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ネクラ=ポップ

こんな顔を見せるのはホントは好きじゃないけど 僕だっていつもピエロみたいに笑えるわけじゃないから

細美武士もこう言ってるけど、よっぽど苦労を知らないで人生送ってきたかめっちゃゴリゴリウェルカムウィークエンドでもない限り大抵人間は暗い。そういう側面を持たずして生きてる人間にあったことがない。成功より失敗のが共感を呼ぶし、インターネットではとりあえず弱者か狂人ぶっておいた方が無難。心あたりあるんじゃないだろうか。少なくとも今日ひいた当たりのガチャより服用したお薬の方が反応は貰えると思います。

流石にクスリみたいな、マイナス方面にエネルギッシュなファクターは普通とは言えないにせよ、強みにスポットライトを当てるよか弱みを解剖してくれた方が人は自分に向けたものだと感じやすい。社会に対する傷つきだとか厭世が根本にあった90年代後半~ゼロ年代の作品がリバイバルブームを起こしたり、どちらかと言えば日陰側だったボカロPがメジャーシーンで活躍したり。どっかの誰かが「世の中当たり前のようにエロゲが溢れかえってる」なんて言ってたけど、要素として当時日陰だったハズのものがいつの間にか一般ヅラして受け入れられてるのが今の時代。暗さはむしろポップだ。

ファッションネクラみたいな概念にムカつく人間がいるかもしれないが、俺は基本的に生きていく上でファッション性ってヤツはどう足掻いても付きまとうもんだと思ってる。最初の最初っから自分で何かを選択出来てた奴なんてホントに一人もいない。あれが好きもこれが嫌いも、あれが恰好いいこれはダサいも、全部人に影響されるか人目を伺うかで判断のラインが決まる。勿論元々自分が持ってる素質みたいなものもあるだろうけど、そういう自分の素質って振り返らないと気づけないもんじゃない?少なくとも素質しかない状態でそれを自発的に見出してやれるほど俺はハイセンスじゃなかった。

なんにせよ、自意識が存在する人間なら切っても切り離せない性質がファッション性だ。記号的に扱って馴れ合う為に利用するかは人によるが、一定の感性が自分の中で形成されるまでは指針として機能する。「クーデレ属性は俺の嫁!」とか「じゃあロリは俺が貰いますね」とかお前が昔BBSに書き込んでたのはそういうこと。鳥の詩が流れるたびに「国歌斉唱」「ご起立ください」って俺がコメントしてたのもそういうこと。今日はこの辺にしといてやる。

こういう生き方に関わってくる以上コンテンツの入り動機として一番強いのだ。ファッションってヤツは。ちょっと回りくどい前置きになったが、俺はとにかくファッションでもいいから自分が「この曲今の気分にぴったりだな」ってのを人に聞かせたい病気を持ってる。なんなんだろうなこの病気。特にバンドはそう。聞いてもらった所で一銭ももらえないし別に褒められないのに。

俺も有象無象の凡人なので例に漏れず弱さや暗さに対して共感する感性を持っている。世の中には小説や映画、ADVなど様々な形態の創作があるが、こと感情を引き出すのにかけては滅茶苦茶音楽は優れている。ちょうど季節は夏終わりかけ。自分のジクジクした弱い部分が最も刺激される時期だ。聞いてみてくれ。

岸田教団&the明星ロケッツ 夏空

みんな思った以上にバンド聴かないみたいだけど、流石に岸田教団の名前くらいは目にしたことあるだろ。最近だと超電磁砲Tの主題歌も担当してたし。東方アレンジの印象が強いかもしれないが、同人CDバンバン出してた頃は結構エロゲのオリジナル解釈曲なんかをあげていた。星空ロジックのアルバムと迷ったが、夏ってことでLITERAL WORLDからAIRモチーフのこの曲を選んでみた。

岸田教団ってpopsenseみたいな何この意味わからん演奏のギター……みたいな音が結構あって、普段結構ベースがしっかりしつつも滅茶苦茶やってる攻撃力高めの曲が目立つけど、これはギターの音色が凄い柔らかい。

