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008 | レ・ミゼラブル

大学でフランス文学を専攻していたのに、レミゼの本はもとより、映画もミュージカルも見たことがなかった。(フランス文学士失格…?!?!)
今回セルフ・リワークをするにあたり図書館へ通うということで、こんなふうに時間のある時じゃないとチャレンジできないレミゼを読むことにした。
ちなみに読む前の事前知識は、ジャンヴァルジャンがパンを盗んだことにより徒刑囚になること、ファンチーヌとコゼットという人名、ミュージカルの「民衆の歌」、バリケード(革命ふるのかな…?)である。(途切れ途切れ…)

今回私が読んだのは、ユゴー全集、辻昶氏訳のもの。単行本サイズ、文章は2段、約500ページ×3冊というボリュームである。

さて、全部しっかり読んで、最初の感想はというと…脱線多いな?!あと作者の主張強いな?!である。「読者はご存じのとおり、〇〇は〇〇だったのである。」とか「すべて説明することが必要であるから、〇〇について述べることも横道に逸れることにはなるまい。」みたいな感じの表現が散見されて面白かった。
ただ、この脱線により19世紀当時のパリの様子、フランス革命、ワーテルローの戦いの様子などがわかる。

大学の先輩の結婚式で、先輩が「歴史学は事実の記録、文学は感情の記録だと思っている」と言っていたが、本当にそうだなと思う。世界史で学んだだけではわからない、当時の人々の思いや葛藤があらわれていた。

話の本筋の感想は、まず、本当に面白い!というのと、今の社会情勢と比べて、色々考えさせられるなものがあるな…というものであった。
面白い理由は、伏線が色々張り巡らされていて、この人が実はこうだったとか、前に出てきたあの人は実は今はこうなんだとか、そういうことが沢山あって読むのに飽きない。(ただし上記のとおり脱線がすごいから、あれ?この人誰だったっけ?ってなることもある。たとえばブーラトリュエルとか。)

解説にユゴーは理想主義的なところがある、と書かれていたがそれは本編を読んでよくわかった。アンジョルラスたちが企てる革命、バリケードのあたりだったと思うが、「パリで起こるこれらの革命は世界に広がり、平和な世界になる」(かなり要約)みたいなことを言っていて、理想主義的な思想を持っている自覚のある私は、ユゴーにたいそう共感した。
しかし、今の社会情勢を考えて、ユゴーさん、あなたの言うとおりには世界はなっていないのです…戦争は繰り返し起こり、暴動も起きています…と語りかけたくなる思いだった。

理想主義的で、格差も是正したいし、世界平和にもなってほしい、という考えの私だが、実際のところは全然そうなっていないのである。
2度の世界大戦を経て世界が戦争の悲惨さを知った後もなお、イラク戦争や朝鮮戦争、今に至ってはロシアはウクライナに侵攻し、中国は圧政をしている。中国では、学生たちが白紙運動と呼ばれるデモをしているという。
こういうとき、革命を起こしたりデモを起こしたりするのは、レミゼラブルにおけるアンジョルラスたちと同様、若い学生たちなのだな、と思う。
なんとなく、世界は同じことを繰り返しているように私には思えてしまう。

と、私自身もだいぶレミゼの感想から脱線してしまったが…最後に。マリユスとコゼットには幸せになってもらいたい!!!!!
ジャンヴァルジャンも、最初の司教と出会ってから(もはや名前忘れた)、紆余曲折はあるが良心というものを知り、学ぶようになり、信心深くなり、善人となっていった。最後の死に様は、マリユスとコゼットに見守られて、彼にとっては幸せだったのではないだろうか。

私は結構性善説を信じているところがあり、人は生まれながらにして悪なのではない、と思っている。ジャンヴァルジャンもテナルディエも、最初から悪だったわけではなく、「レ・ミゼラブル」(哀れな人たち)だったから、しかたなく悪になったのではないか?と思う。ジャンヴァルジャンは善に変わるタイミングがあったが、テナルディエにはそれがなかった(あるいはその気がなかった)のかな…と思う。

総合すると、ミュージカルが見たくなりました。いつか見ようと思う。

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