【ネタバレ注意】映画「マトリックス」について

超オススメの映画の1つに、「マトリックス」があるので、それについて書きたい。
この映画のテーマは「信じる力」だ。
この映画を観ると、信じるとはどういうことかがわかる。

ストーリーのメインとしては、主人公ネオが自信をつけ本領発揮するまでの過程が描かれている。
でも、本当にすごいのは、私はネオではないと思う。
第2作、第3作にもそれぞれさまざまなメッセージがあるのだが、第1作だけは最初から最後まで一貫して「信じる力」が描かれている。
では、本作品で一番「信じていた」のは誰だろうか。ネオの内面にある、自分という存在認識と、世界への捉え方を根本的に変えたのは誰か?登場人物の誰が、映画全体のストーリーをリードしていったのか?
ネオではないのだ。
ここがすごいのだ。主人公をヒーローにしたのは主人公ではないのだ。

それは、主人公の指南役であったモーフィアスであり、主人公のパートナーであるトリニティという「主人公の周辺人物」だ。

ストーリーは、主人公が「違和感」に薄々感づいているところから始まる。「自分の人生を歩んでない気がする」という漠とした不安だ。

ネオは、はじめはただの人間だ。
逃亡途中にあってもビルから飛べず「自分には無理だ」といって引き返す。その時、ビルの下しか見えていない。
モーフィアスによって現実を知らされても、はじめは全然信じられず完全に動揺する。
事あるごとに「自分にはできると思えない」「自分は救世主なんかじゃない、すまないが何かの人違いだ」と言う。至って普通の反応、全然主人公らしくない。

たった一人、彼を探し出したモーフィアスだけは違う。
彼は「ついに会えた。何年も前からずっと、現れるのを待ち望んでいた。探し物は見つかった。彼こそ救世主だ」と断言する。

モーフィアスは最初から最後まで、絶対に、何があろうとブレない。
重要なシーンは3つある。

1つめは、「ネオがオラクルに会った後にモーフィアスと合流する」シーン。
ネオが、なんでも知っているオラクルに「自分では違うと思っているんだけど、私は救世主なのか?」と聞きに行く。
じつは、オラクルは「残念ながら…」と言い、ネオは「やっぱりな…」と部屋から出ていくのだが、
扉の外でネオを待っていたモーフィアスは、ネオがオラクルとどんな話しをしたのかとか、彼は本当に救世主なのかとか、全く聞こうともしないどころか、「聞く必要はない」といってネオの報告を制止させる。

モーフィアスにとっては、ネオが救世主であるということを「知っている」から「聞く必要はない」のだ。
答えがそうであると知っちゃっている以上、誰がなんと言おうと、答えはそうなので、聞く必要がないのだ。

これなのだ。
もはや「知っている」という状態。
これが「信じる」ということだ。
この不思議な力は「スタンフォードの精神科医が」にも描かれている。

次の重要なシーンは「拉致監禁されたモーフィアスを救出する際、ネオが弾丸を避ける」シーン。
トリニティは、戦闘員としてネオを連れて行く。ネオは確かに強いのだが、ぶっちゃけ”救世主”レベルではない。
しかし、戦いの最後、エージェントの避けられそうもない弾丸を、ネオは常人らしからぬ動きで回避する。

これは、非常に重要なシーンだ。
そもそも、この時のネオのモチベーションは「モーフィアスを助けたい」だ。
救世主ではないので、たくさんの銃器を携え、泥臭く戦うのだが、最後、避けられない弾丸が一瞬だけ避けられるようになる。
本人も自覚していない不思議な力が出た瞬間である。

戦いの後、トリニティは「どうやったの?あんなの初めて見た」と言う。
そしてネオは「自分にもわからない」と答える。

初めて観た時、前半1時間近くも迷い悩む主人公が、どうして急にこうなったのかわからなかったのだけれど、今は少しわかる。
このシーンは、
「ひとは、利他の一心で行動したとき、普段は秘められているのだが、人間が本能的にもつ、想像もつかないほどの、尋常でないほどの、非常に強い力が湧き上がる。本人の要求に応じるかのように、困難を乗り越えるだけの力を手にし、道を切り開く」
ということが描かれているんだと思う。

これは、本当に不思議な力だと思う。
何が道を切り開くのか。明らかにこの不思議な力である。
「成功哲学」ではこれは「願望のもつ力」と表現されている。

このシーンに関連して、ネオは前半、何度も周りの超人を見てマネをするシーンがいくつもあるのが重要な布石となっている。
・モーフィアスがビルをジャンプするシーンを見て真似するが落ちる
・スプーン曲げを目の当たりにして少しできるようになる
これらのことが、不可能だと言われた
・モーフィアスを救出するという達成経験
につながっているのだ。

このシーンの前後で
・ネオが来た瞬間に鎖を自力で壊すモーフィアス
では、どれほど彼の信念が強いかが描かれている。

3つ目は、クライマックスでネオが復活するシーン。
ネオは撃たれて一度死ぬ。のだけれど、
モーフィアスは「It can’t be(ありえない)」と言って一切そのことを受け入れない。
ネオを愛しているトリニティがキスすると、
ネオは息を吹き返し、弾丸に触らずに止め、片手でエージェントを打ち負かす。
それを見たモーフィアスは「He is the one(彼こそ救世主だ)」と呟く。

この時、彼は救世主になっている。
迷いはなくなり、弾丸を躱す必要すらなくなる。
全身に自信がみなぎっている。
「できる」ということに何らの曇りもない。

ここまで主人公の価値観が肯定に変化して成長したのは、主人公を支える2人の活躍なのだ。

トリニティが、いつのまにかネオのことを愛していると「気づく」のも重要なシーンだなぁ。愛って気づくものなんだなぁ。

というわけで、このマトリックス第1作目は、
ネオではなく、モーフィアスとトリニティが物語をリードし、最終的に、ネオがほんとうに救世主になる、という映画なのですよ。

この映画を観たとき思うのは、やっぱり
「自分の限界を決めているのは自分だけで、じつは限界などないということに気付けば、想像したことはなんでも実現できる」
ということを毎回思うんです。

だからオススメなんです!
あと音楽がかっこいい!

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