コーヒーの現実逃避

一寸先は闇のような色したぼく

酸いも甘いも経験してきたけれど
やっぱりこの苦みがぼくの長所なんだって
思える

ぼくは1日の始まりにふさわしい飲み物
ではなく
もう1日の始まりそのものだ

暗いくらい途方もなく深い闇が終わり
明るい朝が来た
昨日の悲しみが何ともなかったかのように
とうめいな朝
ぼくは真っ黒な色で
あの人の
この人の
とうめいな朝を染める


サラリーマンが
電車のつり革につかまりながら
窓の外の景色を見つめている
左手には缶コーヒーを持ってね
きっと何も考えちゃいない
唯一考えているとしたらきっと
缶コーヒーはやっぱり缶コーヒーだよな
ということだけ


少し早めに家を出たOLさんが
カフェでコーヒーを注文している
自分の生き方や楽しみを大事にする
彼女は
昨日彼氏と別れたばかりだ
いつも人の心に土足で踏み込まないように
心掛けている彼女と
もっと踏みこんでほしい彼
2人は全く相性が悪くて
でもそこの価値観のすり合わせを
もっとうまくできなかったのか
コーヒーは何も結論を出せないけど
彼女の瞳には
シックなコーヒーの黒色が映し出されていた
彼女はもう前を向いて歩き出している
それだけは確かだった

ランドセルを背負った男の子
浮かない顔して歩いてる
今日の授業で発表会があるもんだから
朝から気持ちが重いのだ
それか席替えで嫌なやつの隣になって
しまったから
学校にいくのが憂鬱なのかもしれない
大丈夫
今はそんな日々を淡々と過ごせばいい
それでも朝のコーヒー1杯で君が
すこしでも元気になってくれるなら
ぼくはうれしいのさ
まだお子様だから
コーヒーは飲めないかもしれないけどね

融通の効かないおじいさんは
もう誰からも見放されてしまった
それでもコーヒーを飲む時は
おじいさんの1番すきな時間で
その時だけは穏やかな気持ちになれる
ただ愛されたくて
素直になりたかった
今からでも遅くないよって
ぼくはつぶやく
誰かをなぐさめる時は
ぼくはとびきり
美味しいコーヒーになれるんだ

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