青い海は白い空から見える筈だから 今日もまた立ち尽くしたままで

サビの落としどころに持ってくる歌詞として満点。

ART-SCHOOL ニーナの為に

これも有名だしバンドの名前くらいは聞いたことある?ない?説明よりもまずは聞いた方が早い。

音楽理論みたいなのは全く分かんないんだけど、俺は小綺麗でクリーンな音よりこういうThe ローファイって感じのザラザラしたサウンドがクソ好き。愛すべき俺らがマッシュヘアのボーカル木下理樹は、正直歌が上手いっていうにはかなりクセックセの歌声だ。少なくとも俺は他に作曲を任せてもこの歌は完全には活かせないと思う。でもART-SCHOOLの演奏って音からしてすげえダウンな感じで、それとこの女に対して過剰に綺麗でヒロイックに見てる、ともすれば信仰すら感じる弱い歌詞と相まってカッチリ独特の歌声がハマってる。味があるってこういうことだよな。歌がうまいボーカルは数いれど、言ってしまえば下手くそなくらいの歌が演奏と曲の世界観で唯一無二まで域にまで引き立つところを見るとバンドって面白えなって思わされる。木下の作曲センスの為せる技の部分だ。

新海誠が主人公の声を直接あててる「ほしのこえ」もそうだけど、完成度が高い他の要素と、上手く生きれられてない主体の人物がいると「素人感」って途端にマッチするよな。人生の灰色さ加減の表現って、コントラストで女の子(ヒロイン)が美しく見えるスパイスとして優秀過ぎるのかもな。不幸の中に幸福を見出すってシンプルだけど、中々根強いと思うね。

あとARTは日向のベースが毎度死ぬほどかっこいいからアルバムで聴いてください。最近はともかく初期は凄くシンプルな曲が多くて聞きやすいと思います。

砂漠 拒絶 綺麗な心 無能 欠落 性的欲望 君はとても可愛い人で、なぜか俺はそれを失う

こう、90年代オルタナの流れから来てるバンド特有の歌詞に並べられる単語の気持ちよさが半端じゃないね。

Sunny Day Real Estate 47

収録されてるDiaryがもう名盤中の名盤なワケだけど、俺はこれが一番聞いてて落ち着く。耳に入れて一発で朝青龍より重いエモが満ちてくる。

フラっとしたギターにボーカルも激し過ぎないこの感じ。スクリーモみたいな尖った感じも好きだけど、これくらいの塩梅が一番聞き心地いい。48とかSong About An Angelみたいなタイプの曲と迷った。最初バースが気だるさたっぷりで始まるのに対してコーラス部分一気に感情が爆発するって結構王道なんだけど、47はイントロがアジカン風味で聞き繋ぎやすいかなと思って選んだ。Weezerとかeastern youth聞いてたらしいし、アジカンがむしろSDRE風味なのかもしれんけど。ちなみにドラムのウィリアムとベースのネイトは一回解散した後Foo Fightersに行った。

INU 気い狂て

急にサブカルめいてきたな。町田康って聞いたことないだろうか。きれぎれとか壊食とかで有名な小説家だ。彼が中心でやってるバンドがINU。オーケンがONLY YOUでカバーしてたメシ喰うな!がこのアルバムの表題曲。オーケン、絶望先生の豚のご飯でもこのネタ入れてたけど誰に通じんだよ。

沢山の人間が居て 俺はその中の一人 定まらぬ視線の中で みんなお互い窒息寸前 ええ加減にせんと気い狂て死ぬ

今50、60くらいのおっさんが20、30くらいで書くカラっとした暗さってなんでこんなにカッコいいんだろうな。TOMOVSKYとか和嶋慎治(人間椅子)とか中島らもとかその辺にも通ずるワードセンスのカッコよさ。曲調がノリ良いのもGOOD。合間に聞こえるちょっと間抜けな大太鼓?が可愛い。

規則的に聞こえるベースの音から急に混じるクランチ気味で不安定なギターが良い味出してる曲です。INU、出してるアルバム二つしかないし比較的手出しやすいんじゃないかな。パンク好きなら通っておいて損はないよ。

