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013 | 82年生まれ、キム・ジヨン

久しぶりの読書記録。

この本は数年前に話題になって、なんだか話題になりすぎてちょっと遠ざけていた本でもある。
最近、日プ女子を見始めて、K-popをいかに聴いてこなかったかと、その魅力に気づいて、韓国に興味がでてきた矢先、図書館で置いてあったので借りて読んだ。

まず思ったのは、韓国は日本よりも女性差別がひどい(あるいはひどかった)のかな、ということ。
ジヨンの母親が、お腹にいる子どもが男の子ではないとわかって、自分は堕ろしたくないが、周りからの圧力により子供を「消し」たと書かれていることに驚いたし衝撃を受けた。
でも、ひょっとしたら日本も昔々はそういうことがあったりしたのかな、浅学なのでわからないけれど。
ジヨンの母親世代が戦後を生き抜いた人々であることが描かれていて、ああそうか、朝鮮戦争はまだ、ジヨンの母親世代なのか、と思う。
日本人にとってみれば、戦後を生き抜いた人々、というともう70-80代になってしまって、戦争というのは実感がないが、世界には、第二次世界大戦後にも戦争があるし、今もパレスチナやウクライナで戦争があるということを改めて感じる。

でも、ジヨンのお母さんはほんとうに強い人だと思った。自分自身の経験をもとに、子どもにはそういう思いはさせまいという強い気持ちが伝わってくる。それに、ちゃっかり事業成功させててすごい。ジヨンの父に、ジヨンの母が「ここまでこれたのは私が7あなたが3」みたいなこと言ってて、ほんとそう!まじかっこいい!と思った。

ジヨンの世代はおそらく私自身と近い世代で、だから、この本に描かれているほどは経験していないけれど、一部似たような経験したなあと思って共感したし、ああこれ、日本だけじゃないんだ、ってちょっと暗い気持ちにもなった。

私は20代後半で、平成生まれで、もう性差別なんてないじゃん!って思われるかもしれないけれど、
実際のところ「女の子だから〜」と度々言われてきた。
たとえば、女の子なんだからそんな男言葉(=乱暴な言葉)使うな、女の子なんだから勉強なんかそんなにしなくてもいいのに、女の子だから県外の大学はいっちゃだめ、などなど。

今思えば、乱暴な言葉を使うなというしつけ自体はいいものだと思う、けれど、それを「女の子だから」と一括りにする必要はあったのか。
勉強なんかしなくてもいいのに、は、私の祖母から言われたもので、これはまあ世代が違うから仕方ないと思って無視し続けた。
女の子だから県外の大学〜、これも、あとあと聞いたらお金がなかったから、とのこと。ではなぜあのとき女の子だから、と言ったのか。お金がないからと、正直に言ってくれればまだ納得できたのに。

それから、大学へ入ってから、友達が街コンで、わざとちょっと下のランクの大学出身ってことにしてる、と言っていて驚いた。今どきそんなの気にする人いるの?と。
でも、自分自身がマッチングアプリを始めたとき、今でも男より女の方が賢いのがいや、という人はいるんだと感じた。

解説を読んで、韓国は、制度面ではかなり整ってきていて、日本より進んでいることがわかった。(本文でも出てきたが、保育園が無料であることには驚いた。)
しかしその分、男性側が被害者意識を感じているという。韓国には男性に徴兵制度があることも関係しているようだ。
このことは本文における「ママ虫」という言葉でサラリーマンがジヨンに対してひとりごちるシーンにあらわれていると思う。
ママ虫、というのは韓国のネットスラングで、育児をろくにせず遊びまわる害虫のような母親という意味で、韓国ではもっと侮蔑的な言葉だとか。

ママ虫、とまでは言わないが、日本でも、専業主婦に対してのあたりは強くないだろうか。
旦那の稼ぎであそんでていいなあだの、働かなくていいなあだの、上手く言葉にできないけれどそういう風潮。
じゃあ、じゃあ、そんなこと言うなら、性別、変わってよ、ってたまに思う。代わりに子供産んでよ、代わりに生理毎月こなしてよ。私が代わりに働くから。

男性には男性の苦しみももちろんあると思うのだ。私が「女なんだから〜」で苦しんだように、男性もまた、「男なのにそんなに弱くてどうする」とか、「男なんだからもっと稼げ」とか。

女性には女性の大変さがあるし、男性には男性の大変さがあるし、もっといえばそれは女性特有とも男性特有とも言えず、人には人の苦しみがある。
「女だから」とか「男だから」とか言う前に、ちょっと想像力を働かせたいな、と自分に言い聞かせる。

最後に、この本の構成について。
終始、人の名前は◯◯氏と3人称で書かれていて、最初は戸惑ったが、これは精神科医による患者のレポート、というていで書かれているからだった。
また、解説を読んで、全然気づかなかったことにびっくりしたのだが、女性には、ジヨンの娘も含め全員フルネームで◯◯氏、と名前が出ているのに対し、男性はジヨンの夫以外名前が出て来ず、ジヨンの父、弟、という表現で書かれている。韓国社会では結婚と同時に女性は「◯◯の母」と名前を失うらしく(日本でも割とそうだよね、◯◯ちゃんママとかね)、それに対するミラーリングになっている。(解説より)

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