J-POPレビュー #4 カメリアダイヤモンドCMソング7選(後編)

後編でも個性的な残り4曲を紹介する。現在でもそうだが、宝石のCM自体そんなに見かけるものではなく、またブティックや高価格帯の子供服店のCMも見ない(そもそもブティックという言葉が死語かもしれない)。そういった意味でも、一昔前の大量のCMは宝飾品業界の顔として知名度アップに大きく寄与していたと言える。古き良き時代が残した史料の一部として、引き続き掘り下げていきたい。

4.「違う、そうじゃない」鈴木雅之(1994)


オリコン最高位9位。こちらはブティックJOYのCMソング。特にカメリアダイヤモンドとブティックJOYによる曲調の違いとかは感じない。"Martin"鈴木雅之のアダルトな雰囲気の歌声と節回しはまさにカメリアCMにうってつけである。過去にはデュエットの定番曲「ロンリー・チャップリン(鈴木聖美withラッツ&スター)」が同タイアップに起用されている。90年代は「白夜~離したくない~」や「DUNK」など何曲か他のCMにも起用されているが、これらもまた大人のいい味を出している。
サビ頭の歌詞を繰り返す曲はよくあるが、比較的覚えやすい。タイアップにも当然合っているのだろうが、古臭さもさほど感じない。タイアップ曲は時代を感じる曲が多いが、鈴木雅之の曲は時代に迎合せず、いつの時代も普遍的な鈴木雅之らしい曲を歌い続けている。彼らしさを貫く姿勢は、ドゥーワップを世間に知らしめたグループ時代のそれと同じなのかもしれない。

5.「Jealousy~ジェラシー~」ZIGGY(1995)

オリコン最高位7位。「GLORIA」のヒットでお馴染みの彼らの後期のヒット曲。ガツンと曲名からサビが入るのは当時はビーイングのアーティストがよく取り入れていた手法。タイアップにはもってこいだが、彼らのシングル曲にも多いパターンである。メンバーチェンジを繰り返しているバンドであるが、不動のボーカル森重樹一は年も取り、ロックミュージシャンの宿命とはいえ、こんなんだっけ感が否めない。
バンドブームの出ながら、少しねちっこい歌い方も含めてカメリアダイヤモンドのタイアップにはマッチ。子供の焼きもちと大人のジェラシー(嫉妬)は重さが段違い。世にたくさんあるジェラシー曲でも重たさはトップだろう。CDジャケットのアートワークも含め世界観が統一されている。しかしながら、サビの"Jealousy""Mystery""Destiny"の歌詞は、韻を踏んでいると捉えていいのだろうか?もしそうであれば随分先鋭的だと思う。

6.「本気でも嘘でもいい」BEREEVE(1995)

オリコン最高位10位。ごめんなさい、誰ですか?このテーマの趣旨に相応しい、この曲しか知らないけどトップ10入りのれっきとしたヒット曲である。ビリーブと読む2人組で、この曲が一番の売上を記録した。メンバー2人はこの時点で共に30歳で、遅咲きな感がある。
カメリアタイアップ狙った感じがたっぷりの曲調だけれども、これを音楽的な言葉で語ることができないのがむず痒い。誰か名前をつけてくれ。サビ前の1拍の静寂がサビのインパクトを際立たせている。1995年終盤はCMソングのラインナップを見てみても、正直CMのブランド力という神通力が落ちてきている時期に当たる。もう2,3年同タイアップとのご縁が早ければ、ヒットの仕方も変わっていたかもしれない。世に出るタイミングは才能以上に重要である。

7.「A.S.A.P.」Little Kiss(1997)

オリコン最高位3位。"生ダラ"発の企画ユニットはあまりにも有名。ましてや当時は今以上のネームバリューだった石橋貴明と工藤静香の二人である。昔の記憶では、音楽番組での過激なパフォーマンスをうっすら覚えている。CMソングの中でも後期の代表曲ながらも、今では聴くことのなくなった名曲であるため、どうしても取り上げたかった。
秋元康×後藤次利コンビのこの曲は、タイアップありきで限られた尺でインパクトを残せる作りになっている。タカさんの歌声が決して品があるとはいえないので若干宝飾品のCMソングとしては減点だが、キャリアを積み上げた工藤静香の歌声がしっかりリードする。曲単品として見れば、美女と野獣のような二人のミスマッチが奇跡的に融合する名曲である。

最後に


以上、流石の長い歴史のあるタイアップなだけはあり、バラエティに富んだ全7曲であった。過去にカメリアCMソングでミリオンを達成したのは以下の通り。

「KISS ME」氷室京介 (1992) 123.1万枚
「愛を語るより口づけをかわそう」WANDS (1993) 112.1万枚
「MOTEL」B'z (1994) 131.6万枚
「masquerade」trf (1995) 138.9万枚
「恋心」相川七瀬 (1996) 112.9万枚

全5曲である。うち意外にも最初の3曲はブティックJOYのCMである。そして最も売れた曲は「masquarade」とこれまた意外だった。タイアップの影響というよりは、これらはヒットするべくヒットした感が強いが、氷室京介と相川七瀬は実は唯一のミリオンヒット作であった。その他CMソングが自身の代表曲となった"カメリア族"は中西圭三や、紹介しきれなかったが久宝留理子、REV、松田樹利亜、ICE…一発屋やそれに近いものも含め枚挙にいとまがない。

ちなみに、これだけ長々と文章を書いておきながら、本当に好きな曲を挙げると「MOTEL」と「愛を語るより口づけをかわそう」の2曲になる。前者は94年の音楽的に冒険した年のある意味拗らせた曲で、"星降り注ぐこのモーテル"って実際ロマンティックでもなんでもないのに、何故か想像力を掻き立てられる。後者はWANDSの王道とビーイング音楽の王道が合致した、まさにミリオンセールスするべくして世に放たれた名曲である。共にカラオケで歌うと気持ちいい。

2020年、テレビの企業広告としての影響力は衰えが見え、同じような名物CMタイアップが誕生することも今後はないだろう。カメリアダイヤモンドは時代を写す鏡として回顧するにはふさわしいテーマであった。

カメリアダイヤモンドCMソングコレクション Diamonds

ちなみに、コンピレーションアルバムも発売されている。語るには収録曲も少な過ぎるが、入門編として。

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