろなんか忙しいなぁ」
そうつぶやいたのは、緑の髪
Autumn of sun!⑧
こうして、野獣とベルの奇妙な生活がはじまった。
ここまでが前半の見せ場だ。
照明が暗くなると、戻ってきたぼくたちに
舞台袖にいた中山さんが
「大丈夫。2人ともちゃんと役になりきれているから、自信持って!」
「うん。ありがとう」
「誰よりも強くて、優しいベル。
あなただから野獣を救えたの。あなたの存在が彼を変えたのよ」
中山さんの言葉が魔法みたいに心に染み込んでいく。
「そうよね?野獣さ
Autumn of sun!⑦
さて、いよいよこの日がやってきた。
内股で歩くのも今日でおさらばだ。
最初は中山さんによく怒られたっけ。
「ベルは女の子!肩で風切って歩かない!」って。
今日舞台が成功すれば、それもいい思い出になるよね。
ぼくたちは落ち着かなくて、いつもよりだいぶ早く学校についてしまった。
かといって、舞台までまだまだあるし、どうしたもんかな…、
「リク、読みあわせしとこうか」
本番には台本はない。
間
Autumn of sun!⑥
それからの一週間は怒涛の勢いで過ぎていった。
愛のムチはなかなかだったが、それでも中山さんはフォローも忘れていない。
「中山さんは、どうやって役を演じているの?」
ぼくはおもいきって尋ねてみた。
この間の片桐さんの言葉で、彼女のすごいことはよくわかったからだ。
「私、もともと本が好きで、すぐその世界に入り込んじゃうんだ。
お芝居も、にているところがあるから、原作があるものは原作をよく読む
Autumn of sun!⑤
「中山さんてすごい人だったんだね…知らなかった」
あのあと部活帰りの片桐さんに会い、中山さんの話になった。
彼女は体が弱く、家庭に問題があり、
家に帰りたくないからという理由で部活にはいったらしい。
そこでたまたま体験で見に行った演劇部の先生に絶賛され、
小学校高学年から部活をしていたそうだ。
中学でも、児童劇団の子を抜かしてオーディションで
3年間主役をはり続けた異色の存在だ。
「現
Autumn of sun!④
次の日、ぼくらはいそいで放課後クラブハウスに向かった。
クラブハウス前には、大道具作りだろう、金づちの音も響いている。
「お疲れ様です」
「お芝居に参加させていただく者です。よろしくお願いします」
すると、部員たちははこちらをむいて
「こちらこそよろしく!」
とそれぞれ笑顔でこたえてくれた。
「おーい中山ー!主役の2人が来たぞ!」
「はーい!」
部室のほうから声が聞こえる
Autumn is sun!③
こうして、美術部とサッカー部にそれぞれ許可をもらったぼくたち。
毎日リクの部屋で読み合わせだ。
中山さんは、舞台の配置図と、衣装合わせと同時に行い、2人の台本読みあわせの時間をできるだけ
奪わないようにしてくれている。
それまでに何とかしないと。
「そろそろ立って読みあわせした方がいいのかな?」
2人で話していると、スマホの通知がなった。
「ん?誰だ?」
「あれ?これ通知じゃなくて招待
Autumn of sun!②
その日の昼休み。
ぼくらは中山さんに渡された資料と台本を持って、屋上にいた。
セリフ合わせもここでないとできないからね。
お話はとても簡単にいうと、傲慢な王子が冷たくあたった魔女に呪いをかけられ、
花びらが散るまでに、真実の愛を知らないと、
野獣の姿のまま死んでしまうことになってしまった。
そこにたまたま森へ迷い込んだ父を助けにベルがあらわれて、
父の代わりに屋敷に残ります。
そして色々な