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少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑬ 「突き放す」が「子ども扱いをやめる」ではないこと

(前略)
ピムまでが近ごろは変わってきました。
わたしを子供扱いするのをやめようとしてるらしく、なんだかずいぶんよそよそしく見えます。
さて、この先いったいどうなることやら!
こないだなんか、ぉまえ、ぜんぜん代数を勉強しないんだったら、戦後にまたおとうさんから補習をしてもらえる、なんてあてにするんじゃないぞ、とか脅かされちゃぃました。
もちろん、当面はこのままようすを見るという手もありますけど、わたしだってほんとは勉強を再開したいんです。新しい教科書が手にはいれば、ですけど。
きょうはこのぐらいにしてぉきます。ペーターのことで頭がいっぱいで、彼をながめる以外に、なにも手につきません。
                じゃあまた、アンネ・M・フランクより

アンネの日記増補新訂版 p395

「ピム」とは、アンネが日記上で使った父オットーの愛称である。
母親に比べれば、随分と価値観が近いと感じていた父であったが、「子ども扱いをやめようとしている」にも関わらず、その切り口が「勉強をおしえてやらない!」などと依然、子ども扱いの範疇から出ていないことをアンネは嘆いていることがうかがえる。

そして、戦後オットーがアンネに代数を教える機会など、二度とやって来なかった。

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