Alcest  Souvenirs D'Un Autre Monde

俺が最近deafheavenだのburzumだのメタル関連をガン掘りしてるのは間違いなくこの曲がきっかけ。この曲はメタル臭ゼロだけど。ブラックゲイズって種類らしい。トレモロリフとか言われても俺も分かんないのでシューゲイザーの一種って認識でいいと思う。

このalcestってバンドは、コンセプトがNeige(このバンドの主体の人。ボーカル。)がマジで小さい時に見てた幻想世界が他人から全然理解されないから音楽で表現したってことらしいんだけど、聞いてるだけで物憂げで綺麗な感じが伝わってくる。アルバムのタイトルにもなってるこの曲「Souvenirs D'Un Autre Monde」は日本語訳すると別世界への追慕。ルーツがブラックメタルだからか、デプレ系の雰囲気の危うさよりは安定してるとはいえなんか希死念慮みたいなニュアンスも汲み取っちゃうな。

俺がSyrup16gを好きになった理由にも繋がるんだけど、あんまりにも元気な鬱ってグッと引いた目で見ちゃうんだよな。抑えつけられた情念だとか、負のエネルギーみたいなものに対してあんまり鬱って言葉が当てはまる感じがしない。負のエネルギーにあてられる時はあるけど、そもそもエネルギーすら沸かない時ってのがあって、そういうカロリーの高い情念が結構受け付けづらい。そんな時って難解で複雑な意味あるナニカより凄い単純な、綺麗な景色だったり、仕事上の形式的な言葉しか喋らない店員だったり、歌詞のないサウンドトラックのほうが救われた感じにならない?救われるっていうと大袈裟かも。意味とか必要とかから解放された感じがするんだけど、俺にとってこの曲は感覚的にはそういう位置づけにある。

曲全てに言えるかもしれないけど、ことこの曲に関しては聴いたときの心地よさが全部だと思う。分からないままでもまあ、それはそれでも綺麗なので。

CRYAMY まほろば/物臭

何度でもその手を取ろう それを時間と呼ぼう

ここのボーカルとギターがハモるみたいにして違う音程で重なる所が気持ち良すぎる。何度でも、の所で同じ音程で弾いてそれを時間と呼ぼうで崩すとこ。超好き。

バンドの演奏って見ててなんか苦しんでそうな動作に見える時ない?ギターやベースだったらかきむしる、ドラムだったら叩きつけるみたいな、原始的なそういう所作。歪んだ音。それを一番やってくれてるのがこのバンド。爆音で聴ける。本能がこれでいいって言ってる。

歌詞が強いバンドってあるじゃないですか。クリープハイプとかヨルシカとか。曲じゃなくて、その歌詞の文字列読んでるだけで一個なんか摂取した感じになれるバンド。それに比べてCRYAMYカワノの歌詞センスってクセがない。オシャレだとかパンチの強い単語だとか、そういうの全部置き去りにして人間ってこんなもんだよなって生活から地続きの言葉感覚。

トイレ紙ねえわから始まる曲がこの世に何曲あるんだ。別に人に言ってエンタメとして昇華してもらえるような人生経験なんてなーんもねえよってのは俺の実感としてずーーーっとあって、だからどんな言葉よりもそれをそのまんま口にしてくれたのが何より気持ちよく刺さった。コンプレックスとまで言うと大袈裟だけど、強い悲劇性みたいなものが己にない分より自分がどうしようもなく思える経験、ないですか?言い訳の余地がないのもそうだし、平凡な困難も超えるだけのマインドを育めなかったどうしようもない惨めさを感じる。そういう自意識を心地よく刺激される瞬間が俺は好きだし、だからこのバンドが好き、この曲が好き。

終わり 閉廷! 以上 みんな解散!君も帰っていいよ

もうなんもないから平沢唯の顔面見て終わるか。

かわい。なにさっきからバンドバンドって。うるせえよネクラ共。髪なげえし挨拶も覇気ねえし多動だし人の話聞けねえし風呂入らねえし。俺今からチート薬師のスローライフ見っから邪魔すんなよな。毎週水曜深夜放送だからよろしく。じゃあなオタク。風呂入れよ。

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